イケボな宰相と逃げる女騎士

ほのじー

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過去~サイラス視点~

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※サイラス視点で三話続きます


サイラスは「子供らしくない子供」であった。父も母もそれなりに愛情を注いでくれてはいたが、親離れが早かったのと、弟や妹が出来たことでサイラスは伯爵家の図書館で過ごすことが多かった。十歳になる頃にはほとんどの本を読み終えてしまった。すぐに家庭教師の知識を越えてしまうため家庭教師もころころと変わっていた。

「第三王子シルベスター様と同学年なのだからご学友になりなさい」


父にそう告げられ十二歳の時に王都の学校に通うことになったのだが、全てが簡単すぎて退屈な毎日を送っていた。


「おい、サイラス・・・お前誰にも関わらずずっとここで学生生活送るつもりか?」



当時第三王子だった国王シルベスターがサイラスに見かねて週末に強制的に色々な場所に付いていった。シルベスターの母は侍女だったので、彼は優遇をあまり受けず、彼がどこに行こうが王城の人たちは無関心であった。


「ほら、これ食べろよ」


出店で買った饅頭をシルベスターはサイラスに手渡し、道の通りにあるベンチで食べ物を頬張っていた。黙って座っていたサイラスにシルベスターは話しかけた。


「俺は平民だって皆笑って平等に過ごせるような国を作りたいんだ。ほら、見ろよ。あんな小さな戦争孤児がスリとか犯罪を犯しながら生活しているんだぜ」



サイラスは街に目を向けた。裸足で泥だらけになりながら必死に生きている人間、何も考えず買い物をする貴族たち、一生懸命働く商人たち・・・シルベスターにはこの国の違う未來が見えているらしい。



(ああ、こいつの見ている未來はなんて素敵な場所なんだろう)



シルベスターが目をキラキラさせながら夢を語るのを横目にサイラスは決意した。



(この人に付いていこう)



論理や効率だけ考えるのではなく色々な人の目線で考える彼には王の器がしっかりと備わっていた。サイラスはただただ貴族を潤すだけの張りぼての世界はどうもつまらなく感じるようになった。


「作れますよ、そんな世界。私ができるだけサポートしましょう」
「頼もしいな、サイラス!まあ第三王子ができることなんて少ないんだけどな!はは」


シルベスターは卒業後田舎街の復興を任されサイラスも共に同行し、ワインや絹などを生産させ、それらを王都にPRし販売するシステムを作りだした。売上も上がりその土地も潤ってきていると感じだしていた直後である。
王城で死に至る病が流行した。国王と第一王子が亡くなり、第二王子も体に障害が残った。そんな時第三王子であったシルベスターが国王となったのである。


+++


「なあサイラス、この国もお前の助けもあったおかげで大分平穏だ。そろそろ大事な女性を探してもいいんじゃないか」
「跡取りの心配でしたら不要です。弟夫婦がもう二人目を産むそうですし、末の弟も来年結婚するそうです」
「う~ん、そんなつもりで言ったんじゃないんだがなぁ」


シルベスターは困ったようにサイラスに向き合っていた。城で出会う女性はサイラスを
恐れ、避けているようでもあった。近づいてくる女は大抵国王にお近づきになりたいか金目当てであり仕事中も女性には距離を置いて接していた。


+++


「はじめまして。本日からローズ様の護衛をさせていただきますジュリア・マイルズと申します。」


サイラスが宰相となり国だけの為に身を呈して七年が経過した。そんな中サイラスの前に現れたのは、まだ年若い女騎士であった。

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