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第二章:恋の芽
お出かけ③
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「今日の夕御飯はどこにしようか」
「私はこの辺りのこと分からないんで、ランドルフ騎士団長にお任せします」
「う~ん、分かった。少し狭いが、上手い店があるんだ。そこでいいか?」
「はい、もちろんです!」
「あら~いらっしゃい、団長さん。女性を連れてくるなんて珍しいじゃない」
「ああ、奥空いてるか?」
「空いてるわよ」
カウンターの中から髪を上にお団子にして青のエプロンを着けた女将さんが出てきた。カウンター席には数人のお客さんが座っており、その奥は中二階のようになっていて個室が二つ備わっていた。その個室の一つに女将さんが案内し、温かいお茶をだしてくれた。
「はぁ~あったまりますね」
「ああ、そうだな」
ランドルフはいくつかお勧めのメニューを注文し、しばらくすると料理が運ばれてきた。
「わぁ~この豚の角煮、ホロホロで美味しい」
「ああ、ここの女将さんの作る煮物はすべて絶品なんだ。このカレイも美味しいぞ」
ランドルフはミリアの小皿に料理を取り寄せていく。
(世話焼きな師匠、変わってないな~)
「ところでランドルフ騎士団長はなぜ騎士になったんですか」
ミリアが疑問に思っていたことだ。なぜ騎士を始めたのか、何故あんな田舎で剣を教えていたのか、師匠がどのような人生を送っていたのか、ミリアは是非とも知りたいと思った。
「俺は貴族の三男として生まれたんだが、どうも貴族至上主義の父とは反りが合わなくてな、街に出て悪い奴らとつるんで喧嘩ばっかりやってたら、父に勘当すると言われて、それから母方の祖父の家で育ったんだ。だから今は母の旧姓を使ってるんだがな」
「ランドルフ騎士団長にもそんな悪いことする時期があったんですね」
「力が有り余ってたんだろうな。祖父は東洋出身で、彼はとにかく強かった。毎日毎日しごかれて、それから喧嘩はしなくなった。その後剣術や武術も教えてくれるようになったんだ。それで騎士になりたいと思って騎士学校に入ったのがきっかけだ」
(そういえば竜爺、東洋から戦後逃れてきたって言ってたな。彼の武勇伝めっちゃ面白かったもんな~。似てないけど、黒髪は一緒だし、師匠の本当のお祖父さんだったんだ)
剣道場の主人である老人は竜爺と呼ばれており、ランドルフを剣道場の師範として連れてきたのがミリアがランドルフを師匠と呼び慕うようになるきっかけとなった。
「でも貴族の名を捨てて団長なるなんて、やっぱ凄いです!」
「いやぁ、まぁ強くなる機会には恵まれたかな。七年前のボルトラの戦争で、前線を任されたんだ。そのころ指揮をしたのがまだ第一王子として陛下の補佐をしだした頃のシルベスターだったんだ。彼は人の使い方が良く分かっていた。俺は彼の指揮のもと何百何千もの敵を殺して、最終的に俺は瀕死になりながら敵陣の指揮者であったヴァルゲンという男の首を取ることができた」
「あの頃のことは覚えています。十五才以上の男性は軍の為に徴集されたので、同じ街で遊んでくれたお兄ちゃんたちを皆涙で見送って、結局半分は帰って来なかったんです。もしあの戦争が終結しなかったら、誰も戻ってこれなかったと思います」
「あの戦争は酷かったからな・・・。ヴァルゲンとの戦いで勝ったのだが、俺も相当血を失って、残虐な殺し合いが何年も続いたせいで心も少し病んでしまってな・・・しばらく療養しないとだったんだ。それで祖父が、子供に剣を教えないか?と言ってきたんだ。あそこは空気も良いし、気分転換に良いと思ってな。子供たちに剣を教えて過ごしていた。そこの子どもたちが、可愛いくてな。この子たちを戦場に送り出したくない、って気持ちが沸き上がってきたんだ。もっともっと強くなりたい、あいつらを守りたい、っと思って、死ぬ気で強くなろうと努力した。そして戦争が二度と起こらないように、次代の王となるシルベスターをサポートしようと思ったんだ」
(師匠・・・)
ミリアは泣きそうになった。エドとして教えていたミリアのことや、同じ仲間たちのことを、そんなに思っていてくれたなんて思わなかったのだ。
(この人はこんだけ騎士として努力して戦ってきたんだ・・・私は少し動けるからって自惚れていたのかもしれない。余計なお世話だって言われるかもしれないけど、私、彼の隣に立ちたい、彼の支えになって、私が隣にいるから大丈夫ですよ、って言ってあげたい・・・)
「少ししんみりしてしまったな」
「・・・いえ、ランドルフ騎士団長のこと聞けて良かったです」
