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第三章:真実
スノーランドの王族(前)
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元バロック公爵婦人、グレイス王女は、騎士団に捕まる直前に毒を煽り自害した。
彼女の財産は虐待女性被害者支援団体へと全てが寄付されており、この結末を始めから分かっていたような、そんな気がミリアはした。
(彼女は私やシャーロット様に、彼女の苦しみを分かってほしかったんじゃないだろうか)
彼女は被害者でもあり、加害者でもあった。同じような被害者を助けたい気持ちと、平和に生きている王族への憎しみが混じりあい、彼女の精神は歪んだ方向にいってしまったのだろう。
(可哀想なひと・・・)
数日後、彼女は病死としてこの国でひっそりと葬式が行われることとなった。
『あれが、ミリア=ロング?人に見せられないような酷い傷が肩から胸にあるって』
『SMパーティーで裸になってたって噂よ。被虐趣味でもあるんじゃない?』
『やだ!気持ち悪い』
『王族の血が混じってるって噂があるけど、娼婦の血との間違いじゃないの?』
『あははははは!!』
ミリアの休憩中や仕事中にさまざまな陰口が飛び交っていた。嫌がらせを受けることもあった。そして男性から声をかけられることが増えた。
「お前ミリア・ロングだろ。今日お相手してくれよ。すぐ足開いてくれるんだろ?」
「おい、お前だけずるいぞ!そうだ。僕たち全員お相手してくれよ。好きなんだろ?そういうやつ」
(まただ・・・こいつら本当に懲りないわ)
「おい、お前ら失せろ。お前らの大事な息子たちを不能にしてやろうか」
ランドルフが低い声で男たちを威嚇する。ランドルフは残虐的に敵を殺ることで有名であり、多くの者から恐れられているのだ。
「ひぃ!!」と股間を押さえながら男たちは逃げていった。
「ふん、逃げ足だけは早いな」
「僕はあいつらの顔と名前を暗記してるから、人事部に告発しておきますね、ランドルフ騎士団長」
「でかしたぞ、エドアルド君。俺も殿下に君の書類は全て緊急用件だと伝えておこう」
あの事件の次の日からエドアルドとランドルフがミリアを守るようになった。エドアルドとランドルフは打ち解け、急に仲良くなったようだ。(なんだか仲間外れにされたみたいでちょっと寂しい・・・そう言ったら“ミリア愛好同盟”だと言われて恥ずかしくなった)
シルベスターの使者から、出勤前に彼の執務室に寄るようにとの伝言を受け、ミリアとエドアルドはシルベスターの元へと向かい、執事であるシュバルツに部屋を通される。
「ミリアちゃん、エドアルド君、君たちの噂が貴族に出回っているのは知っているだろう」
「はい。存じております」
シルベスターは彼の部屋にミリアとエドアルドを呼んだ。話の予想はだいたいついていた。二人の姉弟はとうとう覚悟せねばならない。
スノーランドの現国王と王妃、つまりミリアとエドアルドの祖父母が葬式に参加するためフェリス国へ訪問する。その訪問を機にミリアとエドアルドが彼らの孫だということを公表することとなった。スノーランド側も了承しているそうだ。
「そこでミリアちゃん、君の噂が最近酷いだろう。僕・・・というか、義母の提案なのだがな・・・」
シルベスターは噂を払拭するような提案をだしてきた。すべての内容を聞き、ミリアとエドアルドは提案された話をのんだ。
彼女の財産は虐待女性被害者支援団体へと全てが寄付されており、この結末を始めから分かっていたような、そんな気がミリアはした。
(彼女は私やシャーロット様に、彼女の苦しみを分かってほしかったんじゃないだろうか)
彼女は被害者でもあり、加害者でもあった。同じような被害者を助けたい気持ちと、平和に生きている王族への憎しみが混じりあい、彼女の精神は歪んだ方向にいってしまったのだろう。
(可哀想なひと・・・)
数日後、彼女は病死としてこの国でひっそりと葬式が行われることとなった。
『あれが、ミリア=ロング?人に見せられないような酷い傷が肩から胸にあるって』
『SMパーティーで裸になってたって噂よ。被虐趣味でもあるんじゃない?』
『やだ!気持ち悪い』
『王族の血が混じってるって噂があるけど、娼婦の血との間違いじゃないの?』
『あははははは!!』
ミリアの休憩中や仕事中にさまざまな陰口が飛び交っていた。嫌がらせを受けることもあった。そして男性から声をかけられることが増えた。
「お前ミリア・ロングだろ。今日お相手してくれよ。すぐ足開いてくれるんだろ?」
「おい、お前だけずるいぞ!そうだ。僕たち全員お相手してくれよ。好きなんだろ?そういうやつ」
(まただ・・・こいつら本当に懲りないわ)
「おい、お前ら失せろ。お前らの大事な息子たちを不能にしてやろうか」
ランドルフが低い声で男たちを威嚇する。ランドルフは残虐的に敵を殺ることで有名であり、多くの者から恐れられているのだ。
「ひぃ!!」と股間を押さえながら男たちは逃げていった。
「ふん、逃げ足だけは早いな」
「僕はあいつらの顔と名前を暗記してるから、人事部に告発しておきますね、ランドルフ騎士団長」
「でかしたぞ、エドアルド君。俺も殿下に君の書類は全て緊急用件だと伝えておこう」
あの事件の次の日からエドアルドとランドルフがミリアを守るようになった。エドアルドとランドルフは打ち解け、急に仲良くなったようだ。(なんだか仲間外れにされたみたいでちょっと寂しい・・・そう言ったら“ミリア愛好同盟”だと言われて恥ずかしくなった)
シルベスターの使者から、出勤前に彼の執務室に寄るようにとの伝言を受け、ミリアとエドアルドはシルベスターの元へと向かい、執事であるシュバルツに部屋を通される。
「ミリアちゃん、エドアルド君、君たちの噂が貴族に出回っているのは知っているだろう」
「はい。存じております」
シルベスターは彼の部屋にミリアとエドアルドを呼んだ。話の予想はだいたいついていた。二人の姉弟はとうとう覚悟せねばならない。
スノーランドの現国王と王妃、つまりミリアとエドアルドの祖父母が葬式に参加するためフェリス国へ訪問する。その訪問を機にミリアとエドアルドが彼らの孫だということを公表することとなった。スノーランド側も了承しているそうだ。
「そこでミリアちゃん、君の噂が最近酷いだろう。僕・・・というか、義母の提案なのだがな・・・」
シルベスターは噂を払拭するような提案をだしてきた。すべての内容を聞き、ミリアとエドアルドは提案された話をのんだ。
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