堅物侯爵とじゃじゃ馬娘

ほのじー

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エレナ③

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「あら、ブロア侯爵。今日はここに視察に来たのね」
「ミス・ラングリー、また男性のようにズボンを履いているのですか?」
「だってズボンの方が馬に乗るときに便利じゃない」


エレナが午後の乗馬に出かけるとブロア侯爵が馬小屋や周りを見て回っていた。馬たちはエレナが来たことに気づき、喜びの声をあげる。そんな馬たちをポンポン撫でた。


「ブロア侯爵、あなたも馬に乗るのかしら?見るからに潔癖症で馬にも触れないと思ったのだけれど」
「馬くらい乗れますよ。ただ私の馬は白く美しい馬ですがね」
「あら、見かけだけの観賞用の馬に乗ってらっしゃるのね」


バチバチとエレナとブロア侯爵に火花が飛び散った。無表情な彼をこうやって挑発するとエメラルドグリーンの瞳に炎のような熱い感情が見え隠れし、そんな瞳をずっと見たく、何度も挑発したくなる。


「今から草原に行くのだけど、馬に乗って一緒にいかがかしら。ついてこれればの話だけれど」
「ええ、いいですよ」
「じゃあ、あなたにはジョンを貸してあげる。まだ調教しきれていないけれど、足はとても速いのよ」

ジョンはまだエレナ以外誰も乗せようとしない。どうせ乗れないだろうと思い鼻で笑っていたのだが、ブロア侯爵がジョンにそっと近づいた。しばらくジョンを見つめると、ジョンは頭を下げる。ブロア侯爵はジョンを撫でると、『乗れよ』と言ったようにジョンは体を寄せた。


(結構やるじゃない)



ブロア侯爵が馬に乗ると、ジョンも楽しそうだ。エレナもジョンの大好きな茶色の馬レナに跨がりブロア侯爵に近づいた。


「サイドサドルで乗らないのだな、はしたない」
「横のりなんて危ないから御免だわ」
「貴族に生まれて貴族として振る舞わないなぞ、本当に信じられない」
「せ、正式な場面ではちゃんと横のりするわよ!」
「ほう、侯爵と乗馬することは正式な場面だと判断してないということか」


ブロア侯爵はエレナを見下すように冷たい眼で見ている。


「じゃ、早く行くわよ、侯爵」


エレナはそんなブロア侯爵を無視して馬を駆けた。








「はぁ、はぁ、はぁ。ブロア侯爵、あなたやるじゃない」
「私もこんな速く馬に乗るレディに会ったのは初めてだ」



二人は草原を駆け巡る。ブロア侯爵も無表情ながら瞳にキラキラとしら光が見えている。彼なりに馬乗りを楽しんでいるのだろう。一時間程乗ったのだが、そろそろ湖の近くで馬を休ませることにした。


「あなたはそんな毎日仕事ばかりで堅苦しく生きて、楽しのかしら?」
「こういう生き方しかしていないから他は知らないし、別に興味もない」


メモを取り出し土地の様子をメモをしている侯爵にエレナはそう聞いた。


「さすが血も涙もない侯爵。そうやってコルケット領もバッサリ切りつけるのね」
「っ・・・そりゃあ利益がない土地を存続しても意味がないからな」


ブロア侯爵は顔を上げずメモを取り続けていた。ひょっこりと顔を覗かせると、馬の状態よし、エレナ・ラングリー書類偽証、男勝りで傲慢と小さくメモをしてあった。


「な、なによ、このメモは!!」
「勝手に人のメモを見るな」
「メモだからってこんなこと書いていい訳ないでしょう!!」


エレナが怒っていると雲が覆われてきたことに気づいた。あーだこーだと二人は口論をして、時間が随分経っていたのにも気がつかなかった。


「雨が降りそうね。早く帰りましょう」
「ああ、そうだな」


二人は急いで馬を駆けたのだが、もう少しで屋敷にたどり着くところで雨がポツリポツリを降りだしてしまったようだ。


「最悪、びしょ濡れだわ。ほら、タオルよ」
「ああ」


雨で濡れたブロア侯爵のシャツから広い胸元が透けて見えていた。思ったよりしっかりとした筋肉にエレナは視線を向けた。


(すごく色っぽい)


黒髪からシトシトと水が垂れ、長く太い睫毛の上にも水滴がのっていた。


「ほら、ミス・ラングリー。髪を拭かないと風をひくぞ」
「え、ええ」


ブロア侯爵が後ろにまわりエレナの髪をタオルで拭く。その手の動きは繊細で気持ちいい。



(私を牢屋送りにしようとしている男に無防備にされるがままになってるなんて・・・)


エレナは心地いい手つきに目を瞑った。



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