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073. 離別の刻限
しおりを挟む入口を背にして項垂れている、寝床の上の少女へと
優しくも恐る恐る話し掛ける。
「リリナちゃん……?」
小さく震えていた身体がその声にぴくりと反応し、
ゆっくりと振り返る。
「……。
おはよ……アシュリィ。」
その声は震え、今にも涙が零れ落ちそうになるのを必死に堪えている。
……だが、本人は気付かれまいと笑顔を作ろうとしているのだ。
「……ラウルがね……いないの……。
分かってたけど……。
もう……行っちゃったの……。」
「――!」
途中で頭を過っていた嫌な予感が的中してしまった。
「ラウル……優しいから……。
私が喜ぶこと、いっぱいしてくれようとしてたの分かるの。
……だから……っ、私も……。
心配……かけたく……っ、なくって……!」
口にすることで感情が表へと出そうになって言葉が所々詰まる。
笑顔で堪えてはいるが、段々と、瞳が涙の潤いできらきらと光り始める。
服の裾を握り締め、口をぎゅっと結び、
微笑むようにして涙を堪えている。
「――っ!」
居ても立ってもいられず、肩に掛けていた荷物袋を投げ捨てるように外し、
リリナへと駆け寄って抱きしめる。
「……リリナちゃん、聞いて……。
……。
二人が出会って間もなくって。
でも、二人がお互いをすっごい大事に思ってたのは
あたしでも分かる。
最初は『星の道』のことを聞きたかったからっていうだけだったんだけど。
一緒にいる時間が増えて、二人のことも知れて。
仲が良くって、お互いがお互いを思いやれて。
いいな~、羨ましいな~って思ってた。
もちろん二人が大変な目に遭ってたってのは分かってるけどね。
でもね、あたし、友達はできるけどほとんど一人旅だったからさ。
そんな二人が、お互いを思いやれてる二人が、
自分の気持ちを押し殺して別れる選択をしてるようにしか見えなかったの。
そんなの……あたし、嫌なの。
……。
だからね、リリナちゃん。
教えて。
あなたは、本当はどうしたい?
……リリナちゃんの本当の気持ちを教えて。」
……。
抱きしめていた小さな身体が震え始める。
「……っ、……わたしっ……。
私……っ、ねっ……!」
声が途切れる。感情が漏れ出す。
「……ラウルと、一緒に……っ、行きたい……っ!
一緒に……っ! 行きた……っ、かった……よぉ……っ!」
堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出す。
「一緒に……いたい……よぉ……っ。
――っく。 ――っ。」
笑顔はもうなく、感情に流されるがまま、静かに大粒の涙だけがぽろぽろと落ちていく。
もう、声にすらなっていない。
感情によって押し出される、喉を絞るような音だけが全てを物語る。
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