ミリアは後ろを向いて、ランドルフに見えないよう涙を拭った。
「私はこの辺りのこと分からないんで、ランドルフ騎士団長にお任せします」
「う~ん、分かった。少し狭いが、上手い店があるんだ。そこでいいか?」
「はい、もちろんです!」
「あら~いらっしゃい、団長さん。女性を連れてくるなんて珍しいじゃない」
「ああ、奥空いてるか?」
「空いてるわよ」
カウンターの中から髪を上にお団子にして青のエプロンを着けた女将さんが出てきた。カウンター席には数人のお客さんが座っており、その奥は中二階のようになっていて個室が二つ備わっていた。その個室の一つに女将さんが案内し、温かいお茶をだしてくれた。
「はぁ~あったまりますね」
「ああ、そうだな」
ランドルフはいくつかお勧めのメニューを注文し、しばらくすると料理が運ばれてきた。
「わぁ~この豚の角煮、ホロホロで美味しい」
「ああ、ここの女将さんの作る煮物はすべて絶品なんだ。このカレイも美味しいぞ」
ランドルフはミリアの小皿に料理を取り寄せていく。
(世話焼きな師匠、変わってないな~)
「ところでランドルフ騎士団長はなぜ騎士になったんですか」
ミリアが疑問に思っていたことだ。なぜ騎士を始めたのか、何故あんな田舎で剣を教えていたのか、師匠がどのような人生を送っていたのか、ミリアは是非とも知りたいと思った。
「俺は貴族の三男として生まれたんだが、どうも貴族至上主義の父とは反りが合わなくてな、街に出て悪い奴らとつるんで喧嘩ばっかりやってたら、父に勘当すると言われて、それから母方の祖父の家で育ったんだ。だから今は母の旧姓を使ってるんだがな」
「ランドルフ騎士団長にもそんな悪いことする時期があったんですね」
「力が有り余ってたんだろうな。祖父は東洋出身で、彼はとにかく強かった。毎日毎日しごかれて、それから喧嘩はしなくなった。その後剣術や武術も教えてくれるようになったんだ。それで騎士になりたいと思って騎士学校に入ったのがきっかけだ」
(そういえば竜爺、東洋から戦後逃れてきたって言ってたな。彼の武勇伝めっちゃ面白かったもんな~。似てないけど、黒髪は一緒だし、師匠の本当のお祖父さんだったんだ)
剣道場の主人である老人は竜爺と呼ばれており、ランドルフを剣道場の師範として連れてきたのがミリアがランドルフを師匠と呼び慕うようになるきっかけとなった。
「でも貴族の名を捨てて団長なるなんて、やっぱ凄いです!」
「いやぁ、まぁ強くなる機会には恵まれたかな。七年前のボルトラの戦争で、前線を任されたんだ。そのころ指揮をしたのがまだ第一王子として陛下の補佐をしだした頃のシルベスターだったんだ。彼は人の使い方が良く分かっていた。俺は彼の指揮のもと何百何千もの敵を殺して、最終的に俺は瀕死になりながら敵陣の指揮者であったヴァルゲンという男の首を取ることができた」
「あの頃のことは覚えています。十五才以上の男性は軍の為に徴集されたので、同じ街で遊んでくれたお兄ちゃんたちを皆涙で見送って、結局半分は帰って来なかったんです。もしあの戦争が終結しなかったら、誰も戻ってこれなかったと思います」
「あの戦争は酷かったからな・・・。ヴァルゲンとの戦いで勝ったのだが、俺も相当血を失って、残虐な殺し合いが何年も続いたせいで心も少し病んでしまってな・・・しばらく療養しないとだったんだ。それで祖父が、子供に剣を教えないか?と言ってきたんだ。あそこは空気も良いし、気分転換に良いと思ってな。子供たちに剣を教えて過ごしていた。そこの子どもたちが、可愛いくてな。この子たちを戦場に送り出したくない、って気持ちが沸き上がってきたんだ。もっともっと強くなりたい、あいつらを守りたい、っと思って、死ぬ気で強くなろうと努力した。そして戦争が二度と起こらないように、次代の王となるシルベスターをサポートしようと思ったんだ」
(師匠・・・)
ミリアは泣きそうになった。エドとして教えていたミリアのことや、同じ仲間たちのことを、そんなに思っていてくれたなんて思わなかったのだ。
(この人はこんだけ騎士として努力して戦ってきたんだ・・・私は少し動けるからって自惚れていたのかもしれない。余計なお世話だって言われるかもしれないけど、私、彼の隣に立ちたい、彼の支えになって、私が隣にいるから大丈夫ですよ、って言ってあげたい・・・)
「少ししんみりしてしまったな」
「・・・いえ、ランドルフ騎士団長のこと聞けて良かったです」
ミリアは後ろを向いて、ランドルフに見えないよう涙を拭った。
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