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フィオライトの首飾り

プロローグ

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1-1プロローグ 

 石畳の路地裏に今日も平和に職人たちの生活音が鳴り響く。


 機織り、食器、鍛冶屋の工房、生活用具の金物屋。大量生産品は大通りの大店おおだなに収め、オーダーや小ロット品などを自分の店で直販する。そんな店も多い。


カラン


どこかの店の扉が開けられて、扉にかけられた鐘が鳴った。


 路地の端、用水路近くのかどに、入れても5人程度のちいさな店を構えた彫金工房。


 黒いマントにフードをかぶってはいるが、質の良い生地をふんだんに使ったものであることはすぐにわかる。


「いま仕上げ中でして。掛けてお待ちください」


 工房の奥から低音の男の声。


 フードの客は黙して、質素ながらも細かな模様の掘られた木の椅子に腰を掛けた。

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