秘密の師弟関係

ほのじー

文字の大きさ
103 / 121
スノーランド婚約結婚編

忍び寄る影

しおりを挟む
「今日は二人で会うことを許してくれてありがとう、ミリアちゃん」
「いぇ・・・今日はどういったご用件でしょうか」


シルベスターはミリアと二人で話がしたいということだったので、ミリアとシルベスター雪で覆われた庭をゆっくりと散策して、庭の中央にあるベンチに座った。遠くからスノーランドとフェリス国の騎士が見守っている。


「ミリアちゃんが記憶喪失なのはエドアルド君から聞いている。僕も他言はしていないよ。どうかな?何か思い出してきたことはある?」
「・・・いえ・・・まだ何も」
「そうか・・・」



シルベスターは考える素振りをした。



「ミリアちゃん、君は今誰か好きな人はいるのかい?」
「え・・・?好きな人?」
「そう、誰か気になる人」



(シルベスター様、急に何を言うのかしら。そんな人いないわ)


ミリアは遠くで見守っている騎士たちをぼんやりと見ると、ランドルフと目が合った。するとミリアはオーロラを見に行った日の出来事を思い出した。



(私・・・無意識に彼とキスしようとしてたわ・・・)



急にカーッと顔が熱くなってくる。



「あれ、ミリアちゃん思い当たる人いるのかな」
「そ、そんなことないです。誰もいないです!」
「そっかぁ~」



シルベスターはミリアの心を読んでいるかのごとく、じっとミリアを見ている。


「じゃあ、質問を変えよう。ミリアちゃんは急に体を動かしたくなることはないかな」
「・・・あり・・・ますけど」
「じゃあ、物が落ちそうになったとき、物が地面に落ちる前にその物を拾った経験は?」
「・・・あります」


シルベスターは目線を遠くの木に向ける。


「じゃぁ・・・」





ーーーーーヒュン!!



遠くから何かが猛スピードでシルベスターに向かってくる。


「シルベスター様、危ない!!!!」



ミリアはシルベスターに当たりそうになったその物を必死にパシッと弾いた。騎士たちも焦ったようにこちらに向かってくるが、シルベスターはそれを制止する。



「大丈夫だ。ただのゴムボールだよ」



ミリアが手にしたものを見やる。反射的に手にしたのは、黄色の柔らかいゴムボールであった。



「こ・・・これは・・・」
「ごめんね、試すようなことをして。ミリアちゃんの体はちゃ~んと覚えているんだよ。フェリス国で僕や妹の騎士をしていたことを。君は僕を守ろうとしたんだ」
「私が・・・騎士を・・・?」
「エドアルド君は意地悪だなぁ。君に重要なことを伝えていないんだから」



シルベスターは立ち上がり、ミリアを上から見下ろした。



「君は騎士団で会計士だっただけじゃない。騎士をしていたんだよ。君は強くなろうと毎日頑張っていたじゃないか」



(私が・・・強く・・・??)



ーーーーー『ねぇ、師匠、叶わないと思うけど、僕はもっと強くなって師匠の背中を守るのが夢なんだ』


誰かの広い背中が見える。


ーーーーー『マックス!!』


ミリアは赤毛の男の子を庇い、胸と肩を斬られた場景が浮かんできた。




記憶の中の自分の肩と胸から血がドクドクと流れ出している。




「い、いやぁーーー!!!!」




ミリアは意識を飛ばした。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...