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第二章:恋の芽
お出かけSide:ランドルフ(前)
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ランドルフは自分を犠牲にしてフェリス国の為に休むことなく精一杯生きてきた。いったいどれだけの人数を殺めてきたのだろうか。人を殺す恐怖心も感覚もだんだん忘れていってしまっていることが怖くてしかたなかった。体の傷も数知れず、結婚もしていない。大きな戦いの後でどうしても下半身が疼くときは、花街に行って沈めたり、後腐れのない未亡人にお相手してもらったりもした。地位が上がるごとに、女はすり寄ってきたが、権力や地位を求めているのが透けて見えてうんざりとした。夜這いをしてくる女もいたが、傷だらけの生々しい体を見るや歪む女の顔を見てきた。そして女は何もなかったように身を引いていった。
ランドルフはいつ死ぬか分からない状況で恋愛や結婚をすることができなかったのだ。そんなランドルフにシルベスターは「そんな生活してたらいつか心が病んでしまうよ」と言われたが、こんな状況のランドルフにどうしろと言うのだ。
そんなある日のこと、ランドルフはシルベスターの護衛役として、彼の大切な妹である第二王女シャーロットの部屋へと向かった。シャーロットの側に、新しい侍女が付いていた。その女は祖父の剣道場で教えていたエドにそっくりで、彼女は体に歪み一つない綺麗な姿勢で立っていた。目を凝らして見てもやはりそっくりだった。
アングレの外交官への歓迎パーティーでも、彼女のことは気になり目で追っていた。パーティーも後半に差し掛かったところ、廊下でアングレの男が彼女に話しかけていて、迷惑そうにしているのが見えた。すると彼女は綺麗な動作で男の手をひねりあげ、男をひれ伏させた。
(何なんだ彼女は・・・誰かの刺客か?)
疑問が次々と沸き起こる。彼女を観察していると、不思議なことに人との間合いの取り方や手の動きが剣士を嗜むもののそれと同じであった。そして彼女が化学者風の男との間で不振な動きをした。この女もちっぽけな誘惑に負けて王族を害そうとしているのかと思うと何だかがっかりした。とりあえず思惑を吐かせようと背後から体を動けなくし、誰も使っていない一室に運び入れ紐でがっしりと拘束した。刃物で脅せば女性であれば泣いて白状すると思えば彼女は頑なに口を閉ざしていた。
体を触って分かったのが、女性らしい丸みは少ないが、男性程のゴツさはなく程よい筋肉で覆われていたことだ。足も長く、滑らかな肌をしていた。犯罪者にそんな感想を持つとはなんてことだと思っていたところに、シルベスターが部屋に入ってきて、ランドルフは自分のしたことに顔が真っ青になった。
その後ミリアの拘束をすぐに解こうとしたが、キツく拘束しすぎてなかなか取れなかった。刃物で切ることもできたが、体を傷つけてはいけない。紐をひとつ外そうとするたびに色っぽい声が漏れ聞こえ、ますます平常心になれず上手くほどけなかった。
紐がようやくとけた瞬間ランドルフはミリアの白く長い手足から見える赤くうっ血した紐の跡と情後を思い浮かばせるのぼせた顔に潤んだ瞳が目に入った。ミリアのスカートの中の脚を触った感覚が急に蘇ってきた。
ランドルフは一瞬で自分の下半身に熱が集中するのが分かった。それからしばらく魔女の術に囚われたように体が動かなかった。我にかえってすぐに土下座をした。
「本当にすまなかった!!」
そう言って頭を強く床に打ち付けたのは、こんな状況で見惚れてしまった罪悪感と下半身を沈めるためでもあった。
彼女はランドルフを責めることなく、詫びも買い物につきあって夕飯を奢るだけでいいと言う。その後シルベスターにミリアを雇った経緯を一通り聞いたのだが、どうしてこのような子が危険を犯さねばならないのか到底理解できなかった。
(彼女を守らねば・・・)
その使命感だけで体が勝手に動きミリアを襲った奴らや黒幕のバロック公爵の護衛たちを次々と倒していったのだ。決して鬱憤を晴らそうとした訳ではない。
その夜は久々に花街に向かい、茶髪でストレートヘアの背の高い女を指名した。ミリアと同じ髪と背格好である女を選んだのは彼の無意識であった。そこで一夜を過ごしたが、なんだか全く気は晴れなかった。
ランドルフはいつ死ぬか分からない状況で恋愛や結婚をすることができなかったのだ。そんなランドルフにシルベスターは「そんな生活してたらいつか心が病んでしまうよ」と言われたが、こんな状況のランドルフにどうしろと言うのだ。
そんなある日のこと、ランドルフはシルベスターの護衛役として、彼の大切な妹である第二王女シャーロットの部屋へと向かった。シャーロットの側に、新しい侍女が付いていた。その女は祖父の剣道場で教えていたエドにそっくりで、彼女は体に歪み一つない綺麗な姿勢で立っていた。目を凝らして見てもやはりそっくりだった。
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体を触って分かったのが、女性らしい丸みは少ないが、男性程のゴツさはなく程よい筋肉で覆われていたことだ。足も長く、滑らかな肌をしていた。犯罪者にそんな感想を持つとはなんてことだと思っていたところに、シルベスターが部屋に入ってきて、ランドルフは自分のしたことに顔が真っ青になった。
その後ミリアの拘束をすぐに解こうとしたが、キツく拘束しすぎてなかなか取れなかった。刃物で切ることもできたが、体を傷つけてはいけない。紐をひとつ外そうとするたびに色っぽい声が漏れ聞こえ、ますます平常心になれず上手くほどけなかった。
紐がようやくとけた瞬間ランドルフはミリアの白く長い手足から見える赤くうっ血した紐の跡と情後を思い浮かばせるのぼせた顔に潤んだ瞳が目に入った。ミリアのスカートの中の脚を触った感覚が急に蘇ってきた。
ランドルフは一瞬で自分の下半身に熱が集中するのが分かった。それからしばらく魔女の術に囚われたように体が動かなかった。我にかえってすぐに土下座をした。
「本当にすまなかった!!」
そう言って頭を強く床に打ち付けたのは、こんな状況で見惚れてしまった罪悪感と下半身を沈めるためでもあった。
彼女はランドルフを責めることなく、詫びも買い物につきあって夕飯を奢るだけでいいと言う。その後シルベスターにミリアを雇った経緯を一通り聞いたのだが、どうしてこのような子が危険を犯さねばならないのか到底理解できなかった。
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その使命感だけで体が勝手に動きミリアを襲った奴らや黒幕のバロック公爵の護衛たちを次々と倒していったのだ。決して鬱憤を晴らそうとした訳ではない。
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