悪役令嬢はゴブリンに愛される

ほのじー

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ゴブリン、死を覚悟するSide:ウィリアム

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「汚らわしいゴブリンめ、そろそろ死ぬ準備はできただろうか」
「ふんっ、俺が死んだって、きっと誰かがこの国を覆そうと革命が起こるさ・・・」


ーーーバシン!


「うるさい、黙れ、よっぽど死にたいらしいな」


ウィリアムは牢屋に拘束され、鞭で何度も打たれた。ゴブリンの体が丈夫であまり効かないのが分かると、今度は熱した棒でウィリアムを叩いた。ジュッと体が焼ける音がする。ゴブリンは熱に弱いのだ。


「はは、無惨な体だな。醜い体がさらに焼けただれて醜いじゃないか」


第一王子とビビアンはウィリアムを見て愉快そうに笑う。


「ねぇ、ダーリン。これが終わったらあの女も同じめに合わせない?私、あなたが彼女と婚約してたって考えるだけで嫉妬で狂いそうよ」
「ああ、もちろんだ。軍人たちに犯されたあとにそうさせよう」
「嬉しい!あの綺麗すぎる顔を焼いて彼女の絶望する顔を見たいの!!」
「きさまっ・・・!!」


ジャラッ・・・


拘束具で身動きができない。力いっぱい拘束具を引きちぎろうとする。


「ぬおおおおおおおお!!」



ーーピリッ



少し拘束具が割れる音がする。



(いける・・・壊れる!)




ーーージュッ!!


「ぐああああああ!!」
「危ない、これだから醜い魔物は」


ウィリアムは再び棒で焼かれ、失神した。





『わーーーーー!!』
『早く殺しちまえ!』
『本当に汚らわしいこと・・・』
『あんな醜い魔物、子供たちに見せられないわ!』




(ん・・・)


ウィリアムは目を覚ます。市民たちの歓声や怒号が聞こえてきた。ウィリアムは十字架の台に張りつけにされていて、両手足に釘が刺されている。



「皆さん、お待たせいたしました。これがこの国の安全を脅かしていたゴブリンです!!第一王子とヴィーナス使者ビビ様が無事に退治され、今からその御披露目をさせていただきます!」


『万歳ーーーーー』
『第一王子万歳ーーーーー』
『ビビアン様万歳ーーーーー』


二人に向けて歓声がおこる。





ゴォオオオオオオオオオ




火がおこされ、ウィリアムの足元から熱が昇ってくる。



「ぐああああああああ!!」



ウィリアムの顔は苦痛に歪む。意識が朦朧としてくる。



(メラニー・・・ごめん・・・もう終わりだ・・・)








「なんだ、あれは!!」
「キャアアアア!ドラゴンよ!!」



「待ちなさい!!」



ーーーーーバサッバサッ



ドラゴンが死刑台の近くまで飛んでくる。その上には白いワンピースを着た女性が乗っていた。ドラゴンはその羽で死刑台をなぎ倒した。



ーーードサッ



台は倒れ、ウィリアムは地面にぶつかった。



(メラニー!!)



「第一王子、あなたは第二王子であるウィリアムを陥れて、ゴブリンに変化させて、しかもその彼を殺そうとするなんて・・・もうこの国も終わりよ!覚悟なさい!!」


『あれが・・・第二王子??』
『嘘よ・・・あんな醜い魔物が第二王子だなんて・・・』



市民はざわざわと騒ぎだす。




第一王子の軍隊が再び集まり、彼らはドラゴンを打ち落とそうと弓を次々と放つ。



ーーーーキラーーーーン



メラニーは指輪を天にかざした。するとその弓矢はすべて力を失い地面に落ちていく。



その白いワンピースの無垢な姿に、神々しい光が彼女をつつんだ。そして彼女の金色の髪がさらに輝きを増した。



『彼女こそがヴィーナスの使者じゃないのか』
『ああ、美しい・・・』




市民たちは彼女に見とれた。



(メラニー、ああ、僕の天使・・・)



「うぉおおおおおおお!!」




魔物たちがメラニアに参戦する。軍人たちを次々と倒していく。




ーーーパカッ、パカッ、パカッ




「ウィリアム様、お待たせーっ!!獣人軍団たちも応戦させてもらいますよー!!」


そこにはジャックを先頭に犬の耳やロバの耳が生えている、人間と獣を足したような姿の者たちが馬に乗りこちらへと近づいてくる。獣と人間のハーフであり、この国から迫害された獣人たちだ。


「我らも応戦しよう!!」


そこには第二王子を影でサポートしていた貴族たちの軍が到着していた。




「さあ、覚悟はできた?元婚約者様」




メラニアは指輪から出てきた杖で光をだし、敵の目を眩ます。魔物たち、獣人たち、そしてウィリアムを支える人間たちが力を合わせ、第一王子の軍を全滅させた。



第一王子とビビアンはあっけなく拘束され、貴族の軍に連れていかれる。



「俺は王子だぞ!!歯向かうのか!!」
「こんなはずじゃなかったのにっ!!このアマ!!」



第一王子とビビアンは叫びながら連れられて消えていった。



「ウィル!!」
「ああ、夢かな・・・目の前に天使がいるんだ・・・」
「なに言ってるのよ、ウィル!!」



ウィリアムは意識を半分なくしながら力を振り絞り、拘束が解かれ流れ出る血まみれの手で、メラニアの顔に触れる。



「僕の天使・・・死ぬ前に言わせて・・・僕は君を愛してる・・・」



メラニアはウィリアムの手をそっと触れ、涙を流した。



「ウィリアム・・・私もよ。私もあなたを愛してる。ゴブリンだってなんだっていいわ。私が好きなのは、あなたなんですもの」




メラニアはウィリアムに触れるだけのキスをした。



ーーーーーーパアアアアアアアア



(な、なんだ・・・)


ウィリアムの体が光出す。見守っていた人々は眩しさに目を瞑る。再び目を開けると、裸の男性が倒れていた。



「ウィル!!」



『あれは第二王子だ!!』
『本当に王子だったんだ!!』



市民や戦闘意欲を無くした軍人たちも驚きを隠せない。


ーカツッ


「あらあら、強力な魔法を感じたと思ったら、あなた元に戻ったのね」



黒い服をまとった女性が姿を現す。気まぐれの緑の魔女だ。


「暇だったから、あのバカ王子に頼まれてあなたをゴブリンの姿に変えたわ。でもただゴブリンにするだけじゃ面白くなかったから、“醜いゴブリン姿でも愛してくれる女性を見つけたらその魔法が解ける”おまじないも付けておいたのよ。ふふふ、まさか見つかるとは思ってなかったわ!」


魔女はウィリアムとメラニアに近づく。


「まぁ、ある程度楽しんだら解こうと思ってたんだけどね・・・国王と王妃にも忘却の魔法をかけてたんだけど、きっともう解けてるわね。あなたのことも思い出しているはずよ」


魔女は可笑しそうにして、その場を去ろうとした。


「そうそう、ご褒美にあなたたちに加護をつけておくわね。じゃ!」


彼女はそう言って去っていった。メラニアもウィリアムも何も感じない。しかしメラニアはウィリアムが無事だっただけでもう何もいらなかった。


「さあ、こちらへ、ウィリアム様。怪我の治療を行いましょう。あなたの妹君も、塔に隔離されていたそうです。彼女なら治癒の魔法が使えるのですぐに手当てしていただきましょう」



ウィリアムは運ばれていこうとするが、メラニアの方へ振り向いた。



「メラニア、待っていてくれ、迎えにいくから」
「ええ、待ってるわ」






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