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温泉町セイナにもう一日滞在すると決めた私は、翌朝、女将さんが教えてくれた朝市を覗いてみることにした。朝市は宿のすぐ下に広がる通りで、夜明けから地元の人々が店を開き始めるらしい。前夜のゆったりとした温泉でぐっすり眠り、体が軽い私は、ローズや護衛たちを誘ってまだ薄暗い早朝の町へ繰り出した。
空はほのかに白み始めたばかりで、路地には朝霧が立ち込めている。ひんやりとした空気を吸い込むと、体がシャキッと目覚めたように感じる。温泉街というだけあって所々から湯気が上がっており、硫黄の香りが鼻をくすぐる。こうして早朝の街並みを歩いていると、温泉旅館が軒を連ねる通りに小さな屋台や露店がポツポツと姿を現し始めた。
「まだ準備中かな……?」
私がきょろきょろしていると、袖を引いてくれたローズが「あ、あちらに幟(のぼり)が立ってますよ」と指さす。幟には「朝市」と書かれ、下には山菜や野菜のイラストが描かれている。そこが中心地なのだろう。私たちはゆっくり坂を下り、通りに出ると、数軒の店がすでに営業を始めていた。
山から採れたばかりのキノコや野草、近隣の牧場で作られた乳製品、川魚の干物などがずらりと並ぶ光景はまさに山の恵みの宝庫。観光客らしき人々もちらほらいて、それぞれ買い物したり写真を撮ったりしている。出店の人々は「いらっしゃい!」と元気な声をかけてくるが、王宮の大市で感じた重々しさとは無縁の、アットホームな活気があった。
「わあ、キノコがこんなにたくさん並んでるわ。見たことない種類ばかり……大丈夫かしら?」
私がキノコの山を見て苦笑いすると、店主の老夫婦が「山で採れるけど毒じゃないよ。ちゃんと煮込めば旨味が出る!」と自信満々に薦めてくれる。さすがに今すぐ料理できるわけじゃないが、乾燥キノコもあるらしく、旅の途中で使うにしては面白いかもしれない。私は少量だけ買ってみることにした。
隣の屋台では朝市限定の温かいスープを販売していた。店のおばあさんが鍋をかき回し、山の根菜や豆がたっぷり入った素朴なスープをよそってくれる。湯気が立ち上り、朝の冷えた空気の中でこれは魅力的だ。「買ってみよう!」と私は即決し、ローズや護衛たちと一緒に紙カップのスープを受け取る。
「いただきまーす……。」
一口飲むと、優しい塩気と野菜の甘みが体に染みわたる。「ああ、美味しい……。温泉で温まった体に、さらに染みる感じ。」と思わず顔がほころぶ。ローズも「ほっとしますねえ。寒い朝には最高……。」と幸せそうだ。周りの人々も同じようにカップを手にしていて、のんびりと世間話を交わしている。何とも緩やかな空気が流れていて、王宮での朝とは全然違う世界だ。
そのまま通りを奥へ進むと、手作りの木工品や織物を売っている店も出てきた。色鮮やかな糸を使ったポーチや、山の木材を削って作ったカトラリーなどが並んでいて、どれも温かみがある。私が木の匙を手に取り「かわいい……」と呟くと、店の青年が「これは山桜の木で作ったんです。湯呑みや器もあるんですよ」と薦めてくる。けれど持ち運びを考えるとあまり買いすぎるのも大変だし、ここは慎重に。
「私、お箸を買おうかしら。旅先でも使えるし、王宮時代にはこんな木の箸は使ったことがなかったわ。」
そう思い立ち、青年に選び方を尋ねると、「手に馴染む長さと形がいいですよ。お嬢さんだと、これとかどうですか?」と桜の木の少し短めの箸を見せてくれる。触ってみると手の中にすっと収まり、指にフィットする感覚が心地よい。「これにします!」と即決し、少し値段を負けてもらって買うことにした。
「あら、イザベル様、お箸を買うなんて何だか新鮮ですね。王宮の食事はフォークとナイフが主流でしたし。」
ローズが微笑むので、私も「そうなのよね。こういう庶民的な道具も面白いわ。旅をしてると自然に必要になるかもしれないし……」と答える。私は宮廷の正式な場ではフォークとナイフ、もしくは豪華なスプーンセットが当たり前だった。けれど今は、山の恵みや地元の野菜を食べるときに、木の箸を使うのも悪くないと思える。
さらに奥へ足を運ぶと、今度は小さなステージのような場所が現れた。どうやら朝市のイベントの一環で、地元の踊りや音楽を披露しているらしい。簡素な太鼓や弦楽器を持った人々が舞台に上がり、楽しげなリズムを奏で始める。観客は拍手や手拍子をしながら見守り、私もいつのまにか輪の中に入って身体を揺らしていた。
