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スノーランド婚約結婚編
忘却
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(ん・・・ここはどこ?)
「ミリ姉!!よかった、目を覚ましたんだね!!」
「・・・?あなたは・・・誰?」
「っ・・・ミリ姉、もしかして・・・」
(私この人知ってる気がするけど・・・思い出せない)
ーツキン
「うっ・・・」
「待ってて、お医者さん呼んでくるから」
「先生、どうでしょうか・・・」
「きっと、頭を打ったショックで記憶をなくしてしまったんでしょう」
「治りますか?」
「う~ん、これだけは何ともいえません。すぐに思い出す人もいれば、一生思い出せない人もいる」
「・・・」
ミリアは自分のことが思い出せなかった。鏡を見る自分が、なぜか他人のように感じる。双子の弟だと言われたエドアルドのことも分からないが、顔がかなりそっくりなので、間違いないだろう。
「ミリア、大丈夫よ、あなたはここでゆっくりと療養したらいいわ。実は・・・皆で話し合ったのだけれど、あなたを私たちに養子にしたらって案が出てるのよ。あなたの叔父や皆も、大賛成してたわ。養子だったらあなたを王族として守ることができる。その方が私たちも安心よ」
ミリアの祖父母だというこの二人はこの国の国王と王妃である。ミリアは二人の孫らしく、母はミリアが生まれてすぐ亡くなったようだ。
ミリアはしばらく考え、その案を飲むことにした。
「エド、あなたも養子になってもいいのよ」
「僕はフェリスの大使館で働くから、融通利くし別にいいよ。ミリ姉だけ養子にしてあげて」
ミリア・ロング改め
ーミリア・フォン・ストールベリ
サインをして手続きが無事完了した。
国民へもミリアが養子となったことが発表された。次期国王は叔父だともう決まっているので、継承権は放棄する旨も国民に伝えてある。
「ミリ姉、僕は明日フェリス国に一旦戻らないとなんだ。できるだけ早くまたこっちに出張できるよう頼んでおくから、ミリ姉はゆっくりしててね」
「ありがとう、エド」
(私は優しい弟がいるのね・・・)
ミリアの記憶は戻らないが、心がとても温かくなった。
「ミリアさん、私がこれからあなたの家庭教師となるマイヤーです。お怪我なされたそうですね、無理のない程度に勉強していきましょう」
「はい、マイヤー先生」
ピッチリとお団子にしてくくり、優しさに厳しい心も備えている知的な目で微笑んだのは、今日から勉強を教えてくれるマイヤー先生だ。
「スノーランドは人間と妖精が恋に堕ちて、この地に住居を構えて生活を始めたと言われています。そしてその子孫があなたたち王族であると言われています」
「すごくロマンチックな歴史ですね・・・」
「そうですね。そしてその子孫は皆水色のガラス玉のような瞳を持っています、あなたのようにね」
ミリアもエドアルドも、そして祖父母も皆目が水色であることを思い出す。
「普通国民の瞳は何色なんですか?」
「基本的に茶色が多いですね。でも戦後移民も多少入ってきたので、今では様々です」
ミリアはマイヤー先生との時間が一番の楽しみとなった。記憶が無くなる前も勉強が好きだったのだろう。空いた時間は図書館に籠った。
(散歩も好きだわ・・・)
ミリアは無性に体を動かしたくなることがある。ミリアを守っている騎士の剣を見ると、無性にウズウズするのだ。
(そんなはしたないことはしてはダメよ)
「はぁ・・・」
裁縫を教えてもらうも、なかなか上手くいかない。
(ちょっと気分転換に行こうかしら)
「あ、リッヒ、丁度よかった!散歩に行きたいの」
「それなら私がお供致しましょう」
「あら、リッヒは忙しいのではなくて?宜しいの?」
「急ぎの要件はないので、大丈夫です」
リッヒは執事で、食事などの生活面やスケジュール管理を任されている若くして優秀な一人だ。歳は27歳で、彼の父は国王の宰相をしているそうだ。顔はクールな印象で鼻筋は高く、口元は薄めである。黒縁メガネに黒髪で、ザ・執事という感じだ。
ミリアは怪我のこともあり、一人で出かけることは禁止されている。ミリアは暖かめのコートを羽織った。
「ミリア王女、お手を」
「リッヒったら過保護ね。もう足は滑らさないわ」
「私の目の前であなた様がお怪我なさったら私はもう、心中する勢いですよ」
「ふふふ、大げさよ。分かったわ」
ミリアはリッヒの手を取り、ゆっくりと歩きだした。
「あ~外気持ちいわ~~走り回りたい!」
「・・・春になったらふかふかの草原へと連れていって差し上げますから、今はおやめ下さい!」
「あ、あそこにイチゴが生ってるわ!」
ミリアは駆け出そうとしたが、バランスを崩した。
「ミリア王女!」
リッヒはミリアの手を握りしめ、自身へと引き寄せた。
ーポフッ
リッヒとミリアを抱きとめた。しばらくリッヒとミリアは体が密接されていたが、はっとしたミリアが体をそっと離した。
