赤い夕焼けの空

ミニマリスト憂希

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パンをほおばるトニーを見つめる男
男は尋ねた

「お前 名前は?」

「トニー」

「そうか おじさんはニックって言うんだ」

「トニーはいくつだ?」

「10歳」

「そうか 家は?」

「…帰る場所が…ない」

「…そうか」

そういうとニックはトニーの服が泥だらけなのに気がついた

「ちょっと待ってろ」

そういうとニックは引き出しを開け
子供服を出してきた

「サイズが合うといいんだが 着てみろ」

渡された服を着たトニー

サイズはピッタリだった

「サイズが合っててよかった
そうだ行くところがないなら
今日はここに泊まっていけ」

「いいの?」

ニックはトニーを家に泊めてくれた


次の日


「トニー これから 行く宛はあるのか?」

首を横に振るトニー

「そうか…そうだ!今日はおじさんの仕事を手伝ってくれるか?」

「うん」

ニックとトニーは
ある現場に向かった
家や建物を建てる仕事だ

「ここでおじさんの仕事を手伝ってほしい」

「うん」

ニックが一人の男性と何やら話していた

「工場長、甥っ子が家に遊びに来てるんですが、今日はここの仕事を手伝ってもらおうと思うんですが…」

「ああ 甥っ子でも、姪っ子でもなんでもいい!
今は人手が足りなくて困ってるんだ!
猫の手も借りたいぐらいだ!」

メガネをかけ小太りの工場長は
人手が足りなくて困りパニックになっていた

「わかりました 私が仕事を教えて 作業してもらいます」

そういうとニックはトニーに作業を教えていった

すると
コンコンッ
ビリリッ

「すごいな!」

トニーは子供とは思えないぐらい
仕事の覚えが早く
器用になんでもこなした
元々工場で仕事していたし
地下での地獄が役に立ったのだ

「これぐらい簡単だし 全然辛くないよ」

大人顔負けのトニーにニックは驚き、喜んだ

ピリリィッ

現場のベルが鳴った

「お昼休憩だ トニー 食堂でお昼ご飯を食べよう」

「うん」

ニックとトニーは食堂へ行った

「お金はおじさんが出してやる
何が食べたい?
パンにスープ、ソーセージなんでもあるぞ」

「いいの?やった!」

えらくトニーに優しいニック

パリッ
バシュッ
ズルルッ

「美味しい」

パンをほおばり
ソーセージを食いちぎり
スープを飲むトニー
まるで王様の食事の様だ

必死に食事をして「美味しい、美味しい」と言うトニーを見つめて
ニックは喜んでいた

お昼ご飯を食べた後
2人は工場の外で昼寝をした

グァァアッ
グァァアッ
ニックは爆睡していたが
トニーはずっと父の事を考えていた
父はあの後 どうなったのか
捕まらず無事でいるのか
捕まってしまいまた地下へいるのか
心配だったがどうすればいいのかわからなかった

ピリリィッ

午後から作業を再開した

そして

夕方 仕事が終わり

皆 1列になり 工場長が賃金を配った

「はい お疲れさん」

工場長が1人1人に賃金入りの封筒を渡していったそしてトニーの番へ

「ん?君 若いね いくつ?」

「10歳です。」

「10歳!?君みたいな子を雇った覚えはないけどな」

そういうと後ろにいたニックが説明した

「工場長!朝話した甥っ子ですよ」

「ああっ朝話してた子か でもまさか10歳とはね 賃金も大人1人分やる訳にもいかない
半分でいいね」

そういうと工場長はトニーの封筒からお金を半分抜き出した

トニーとニックは心の中で ケチっ と思った


給料を貰ったトニー

「いいか トニー これから自分が仕事で稼いだお金で食べ物を買うんだ」

そういうとニックはトニーを町へ連れて行き
パンやソーセージを買わせた

「今日のメシは自分で稼いだお金で買ったものだ 美味いぞぉ」

「うん!」

「そうだ!今日もおじさんの家に泊まっていくといい」

「うん!」

トニーは嬉しく大きな声で返事をしたが
ふと不思議に思った

なぜ 他人の自分に対して
こんなに親切にしてくれるのかと

家に着き
夕食にありつく2人

パリッ

「美味しい!」

買った
パンとソーセージを食べるトニー

「いいかトニー 今日稼いだお金で貯金もするんだ」

「貯金?」

「ああっ、貯金をして 毎月払う税金分のお金を貯めないといけないんだ」

「税金!」

トニーは税金のせいで地下へ行き
家族がバラバラになった事を思い出した

「どうしたんだ?」

「僕のお母さんは地下で殺された
僕のお父さんは僕を逃がすために囮になってくれた
お母さんに会いたい
お父さんに会いたい」

「そうか…そうか…」

ニックはそれだけ言い察したようだ

「トニー これからずっと おじさんとこの家で暮らさないか?」

「おじさんと?」

「ああ 実はおじさんの息子と妻も少し前に亡くしてね ちょうど息子はトニーぐらいの歳だったよ
これから行く宛もないのならおじさんの養子になっておくれよ」

トニーは少し考えた

父は無事で何処かで隠れてるだけかも知れないし

ニックと暮らしても
いずれはまた父と2人で暮らすんだと

「お父さんが見つかるまでの間だけでも
ニックおじさんと暮らしてもいい?」

わがままなお願いだと思ったが
ニックは喜んだ

「ああっ お父さんが見つかるまででも構わないさ おじさんはトニーが自分の子供の様で仕方ないのさ」

そして

トニーはニックと暮らし始めた
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