「いいわね、この踊り。王宮の仰々しい舞踏会と違って、自由な感じで楽しめるわ。」
つい口走ると、横で踊っているおばさんが「そうそう、誰でも一緒に踊っていいんだよ!」と声をかけてくれる。「見よう見まねでやってみて!」と手を取りに来てくれるので、私は少し戸惑いつつも笑って身を任せる。すると、簡単なステップを踏むだけで不思議と調和が生まれ、周りの人たちと一体感が生まれていく。
「わ、楽しい……!」
ローズも笑いながら手拍子を合わせ、護衛たちも遠巻きに微苦笑しながら見守っている。こういう自由なコミュニケーションは王宮では味わえないものだ。私は思わず笑顔になり、複雑なことを考えずにその場の空気を楽しむ。ここでは誰もが平等に踊り合い、音を共有している。それが何より心地よい。
しばらくして演奏が終わり、拍手が起こる。私は息を切らしながら「ありがとうございました!」とおばさんに声をかけると、「こちらこそ。旅人さんが参加してくれると盛り上がるのよ。また機会があったら踊ってね」と笑顔を返される。周囲の人々も温かい眼差しで私たちを見ている。この町の朝市は本当に人間味が溢れていて、思わず名残惜しい気持ちになる。
最後に温泉まんじゅうらしき菓子を買い食いして、私は完全に満足した。朝市の通りを抜け、坂道を上がって宿へ戻るころには、太陽はすでに高く昇り、気温もやや上がってきている。温泉街特有の湯気と硫黄の匂いが相変わらず漂っていて、今なら朝風呂も良さそうに思えるが、さすがに連続して浸かったらのぼせそうだ。
宿に着くと、女将さんが「朝市、どうでした?」と声をかけてくれるので、私は「とても楽しくて、踊りまで参加しちゃいました!」と報告する。彼女は「そうなんですね、よかったです」と嬉しそうだ。私はこれでこの温泉町をあとにしようと考えていたが、まだ昼前……もう一度お風呂に入って昼食を楽しんでから出発してもいいかもしれない。そんな贅沢ができるのも旅の特権だろう。
護衛たちと話し合うと、皆も「もう一風呂浴びたいです……」という結論になり、もう少しだけ滞在することが決定した。私とローズもさっそく部屋へ行き、浴衣に着替えて湯殿へ向かう。こんなに何度も温泉に浸かるのは生まれて初めてだが、不思議と飽きないどころか快感が増していくように思う。
朝市の余韻を感じながらの温泉……考えるだけで幸せだ。私はその日何度目かの暖簾をくぐり、掛け湯で汗を流してからまたしても露天へ足を運ぶ。昼間の明るい陽光のもとで味わう湯もまた格別だ。湯に身を沈めれば、辺境を超えてきた疲れや外界の情報がいっぺんに溶けていくようで、頭の中が真っ白になる。
「はあ……ずっとここにいてもいいかも。」
ぽつりとつぶやくと、ローズが苦笑しながら「わかりますけど、イザベル様にはまだまだ旅の道のりが……」と制止してくる。確かに一生温泉に浸かって終わるわけにもいかない。けれど今この瞬間、私は深い充足感に包まれていた。レオンと結婚していたら、こんな朝市で踊りも、宿で何度も湯に浸かることも、きっと体験できなかっただろう。
――それからさらに数時間後、さすがにのぼせる寸前で宿を出発する準備を整えた。女将さんに深々と礼を述べ、「また必ず来ます」と告げると、彼女は「いつでもお待ちしてますよ。お気をつけて!」と見送ってくれる。馬車に乗り込み、宿のある通りをゆっくりと下ると、町の人々が手を振ってくれているのが見えた。この温かさも温泉町の魅力なのだろう。
馬車が町外れの坂道を進み始めると、温泉の香りが遠ざかり、山の風が清涼感を増していく。私の心には嬉しさと寂しさが混じるけれど、またいつか来ればいいという余裕もある。今は次の道へ踏み出すとき――そう考えると、期待と興奮がわきあがってくる。旅は続くのだから。
「さて、どこへ行こうかしらね……。地図を見て、考えましょう。」
ローズが笑顔で答え、「そうですね。北へ行くか南へ行くか、この先は自由に選べますね」と返す。護衛たちも「温泉で元気になりました!」とほがらかな表情だ。まるで深い眠りから覚めたばかりのような、スッキリした心持ちで馬車が進む。私の旅はここでまた一つ大きな休息を終え、新たなページをめくるのだ。
過去のしがらみや肩書きがまったく頭をよぎらなくなるほど、今の私は自由だ。レオンに問われることもなく、王家の行事に縛られることもない。何が起きても、自分の足で進むだけ――その事実が私の背中を押してくれる。山の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで、私は小さく微笑み、「行こう」とつぶやいた。濃緑の樹々が風に揺れ、次の道へ誘うようにサラサラと音を立てている。