「あ・・・ありがとうリッヒ」
「だから言ったでしょ?ミリア王女」
「ミリ姉!!よかった、目を覚ましたんだね!!」
「・・・?あなたは・・・誰?」
「っ・・・ミリ姉、もしかして・・・」
(私この人知ってる気がするけど・・・思い出せない)
ーツキン
「うっ・・・」
「待ってて、お医者さん呼んでくるから」
「先生、どうでしょうか・・・」
「きっと、頭を打ったショックで記憶をなくしてしまったんでしょう」
「治りますか?」
「う~ん、これだけは何ともいえません。すぐに思い出す人もいれば、一生思い出せない人もいる」
「・・・」
ミリアは自分のことが思い出せなかった。鏡を見る自分が、なぜか他人のように感じる。双子の弟だと言われたエドアルドのことも分からないが、顔がかなりそっくりなので、間違いないだろう。
「ミリア、大丈夫よ、あなたはここでゆっくりと療養したらいいわ。実は・・・皆で話し合ったのだけれど、あなたを私たちに養子にしたらって案が出てるのよ。あなたの叔父や皆も、大賛成してたわ。養子だったらあなたを王族として守ることができる。その方が私たちも安心よ」
ミリアの祖父母だというこの二人はこの国の国王と王妃である。ミリアは二人の孫らしく、母はミリアが生まれてすぐ亡くなったようだ。
ミリアはしばらく考え、その案を飲むことにした。
「エド、あなたも養子になってもいいのよ」
「僕はフェリスの大使館で働くから、融通利くし別にいいよ。ミリ姉だけ養子にしてあげて」
ミリア・ロング改め
ーミリア・フォン・ストールベリ
サインをして手続きが無事完了した。
国民へもミリアが養子となったことが発表された。次期国王は叔父だともう決まっているので、継承権は放棄する旨も国民に伝えてある。
「ミリ姉、僕は明日フェリス国に一旦戻らないとなんだ。できるだけ早くまたこっちに出張できるよう頼んでおくから、ミリ姉はゆっくりしててね」
「ありがとう、エド」
(私は優しい弟がいるのね・・・)
ミリアの記憶は戻らないが、心がとても温かくなった。
「ミリアさん、私がこれからあなたの家庭教師となるマイヤーです。お怪我なされたそうですね、無理のない程度に勉強していきましょう」
「はい、マイヤー先生」
ピッチリとお団子にしてくくり、優しさに厳しい心も備えている知的な目で微笑んだのは、今日から勉強を教えてくれるマイヤー先生だ。
「スノーランドは人間と妖精が恋に堕ちて、この地に住居を構えて生活を始めたと言われています。そしてその子孫があなたたち王族であると言われています」
「すごくロマンチックな歴史ですね・・・」
「そうですね。そしてその子孫は皆水色のガラス玉のような瞳を持っています、あなたのようにね」
ミリアもエドアルドも、そして祖父母も皆目が水色であることを思い出す。
「普通国民の瞳は何色なんですか?」
「基本的に茶色が多いですね。でも戦後移民も多少入ってきたので、今では様々です」
ミリアはマイヤー先生との時間が一番の楽しみとなった。記憶が無くなる前も勉強が好きだったのだろう。空いた時間は図書館に籠った。
(散歩も好きだわ・・・)
ミリアは無性に体を動かしたくなることがある。ミリアを守っている騎士の剣を見ると、無性にウズウズするのだ。
(そんなはしたないことはしてはダメよ)
「はぁ・・・」
裁縫を教えてもらうも、なかなか上手くいかない。
(ちょっと気分転換に行こうかしら)
「あ、リッヒ、丁度よかった!散歩に行きたいの」
「それなら私がお供致しましょう」
「あら、リッヒは忙しいのではなくて?宜しいの?」
「急ぎの要件はないので、大丈夫です」
リッヒは執事で、食事などの生活面やスケジュール管理を任されている若くして優秀な一人だ。歳は27歳で、彼の父は国王の宰相をしているそうだ。顔はクールな印象で鼻筋は高く、口元は薄めである。黒縁メガネに黒髪で、ザ・執事という感じだ。
ミリアは怪我のこともあり、一人で出かけることは禁止されている。ミリアは暖かめのコートを羽織った。
「ミリア王女、お手を」
「リッヒったら過保護ね。もう足は滑らさないわ」
「私の目の前であなた様がお怪我なさったら私はもう、心中する勢いですよ」
「ふふふ、大げさよ。分かったわ」
ミリアはリッヒの手を取り、ゆっくりと歩きだした。
「あ~外気持ちいわ~~走り回りたい!」
「・・・春になったらふかふかの草原へと連れていって差し上げますから、今はおやめ下さい!」
「あ、あそこにイチゴが生ってるわ!」
ミリアは駆け出そうとしたが、バランスを崩した。
「ミリア王女!」
リッヒはミリアの手を握りしめ、自身へと引き寄せた。
ーポフッ
リッヒとミリアを抱きとめた。しばらくリッヒとミリアは体が密接されていたが、はっとしたミリアが体をそっと離した。
「あ・・・ありがとうリッヒ」
「だから言ったでしょ?ミリア王女」
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