秘密の師弟関係

ほのじー

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終章:師匠との恋

最終決戦!(前)

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「あら、思ってたよりイケメンじゃないの!騎士団長やってたっていうから、もっと野蛮そうな方が出てくると思ったわ」
「そうね、今日婚約が発表されるのかしら」
「まだ分からないわよ。うちの娘にもチャンスがあるかもしれないわ。キャサリン!挨拶に行くわよ!」


夕方になりとうとうランドルフのお披露目パーティーが始まった。今回はガーデンパーティーで、庭にライトが付けられ夜でも楽しめるようになっている。そこには春らしい色とりどりのチューリップが咲き誇っていた。ランドルフと彼の父であるサド侯爵はさっそく貴族たちに挨拶をしていた。婚約者となるだろうと噂されているエステルもパーティーに参加しており、侯爵家と関係を持とうとする取り巻きが彼女のまわりを囲っていた。


ーーー


『殿下の馬車が到着しましてよ』
『殿下はランドルフ様のご友人であるとか』
『どなたといらっしゃったのかしら?』



ーカツン 


男女の足音が聞こえてくる。



しーーーーーーーん



数秒の沈黙。




『誰、あの方』
『なんか、神々しい・・・』
『どこの姫だ?』

ストレートの髪をアップにさせ、全身黒色のドレスに身を包んだ彼女の瞳はオーシャンブルーに輝き、まるで闇夜の海に沈む宝石のようだ。豊満な胸に、スリットの入ったドレスの裾から歩く度に見え隠れする足は参加した男全員の目線を奪った。


堂々とシルベスターの隣を歩くミリアに女性たちは尊敬の眼差しを向けた。ただ一人を除いては。


その中でランドルフはミリアを食い入る程見つめていた。



「お久しぶりですね、サド侯爵。ランドルフも、久しぶりだな」
「殿下、これはこれは、愚息のお披露目パーティーにお越しくださいましてありがとうございます」「ありがとうございます」


ランドルフはシルベスターに感謝を述べるも、ミリアを見つめたままだ。


「ところで殿下、同伴されている方はどなたですかな?」
「ああ、紹介するよ。スノーランド国王の孫娘のミリア・ロング嬢だ」
「はじめまして。ミリア・ロングと申します」
「これはこれは、お美しい、スノーランドの女性は皆このように美しいのかな?」


サド侯爵はミリアの存在に興味津々であり褒め称えたが、挨拶をそこそこに、パーティーの挨拶が始まった。


「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。今日の素晴らしい日に殿下もお越しくださいました。改めまして、息子であるランドルフを侯爵の跡取りとして、紹介したいと思います。これから是非とも愚息を宜しくお願いしますぞ。話はこれくらいにしまして・・・では乾杯!」
『乾杯』


庭の奥からダンス用の生演奏が響きだす。軽食も出され、本格的にパーティーが始まった。



ランドルフとエステルはファーストダンスを踊り、皆この二人が婚約することを確信していた。一曲踊り終わって、エステルは女性たちに「お似合いだわ」と称賛され、エステルも満更ではなさそうであった。


シルベスターはミリアをダンスに誘う。ミリアが承諾した時、アップテンポで高度な曲調に音楽が変わり、ほどんどの者が休憩をしていたのだが、シルベスターはミリアの手を引き、「さあ、君の美しさをもっと引き出そう」と耳打ちして踊りだした。


『うそ、あの曲に付いていってる』
『凄い、息がぴったし』
『まるで天女だ・・・』

ミリアはシルベスターに何度もターンをさせられスカートがヒラヒラと舞う。曲に乗って足を上にあげたりシルベスターに腰を支えられ体を反らしたりと、普通の女性ではできないポーズもやり遂げた。



(剣舞やってたから踊りは得意なんだよね)


体が柔らかく筋肉もあるので、シルベスターのどんな動きにも合わせることができたのだ。シルベスターもわざとミリアに難しい要求をし、楽しんでいるように見えた。


『素敵・・・』
『お姉さまとお呼びしたいわ~』
『ああ、一度でいいからお相手願いたい』
『あの艶かしい足と引き締まった腰を支えて色んなポーズをさせたい・・・』


招待客は男も女も皆ミリアに引き込まれる。曲が終わると我こそはとミリアに男が群がっていった。女性も話したそうに目をキラキラさせていた。その中を掻い潜り、ランドルフがシルベスターとミリアの前に立つ。



「殿下、是非とも私が彼女とダンスを踊る許可を」
「・・・う~ん、断るよ。今日は僕のパートナーだから、誰にも踊らせないよ。特に彼女を不安にさせた君にはね」
「っ・・・」



ランドルフのダンスの許可を断るシルベスター。しかしミリアは一歩前に出る。ミリアはシルベスターに目配せをして、シルベスターから剣を渡される。その剣をランドルフに投げやった。



「私、ミリア・ロングはランドルフ・ド・デルタに決闘を申し込みます!」



ーーーざわざわ

『どういうこと?』
『あの二人、何かあるのかしら』


「ミリア・・・」

ランドルフの顔は苦痛に歪む。


ミリアは剣を掲げ高々に宣言した。


「ランドルフ騎士団長、いえ、師匠。私はあなたが好きです。・・・もし勝ったらあなたの恋人にしてください!」



ランドルフは驚いた顔をしたが、ミリアの本気が伝わり、決意をしたように、その剣を握りしめた。







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