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悪役令嬢、決意する
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ウィリアムへの訪問者が増えた。なにやら小屋で話し合いをしているようで、たまに白熱した声がもれ聞こえてくる。
「ん~!!良い天気!ピピとポポは、この布団を干して」
「はーい」「おうよ」
このあいだメラニアに話しかけてきた一つ目の魔物ピピとポポがパタパタと小さな羽をばたつかせながら、羽の上にある小さな二本の触覚で(本人たちは手だと言い張る)洗濯物を器用に干していく。二匹は同じ顔で見分けがつかないが、いつも丁寧なのがピピで口が悪いのがポポだ。
(ふふふ、二匹仲良いのね)
ピピとポポはあの後ウィリアムに渋々認められたらしく、ウィリアムの家に毎日住み着くようになった。それ故ウィリアムは屋根裏に一つ目たちの小さな寝室を作ってあげた。
「ウィル、お帰り」『おかえりー!』
「ああただいま」
皆で食事を終わらせ、一つ目たちは屋根裏部屋へ上がっていく。ウィリアムは夜遅くまで机に向かって何やら仕事をしており、メラニアは先に寝入ってしまうことが増えた。
(最近全然触れてない・・・)
ウィリアムはもうメラニアに触れてくれないのだろうかと不安になるが、朝起きると必ず額にキスをしてくれる。
(もっと触れてほしい・・・って言ったらはしたないって思われるかな・・・)
その日のお昼頃、メラニアたちは昼食をとっていたが、ジャックが窓から現れた。
「ウィリアム様~!!第一王子の軍が・・・こっちに攻めてきてます~!!」
「なんだって!?くそっ、あいつを降ろす準備してるのがもうバレたか・・・」
ウィリアムは小屋に急ぎ、なにやら魔法の道具を揃えたり戦闘の準備をする。
「ウィ、ウィル・・・」
「メラニー、君はここで待機するように。もし危険が迫ったら、君にあげたこの指輪を太陽にかざして祈るんだ、君の精気が力に変わるから。時間稼ぎくらいにはなるだろう」
「で、でもウィル・・・!」
「メラニー、僕が帰ったら、君に伝えたいことがあるんだ」
「・・・分かったわ。無事に帰ってきてね」
「うん」
ーチュッ
ウィリアムはメラニアの唇にキスをした。そしてメラニアをじっと見つめる。ずっと欲していたキスなのに、なんだか最後のお別れのような、後を引くものだった。
(いかないで・・・)
ウィリアムに第一王子の元へ行ってほしくなかった。一緒にどこか遠くに逃げようと言いたかったが、彼のあの強い意思を持った目を見たら、何も言えなかった。
ーーーー
ズドーーーン
ドカーーーーーン
「おい、ゴブリン野郎、早く出てこい!!こっちは軍総動員でやってきてやったぞ!」
「そんなうるさい声で叫ばぬとも出てくるわ、バカ王子」
ウィリアムは森の入り口に到達する。そこには何千もの軍人が武器を持って待機しており、第一王子と、ヴィーナスの使者、ビビと呼ばれる女は彼の側に控え、少し高くなった木製のお立ち台に立っていた。
「まさかお前、ひとりで来たのか?俺も舐められたもんだな」
「きさまなんぞ、俺一人で十分だ」
「強がっちゃって。やっちまえー!!」
ズドーーーン
大砲が打ち込まれる。ウィリアムは防御魔法でそれを防いだ。
カチーーーーーーン
「うわぁ!!」
「す、すべる!!」
ウィリアムの魔法は氷属性で、瞬時に物を凍らせることができる。ウィリアムは地面を凍らせ、軍隊の足元を狂わせた。
「かまわぬ、打て、ひたすら大砲を打つんだ!」
ドカーーーーーン
「はぁ・・・はぁ・・・」
さすがにウィリアムも体力が無くなってきた。魔法も無限には使えないのだ。
「はっはっは、もうおしまいか?」