空はほのかに白み始めたばかりで、路地には朝霧が立ち込めている。ひんやりとした空気を吸い込むと、体がシャキッと目覚めたように感じる。温泉街というだけあって所々から湯気が上がっており、硫黄の香りが鼻をくすぐる。こうして早朝の街並みを歩いていると、温泉旅館が軒を連ねる通りに小さな屋台や露店がポツポツと姿を現し始めた。
「まだ準備中かな……?」
私がきょろきょろしていると、袖を引いてくれたローズが「あ、あちらに幟(のぼり)が立ってますよ」と指さす。幟には「朝市」と書かれ、下には山菜や野菜のイラストが描かれている。そこが中心地なのだろう。私たちはゆっくり坂を下り、通りに出ると、数軒の店がすでに営業を始めていた。
山から採れたばかりのキノコや野草、近隣の牧場で作られた乳製品、川魚の干物などがずらりと並ぶ光景はまさに山の恵みの宝庫。観光客らしき人々もちらほらいて、それぞれ買い物したり写真を撮ったりしている。出店の人々は「いらっしゃい!」と元気な声をかけてくるが、王宮の大市で感じた重々しさとは無縁の、アットホームな活気があった。
「わあ、キノコがこんなにたくさん並んでるわ。見たことない種類ばかり……大丈夫かしら?」
私がキノコの山を見て苦笑いすると、店主の老夫婦が「山で採れるけど毒じゃないよ。ちゃんと煮込めば旨味が出る!」と自信満々に薦めてくれる。さすがに今すぐ料理できるわけじゃないが、乾燥キノコもあるらしく、旅の途中で使うにしては面白いかもしれない。私は少量だけ買ってみることにした。
隣の屋台では朝市限定の温かいスープを販売していた。店のおばあさんが鍋をかき回し、山の根菜や豆がたっぷり入った素朴なスープをよそってくれる。湯気が立ち上り、朝の冷えた空気の中でこれは魅力的だ。「買ってみよう!」と私は即決し、ローズや護衛たちと一緒に紙カップのスープを受け取る。
「いただきまーす……。」
一口飲むと、優しい塩気と野菜の甘みが体に染みわたる。「ああ、美味しい……。温泉で温まった体に、さらに染みる感じ。」と思わず顔がほころぶ。ローズも「ほっとしますねえ。寒い朝には最高……。」と幸せそうだ。周りの人々も同じようにカップを手にしていて、のんびりと世間話を交わしている。何とも緩やかな空気が流れていて、王宮での朝とは全然違う世界だ。
そのまま通りを奥へ進むと、手作りの木工品や織物を売っている店も出てきた。色鮮やかな糸を使ったポーチや、山の木材を削って作ったカトラリーなどが並んでいて、どれも温かみがある。私が木の匙を手に取り「かわいい……」と呟くと、店の青年が「これは山桜の木で作ったんです。湯呑みや器もあるんですよ」と薦めてくる。けれど持ち運びを考えるとあまり買いすぎるのも大変だし、ここは慎重に。
「私、お箸を買おうかしら。旅先でも使えるし、王宮時代にはこんな木の箸は使ったことがなかったわ。」
そう思い立ち、青年に選び方を尋ねると、「手に馴染む長さと形がいいですよ。お嬢さんだと、これとかどうですか?」と桜の木の少し短めの箸を見せてくれる。触ってみると手の中にすっと収まり、指にフィットする感覚が心地よい。「これにします!」と即決し、少し値段を負けてもらって買うことにした。
「あら、イザベル様、お箸を買うなんて何だか新鮮ですね。王宮の食事はフォークとナイフが主流でしたし。」
ローズが微笑むので、私も「そうなのよね。こういう庶民的な道具も面白いわ。旅をしてると自然に必要になるかもしれないし……」と答える。私は宮廷の正式な場ではフォークとナイフ、もしくは豪華なスプーンセットが当たり前だった。けれど今は、山の恵みや地元の野菜を食べるときに、木の箸を使うのも悪くないと思える。
さらに奥へ足を運ぶと、今度は小さなステージのような場所が現れた。どうやら朝市のイベントの一環で、地元の踊りや音楽を披露しているらしい。簡素な太鼓や弦楽器を持った人々が舞台に上がり、楽しげなリズムを奏で始める。観客は拍手や手拍子をしながら見守り、私もいつのまにか輪の中に入って身体を揺らしていた。
「いいわね、この踊り。王宮の仰々しい舞踏会と違って、自由な感じで楽しめるわ。」
つい口走ると、横で踊っているおばさんが「そうそう、誰でも一緒に踊っていいんだよ!」と声をかけてくれる。「見よう見まねでやってみて!」と手を取りに来てくれるので、私は少し戸惑いつつも笑って身を任せる。すると、簡単なステップを踏むだけで不思議と調和が生まれ、周りの人たちと一体感が生まれていく。
