星獣の機迹

なビィ

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066. 海鮮の馳走

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「その実は酸味が強ぇからなぁ!

 途中で実を齧ってやるとさっぱりするぞぉ!」


リリナとラウルのやり取りを見て、

熊の主人が楽しそうに笑いながら補足説明を入れる。



「うんっ! すっごい酸っぱかったぁ!」


リリナもその笑いに応え、笑顔で返答する。

そうかそうか、と笑いながら相槌を打ち、再び他の客席へと向かう主人。



 ――



「これは……凄いな……。

 食べるのは初めてだが、確実に美味いことが分かるぞ……!」


そういうと鼻をひくつかせ、口を閉じてはいるのだが

その脇から唾液が垂れそうになっている。



一同が静かになる。

その沈黙の中、皿に盛り付けられた乗った焼き料理からは

未だにじゅうじゅうと音が鳴り響き、その度に香ばしくも淡白な香りが広がっていく。

そして一人一人の目の前にはとろりとして濃厚な漬け汁。



三人がごくりと喉を鳴らし、目を見合わせる。





「……食べよっか。」


「……。」


「やったー!」


三人が思い思いの表情をしながら、肉叉にくさをかちゃりと持つ。


特に決めたわけでもなく、全員がまず魚から手を付ける。

淡白なように見える白身魚は脂が乗っていて、肉叉にくさを通すとほろりと解けていく。

その一切れをまず一口。リリナも二人を見て真似をする。



「「「 ――!! 」」」


この店で海鮮に慣れているはずのアシュリィも目を丸くする。


――甘い。

果実や蜜といった、舌に残る甘さではなく。

魚介類の肉の脂による甘さ、そしてそれに伴う美味さに思わず三人が舌を巻く。



ラウルはその旨味に硬直し、

リリナは驚き、口を手で押さえている。


三人とも声が出ず、口の中の咀嚼に夢中になっている。


ごくりと飲み込む音が聞こえ、アシュリィが口火を切る。



「……次……これにつけてみよ……?」


返事はない。

……が、全員が黙認した状態で再び魚に手を伸ばす。



柔らかい身がとろりとした液体に浸され、その液体の抵抗で身がほどけそうになるが

それを掬い上げる。


白く美しい光沢を持つ脂の乗った身が、濃厚な味付けを持つ液体を纏って香り立つ。



留まることのない唾液を飲み込み、三人が同時に口へ運ぶ。





――ぱくっ。



口に含んだ瞬間に濃厚な香りが鼻腔を通り抜け、

じっくりと煮込まれたその液体は素材本来の甘みと旨味を損なうことなく、

少量の香辛料を加えることによって、更に旨味を引き出すかのように味付けされている。



「「「 ……。 」」」


三人が一時硬直する。

もぐ、もぐ。とゆっくり咀嚼をし、喉を通し胃へと送り届ける。





「……。」

ぶるるっと身を震わせ、机に両肘をつき、両手で顔を隠すアシュリィ。





「……海……これほどとは……。」

感動しているのか、悔しいのか分かり難い表情をしながら

片手で両目を覆うラウル。





「……っ! ……っ!」


ラウルの方へ身体ごと向け、美味しいということを伝えたいが

言葉で表現できないことがもどかしいのか、

困り眉の涙目でラウルを見上げ、訴えているリリナ。





暫しの間、静かな食事風景が流れていく――。


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