星獣の機迹

なビィ

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045. 旅人の寓話

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「……といっても、あくまで噂程度なんだけどね?」


はぐらかすように笑いながら後付けをする。



「旅人同士で語られる与太話ってあるじゃない?

 子供を寝かしつける時に聞かせるような……。

 そんな感じの内容だよ?」


「俺は普段あまり他の旅人と接点がないからな……。

 構わない。聞かせてくれ。」



真剣な顔で答えるラウル。

少し複雑な顔をして話を続けるアシュリィ。


「あ、うん……えっとね――。」





――そこで語られたのはとある半獣の物語。



   ― ― ― ― ―


半獣とは【獣人と獣】の合いの子とされ

人間と獣人の合いの子、

半人と同じく本来は子を成さないはずなので

空想、絵空事の中での話とされていたが、

いつ頃からか『星の道』の影響下で発生する例が挙げられるようになった。


半人と同じく希少種だが、

知能は低くなり、より獣に近い行動をとるとされている。

会話は個体によるが辿々しいものとなる。


   ― ― ― ― ―



獣人と人間が仲良く暮らす小さな集落がありました。

その集落の前に捨てられていた半獣の子。

優しい老夫婦に拾われたその子はすくすく育っていきました。


獣人には体を鍛えられ、人間には常識を教わり、

老夫婦には愛情をもらいました。


やがて大きくなった半獣の子。


ある日、夢でお告げがありました。

「光のもとへお行きなさい。」


その言葉を信じて、半獣の子は旅に出ます。


たくさん旅をして、ついにはお告げ通り

光のもとへと辿り着いたのです。


そうして帰ってきた半獣の子は

より強く、より賢く、より愛情深くなり


皆に恩返しをするために集落を守り、

やがて守護者と呼ばれるようになりました――。





「――こんな感じだったかな?」


「……『星の道』へ行って願いを叶えたという類の話か?

 確かに子供向けだとは思うが……。」



軽く頷きながら


「ざっくりとはそう。

 でも、これが旅人同士の話の種になるのは分かる?」


「……えていうなら……。

 ……問題が無さすぎる……か?」



アシュリィが目を丸くする。


「最初に気付くのがそこなんだ。すごい。


 うん、【事件】がないのよ。

 こういう話って、途中で何か悪い事件が起こって

 それを解決してめでたしめでたし。

 でしょ?」


ラウルが頷く。


膝元で寝ているリリナに振動が伝わらないように気を付けつつ、

軽く手振りを加えながら話を続ける。



「子供向けとしたらこれでいいのかもだけど。

 でも少し違和感があるのよね。


 この話でいうなら

 喋れなくていじめられたから、とか。

 悪い人たちがやってきて集落を守るために、とか。

 そういうのがないのよ。

 まぁ、こういう話です。って言い切られたらそれまでなんだけどね。」



リリナを包み込むように両手を組み直し


「噂話も信憑性はないんだけどね……


 途中の【事件】をないことにして作られたんじゃないかーとか。

 その集落が本当は研究所で、人体実験をしてたんじゃないかーとかね。


 それと、子供を『星の道』で半獣にして守護者に仕立て上げたんじゃないかーって。」



そして、今度は少し前のめりになり

まるで怖い話でもするかのように。



「でもね、元の話を一度ちゃんと確認しておこうと考えた時もあったんだけど。

 ……ないのよ。一切。

 書物や読み物としての痕跡を見つけられなかったの。


 もちろん私の見逃しもあるのかもしれないけど。

 大量の書物を保管してる所へ行った時についでに調べたこともあるのよ?

 でも、なかったの。」



「……確かに気にはなるな。」



「うん。今まで会った人も口伝以外では見たことがないって。

 かといって、そこまで熱心にこの話を調べたわけじゃないからここ止まりなんだけど。


 でももし仮に、この噂話の通りなら『星の道』を利用したってことにならない?」



考えるように腕を組み、


「なるほど……元の話の由来諸々はさておき、

 『星の道』の研究とかこつけて人体兵器の技術を開発しようとする輩は出てくるだろうな……。」



「ま、難しい話は分からないけどね。

 話せるとしたらこれくらいだよ?」



「いや、充分だ。ありがとう。」



 ― まだ確立された技術ではない……。

   ましてや俺が子供の頃の話だ。

   アイツは本当に何だったのか……。


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