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準備
しおりを挟む「はぁ、あなたたち二人はどんな遊びをして帰ってきたのでしょうか」
スコットが呆れた表情で二人の帰りを出迎えてくれた。
「さあお嬢様、風邪をひきますよ。マニーさん、お嬢様をお風呂に連れていってください」
マニーはお風呂に柚子を入れてくれた。エリザベスはポカポカと温もりその日はゆっくり寝ることができた。
+
+
+
(なんで、こうなったのかしら)
あの日、フィルとの距離がまたぐっと縮まったように感じていた。しかし次の日からフィルからは以前とは違うよそよそしさを感じるようになった。使用人を部屋に連れ込むこともなくなったのだが、夜遅くに出ていき朝家に帰ってくるのだ。聞くところによると街のホテルにとまっているらしい。
「フィル、今日も朝帰り?ちゃんと寝てるの?」
「ええ、心配無用です。家にいるよりもホテルの方が仔猫ちゃんを可愛がれますのでね」
「・・・まったくあなたって人は」
ドタバタと使用人たちが駆けてきた。
「お嬢様!早く準備しないとザック様が来てしまいますよ!!」
「ほら、フィル様もそろそろ服を着替えてください」
今日は王城でパーティーが開かれる。終戦後初の王族の公式パーティーとあって使用人はエリザベスを着飾ろうと必死だ。
「さあ、エリザベス様、息を吸ってください」
「すぅーーーーっ」
使用人たちはエリザベスにコルセットを力一杯引っ張りあげた。
「ぐぐぐ・・・パーティーて始まる前からこんな疲れるものなのね・・・」
「お嬢様が成人になって初の公の御披露目ですもの。噂通り完璧な妖精に仕上げてさしあげますわよ!」
エリザベスが十六歳になろうとした際に戦争が始まったのでまだ成人としての御披露目が終わっていなかったのだ。
「まぁまぁまぁ!!なんてお美しいのでしょう」
「まるで絵本の中の妖精ですわね。魔法のスティックを持たせたいです!絶対皆妖精と勘違いするはずです!」
使用人たちは目をキラキラさせてエリザベスを着替えさせた。特に使用人セナはエリザベスをいつも着替えさせようとして鼻の穴をヒクヒクと膨らませている。
「さあ、旦那様とフィル様にも見せてあげましょう。絶対びっくりしますから」
「もう、大げさねえ、セナは」
父とフィルがいる部屋にエリザベスが入ると二人は大きく目を開いた。そのリアクションにセナは満足そうにほくそ笑んでいる。
「いやぁ、エリザベス・・・本当に綺麗だよ。お母さんにも見せてあげたいくらいだ」
「・・・」
父は少し涙ぐみ、フィルは固まっている様子だ。
「・・・可愛らしいですが、子供のお遊戯会みたいな格好ですね」
「まぁ・・・お世辞でも褒めるのが本物の紳士でしょ」
フロックコートで身を包んだフィルは軍人らしさがなくなりどこから見ても紳士だ。艶やかな茶色の前髪を垂らしておりそこからチラリと見える眼帯はミステリアスさを醸し出している。大人の色気があり、今回の表彰で女性からさらにモテるだろう。
「もう、お嫁に行くわけじゃないのに、そんな感傷的にならないでよ、お父様」
「・・・ああ、そうだな・・・娘の成長を見れて嬉しくない親はいないんだぞ」
ーコンコン
「お嬢様、ザック様の馬車が到着されました」
「はい。お父様、フィル、お先です」
エリザベスが家を出ようとするとフィルが後ろを追いかけてくる。
「姉上・・・」
「どうしたの」
「会場の外でザック様と二人きりにならないように。彼が姉上に何をするか分かりませんからね」
フィルはいつになく真剣な表情をしている。
「ザック様は紳士だから大丈夫よ」
「あの優男は信用なりません」
「なっ・・・彼はあなたのような軽い男じゃないわ!!」
エリザベスはフィルがなぜそのようなことを言うのか分からなく少しイライラしたがザックが待っているので話を途中にエリザベスは彼の馬車に向かった。
(フィルに少し言い過ぎたかしら)
先ほどエリザベスの言葉にどこかフィルが傷ついた顔をしていたのだ。エリザベスは心を引きずりながらパーティー会場に向かった。
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