「もうお前に勝手なことはさせないぞ!メラニーにだってあんな酷い仕打ちを!!」
ウィリアムは歯ぎしりをする。第一王子はキョトンとした顔をして、ふと思い出したように笑いを上げた。
「ああ、そんな奴もいたなぁ。ああ、ビビアン。嫉妬しないでくれ今は君だけだよ」
第一王子とビビは抱き合っていて、二人の世界で回りが見えていないようだ。キスもはじめようとしたので、ウィリアムは二人目掛けて氷魔法を打ち付けた。
ーーーーーシュンッ
魔法が跳ね返る。ウィリアムはハッとなった。
「ぐぅ・・・!!!」
ウィリアムは自分の攻撃をもろに受けた。第一王子はウィリアムを見て可笑しそうに笑う。
「ははは、ビビアンは魔法を跳ね返す力を持っているんだ。何をしても無駄だよ、残念だったね」
「くはっ・・・」
ウィリアムの口から血が滴る。
「そうそう、あのメラニアって女だけど、この森に捨てたんだっけ。まだ生きてるんだ。君を始末したら、彼女を迎えにいって軍人たちに犯させよう。顔は良い女だったもんな。何千人に見られて犯されるのも見物だなぁ」
「この野郎!!!くたばれ!!」
バーーーン
ドーーーーン
ウィリアムは魔法を使うのを諦め、刃物がいくつも刺さったこん棒で軍人たちを打っていく。
何人もの軍人が倒れていった。一人で数百人は倒したであろう。しかし彼はとうとう力尽き、膝を付いてしまう。
ーーーーードサッ
「おい、軍人たち、まだ殺すなよ。絶望させて殺さねば楽しくないだろう」
ウィリアムは拘束され第一王子が前に出てくる。
「あっけなかったなぁ。つまらん」
第一王子は足でウィリアムを蹴りつけた。
「ぐっ・・・」
「そうだ、はりつけにして市民たちに醜悪な怪物の死を見てもらおう!俺はそんな魔物を倒したってヒーローになるぞ、どう思う?ビビアン」
「とっても名案ですわ!さすがはダーリン!」
「じゃあ、皆、今からゴブリンの死刑を布告してくれ。魔法を無効にする拘束具を付けておけよ。暴れられたらたまらんからな」
「ん~!!良い天気!ピピとポポは、この布団を干して」
「はーい」「おうよ」
このあいだメラニアに話しかけてきた一つ目の魔物ピピとポポがパタパタと小さな羽をばたつかせながら、羽の上にある小さな二本の触覚で(本人たちは手だと言い張る)洗濯物を器用に干していく。二匹は同じ顔で見分けがつかないが、いつも丁寧なのがピピで口が悪いのがポポだ。
(ふふふ、二匹仲良いのね)
ピピとポポはあの後ウィリアムに渋々認められたらしく、ウィリアムの家に毎日住み着くようになった。それ故ウィリアムは屋根裏に一つ目たちの小さな寝室を作ってあげた。
「ウィル、お帰り」『おかえりー!』
「ああただいま」
皆で食事を終わらせ、一つ目たちは屋根裏部屋へ上がっていく。ウィリアムは夜遅くまで机に向かって何やら仕事をしており、メラニアは先に寝入ってしまうことが増えた。
(最近全然触れてない・・・)
ウィリアムはもうメラニアに触れてくれないのだろうかと不安になるが、朝起きると必ず額にキスをしてくれる。
(もっと触れてほしい・・・って言ったらはしたないって思われるかな・・・)
その日のお昼頃、メラニアたちは昼食をとっていたが、ジャックが窓から現れた。
「ウィリアム様~!!第一王子の軍が・・・こっちに攻めてきてます~!!」
「なんだって!?くそっ、あいつを降ろす準備してるのがもうバレたか・・・」
ウィリアムは小屋に急ぎ、なにやら魔法の道具を揃えたり戦闘の準備をする。
「ウィ、ウィル・・・」
「メラニー、君はここで待機するように。もし危険が迫ったら、君にあげたこの指輪を太陽にかざして祈るんだ、君の精気が力に変わるから。時間稼ぎくらいにはなるだろう」
「で、でもウィル・・・!」
「メラニー、僕が帰ったら、君に伝えたいことがあるんだ」