「わ、楽しい……!」
ローズも笑いながら手拍子を合わせ、護衛たちも遠巻きに微苦笑しながら見守っている。こういう自由なコミュニケーションは王宮では味わえないものだ。私は思わず笑顔になり、複雑なことを考えずにその場の空気を楽しむ。ここでは誰もが平等に踊り合い、音を共有している。それが何より心地よい。
しばらくして演奏が終わり、拍手が起こる。私は息を切らしながら「ありがとうございました!」とおばさんに声をかけると、「こちらこそ。旅人さんが参加してくれると盛り上がるのよ。また機会があったら踊ってね」と笑顔を返される。周囲の人々も温かい眼差しで私たちを見ている。この町の朝市は本当に人間味が溢れていて、思わず名残惜しい気持ちになる。
最後に温泉まんじゅうらしき菓子を買い食いして、私は完全に満足した。朝市の通りを抜け、坂道を上がって宿へ戻るころには、太陽はすでに高く昇り、気温もやや上がってきている。温泉街特有の湯気と硫黄の匂いが相変わらず漂っていて、今なら朝風呂も良さそうに思えるが、さすがに連続して浸かったらのぼせそうだ。
宿に着くと、女将さんが「朝市、どうでした?」と声をかけてくれるので、私は「とても楽しくて、踊りまで参加しちゃいました!」と報告する。彼女は「そうなんですね、よかったです」と嬉しそうだ。私はこれでこの温泉町をあとにしようと考えていたが、まだ昼前……もう一度お風呂に入って昼食を楽しんでから出発してもいいかもしれない。そんな贅沢ができるのも旅の特権だろう。
護衛たちと話し合うと、皆も「もう一風呂浴びたいです……」という結論になり、もう少しだけ滞在することが決定した。私とローズもさっそく部屋へ行き、浴衣に着替えて湯殿へ向かう。こんなに何度も温泉に浸かるのは生まれて初めてだが、不思議と飽きないどころか快感が増していくように思う。
朝市の余韻を感じながらの温泉……考えるだけで幸せだ。私はその日何度目かの暖簾をくぐり、掛け湯で汗を流してからまたしても露天へ足を運ぶ。昼間の明るい陽光のもとで味わう湯もまた格別だ。湯に身を沈めれば、辺境を超えてきた疲れや外界の情報がいっぺんに溶けていくようで、頭の中が真っ白になる。
「はあ……ずっとここにいてもいいかも。」
ぽつりとつぶやくと、ローズが苦笑しながら「わかりますけど、イザベル様にはまだまだ旅の道のりが……」と制止してくる。確かに一生温泉に浸かって終わるわけにもいかない。けれど今この瞬間、私は深い充足感に包まれていた。レオンと結婚していたら、こんな朝市で踊りも、宿で何度も湯に浸かることも、きっと体験できなかっただろう。
――それからさらに数時間後、さすがにのぼせる寸前で宿を出発する準備を整えた。女将さんに深々と礼を述べ、「また必ず来ます」と告げると、彼女は「いつでもお待ちしてますよ。お気をつけて!」と見送ってくれる。馬車に乗り込み、宿のある通りをゆっくりと下ると、町の人々が手を振ってくれているのが見えた。この温かさも温泉町の魅力なのだろう。
馬車が町外れの坂道を進み始めると、温泉の香りが遠ざかり、山の風が清涼感を増していく。私の心には嬉しさと寂しさが混じるけれど、またいつか来ればいいという余裕もある。今は次の道へ踏み出すとき――そう考えると、期待と興奮がわきあがってくる。旅は続くのだから。
「さて、どこへ行こうかしらね……。地図を見て、考えましょう。」
ローズが笑顔で答え、「そうですね。北へ行くか南へ行くか、この先は自由に選べますね」と返す。護衛たちも「温泉で元気になりました!」とほがらかな表情だ。まるで深い眠りから覚めたばかりのような、スッキリした心持ちで馬車が進む。私の旅はここでまた一つ大きな休息を終え、新たなページをめくるのだ。
過去のしがらみや肩書きがまったく頭をよぎらなくなるほど、今の私は自由だ。レオンに問われることもなく、王家の行事に縛られることもない。何が起きても、自分の足で進むだけ――その事実が私の背中を押してくれる。山の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで、私は小さく微笑み、「行こう」とつぶやいた。濃緑の樹々が風に揺れ、次の道へ誘うようにサラサラと音を立てている。
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