秘密の師弟関係

ほのじー

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終章:師匠との恋

団長の思い人Side:キース(中)

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キースがミリアを誘い、一緒に劇場に出掛けた際には、ドレスで着飾ったミリアは誰よりも美しかった。その隣でミリアをエスコートできるキースは鼻が高くなった。



ミリアの趣味はキースと同じく軍記を読むこだった。彼女は頭も良く兵法の話でも会話が白熱してしまった。馬車で話は尽きることなく、楽しい二人だけの空間をキースはまだ終わらせたくなかったが、馬車は無情にも劇場にたどり着く。


(ああ、こんなに楽しいのは久しぶりだ)



劇場ではひがみを言ってくる奴らもいたが、そんなことは全く気にならなかった。



劇が始まると物語に引き込まれ、クライマックスでは横でミリアが涙を流しているのが見えた。


(泣いてる、可愛い。ミリちゃんの涙はとっても甘そうだ)


劇が終わってもまだ涙が止まらないミリアである。キースは慰めてあげるためによしよししてあげていたが、我慢ができず、ミリアの瞳の上にキスをしてしまった。


「なななななななな、何をしてるんですかキースさん!!」
「だってぇそんな無防備な顔されちゃったらキスしちゃうでしょ?」


(怒った顔も可愛いなぁ)



無表情だったミリアの顔から色々な表情を引き出すのがキースの楽しみだった。



帰り際にダメ元でキスをねだったら、照れた表情で頬にキスをしてくれた。



「しょうがないですね・・・目をつぶってください」


チュッー



「じゃあ、また明日」



照れながらキスをするミリアの表情はどんな女性よりも魅力的で、キースは馬車の中でにやけっぱなしであった。


(僕があんな子供じみたキスで喜ぶなんてな・・・)



キースはもうまともな恋ができないと思っていたが、ミリアとならば純粋な恋をして、付き合って、時が経てば結婚もいいな・・・なんて考えも浮かんできた。ランドルフもミリアが好きなのは分かっているが、こちらとて運命だと思う相手を諦める訳にはいかない。



(とりあえずランドルフが完全に諦めてくれるのを待つか)



いつもランドルフ近づく女性は彼に冷たくされ、キースが優しく慰めて美味しくいただくというパターンができていた。



(ランドルフが初恋を諦めてくれるだろうか)




キースは少し不安が募っていたが、ある日ミリアとシャーロットが拐われたという情報が入った。爆発に巻き込まれた騎士たちは負傷してしまい、難を逃れたシルベスターの影の一人が誘拐された場所を判明させ、シルベスターの元へ戻ってきた。そこは、元バロック公爵婦人の持っている土地で、今日、婦人のパーティーが開催されるということだ。パーティーについて調べると、拐ってきた女性を調教し、観客である男たちに性的な奉仕をさせるという悪質なパーティーであることが分かった。



「急げ!!もうパーティーの開始時間になっちまう!!」




ランドルフを筆頭にブラン騎士団とヴェール騎士団が現場へ向かう。キースもそれに続く。




『この会場はブラン騎士団が包囲した、ここの主催者である元バロック公爵婦人、そして参加者は貴族であろうと拘束するのでおとなしくするように!!』



その合図で騎士団員が会場内に駆け込んでいく。次々と逮捕していくなかで、キースはミリアを探した。服をボロボロにはだけさせ、大きな胸が露になっているミリアが檀上に見えた。



「ミリちゃん!!今助けるからねー!」



そう言って近づいた時、ミリアの肩から胸に、くっぱりと斬られた傷があると気づいた。そういった傷は騎士団で見慣れているが、女性がああいった傷を持っているのを見るのは初めてだ。


(災いの象徴・・・)



キースは一瞬助けることを躊躇してしまった。そんな中ランドルフがミリアに気付き、誰にも見えないよう彼女の拘束を解いて別室に運んでいった。




しばらく動けなくなったキースだったが思考が回復してくる。



(ーーーーなんてことだ!)



ランドルフがミリアを見つけた瞬間躊躇わず助け出していたにもかかわらず、キースは災いを恐れ、手が動かなかったのだ。




(一瞬でも俺は彼女を助けることを躊躇してしまった・・・)



ランドルフが助けたことで安心しきっていたミリアの表情が残像として残る。



(ああ・・・)




ーーー俺の敗けだ、ランドルフ。


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