「・・・分かったわ。無事に帰ってきてね」
「うん」
ーチュッ
ウィリアムはメラニアの唇にキスをした。そしてメラニアをじっと見つめる。ずっと欲していたキスなのに、なんだか最後のお別れのような、後を引くものだった。
(いかないで・・・)
ウィリアムに第一王子の元へ行ってほしくなかった。一緒にどこか遠くに逃げようと言いたかったが、彼のあの強い意思を持った目を見たら、何も言えなかった。
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ズドーーーン
ドカーーーーーン
「おい、ゴブリン野郎、早く出てこい!!こっちは軍総動員でやってきてやったぞ!」
「そんなうるさい声で叫ばぬとも出てくるわ、バカ王子」
ウィリアムは森の入り口に到達する。そこには何千もの軍人が武器を持って待機しており、第一王子と、ヴィーナスの使者、ビビと呼ばれる女は彼の側に控え、少し高くなった木製のお立ち台に立っていた。
「まさかお前、ひとりで来たのか?俺も舐められたもんだな」
「きさまなんぞ、俺一人で十分だ」
「強がっちゃって。やっちまえー!!」
ズドーーーン
大砲が打ち込まれる。ウィリアムは防御魔法でそれを防いだ。
カチーーーーーーン
「うわぁ!!」
「す、すべる!!」
ウィリアムの魔法は氷属性で、瞬時に物を凍らせることができる。ウィリアムは地面を凍らせ、軍隊の足元を狂わせた。
「かまわぬ、打て、ひたすら大砲を打つんだ!」
ドカーーーーーン
「はぁ・・・はぁ・・・」
さすがにウィリアムも体力が無くなってきた。魔法も無限には使えないのだ。
「はっはっは、もうおしまいか?」
「もうお前に勝手なことはさせないぞ!メラニーにだってあんな酷い仕打ちを!!」
ウィリアムは歯ぎしりをする。第一王子はキョトンとした顔をして、ふと思い出したように笑いを上げた。
「ああ、そんな奴もいたなぁ。ああ、ビビアン。嫉妬しないでくれ今は君だけだよ」
第一王子とビビは抱き合っていて、二人の世界で回りが見えていないようだ。キスもはじめようとしたので、ウィリアムは二人目掛けて氷魔法を打ち付けた。
ーーーーーシュンッ
魔法が跳ね返る。ウィリアムはハッとなった。
「ぐぅ・・・!!!」
ウィリアムは自分の攻撃をもろに受けた。第一王子はウィリアムを見て可笑しそうに笑う。
「ははは、ビビアンは魔法を跳ね返す力を持っているんだ。何をしても無駄だよ、残念だったね」
「くはっ・・・」
ウィリアムの口から血が滴る。
「そうそう、あのメラニアって女だけど、この森に捨てたんだっけ。まだ生きてるんだ。君を始末したら、彼女を迎えにいって軍人たちに犯させよう。顔は良い女だったもんな。何千人に見られて犯されるのも見物だなぁ」
「この野郎!!!くたばれ!!」
バーーーン
ドーーーーン
ウィリアムは魔法を使うのを諦め、刃物がいくつも刺さったこん棒で軍人たちを打っていく。
何人もの軍人が倒れていった。一人で数百人は倒したであろう。しかし彼はとうとう力尽き、膝を付いてしまう。
ーーーーードサッ
「おい、軍人たち、まだ殺すなよ。絶望させて殺さねば楽しくないだろう」
ウィリアムは拘束され第一王子が前に出てくる。
「あっけなかったなぁ。つまらん」
第一王子は足でウィリアムを蹴りつけた。
「ぐっ・・・」
「そうだ、はりつけにして市民たちに醜悪な怪物の死を見てもらおう!俺はそんな魔物を倒したってヒーローになるぞ、どう思う?ビビアン」
「とっても名案ですわ!さすがはダーリン!」
「じゃあ、皆、今からゴブリンの死刑を布告してくれ。魔法を無効にする拘束具を付けておけよ。暴れられたらたまらんからな」
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