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B1(地下1階)会議室
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翌日、朝礼の時間なのに渋谷店営業部はザワザワしていた。
幹部が全員集まらない。
もう出社してるって、姿を見かけたって人はいるのに……
「どうすんだろ。朝礼やんないってことかな?」
「珍しいね。これまでそんなこと1回もなかったよね」
「もう戻っていいかな?」
営業部の横にある会議室、朝礼のために集まっているメンバーはソワソワしてる。
早く戻って仕事したいって顔。
「お待たせして申し訳ありません」
入って来たのは総務の平さん。
「今日の朝礼は行いませんとのことです。皆さん、どうぞこのままお仕事に戻られてください」
なんてことない普通の報告なのに、彼女の目に涙が溜まってて、声も震えてる。
「平さん。何かあったんですか?」
聞いたのは販売部の伊藤君。
平さんのプライベートが何もないんだったら、その涙は朝礼がなくなった原因と関係あるって、みんなそう考える。
平さんはしばらく迷って
「あの……いずれ皆さんのお耳に入ると思うので、でも私から言ってもいいのか……」
また泣きそうになるから、余計に気になる。
「なんかあったの?」
みんなが平さんに近づいてきて、
「大丈夫、平さん、教えて」
「あの……どうか、落ち着いて聞いてくださいね」
「うん。大丈夫だから!」
「あの……は、蓮見チーフが……じ、さつ、したそうです」
え?
ジサツ?
平さんが言った言葉が理解できなかった。
脳内で漢字に変換できないって言うか、したくない。
「……」誰も何も言えなくて、平さんは顔を覆ってしまった。
「なんで?」一人が声をもらすと、「うそ……」「そんな……」「いつ?」「噓でしょ」「あり得ない」
あちこちで聞こえる声。
「蓮見さんが?」
「本当なの?」
「だって昨日も普通だったのに」
「自殺なんて、嘘でしょ!」
「蓮見チーフは?未遂ですよね?」
平さんは顔を覆ったまま首を横に振った。
「じゃ、蓮見さんは……」
立っていられなかった。
理解するのを拒否してるように頭の中が真っ白。
誰かが泣いてたり、叫んでたり、どこか遠くの景色に感じる。
だって昨日、普通に話してたのに……
「大丈夫か?」
あちこちに連絡したり呼ばれて行ったりしてる中、声をかけてくれたのは同じ営業部の原さん。
「今日の営業はどうなるんでしょう」
「やるしかないだろうな。とりあえず開店の準備はしよう」
「そう言えば木村課長は?」
「課長と連絡が取れないんだ。総務の話では蓮見さんに付き添ってるとか……」
そうか。木村課長は蓮見さんを可愛がってたから、相当ショックだろう。
五十嵐だって……
今頃は蓮見チーフに付き添ってるのかもしれない。
ショックじゃない訳ないだろう。
あんな素敵な彼女が、しかも自らって
五十嵐は大丈夫なんだろうか。
「そろそろ店舗に行くが、百瀬は?やめとくか?」
「いいえ。こんな時こそ私が頑張らないと」
「無理するなよ」
原さんだっていつもの元気なんてないくせにそう言ってくる。
当然、渋谷店の方でも全てが機能してなくて、みんな不安な顔。
総合受付の人たちは誰も正面玄関にいなくて、受付が空いたまま。
ガラス戸の向こうには連休中日でお客様が10時になるのを待っている。
足が竦む。
みんなが大変な時こそ頑張らないとって思うのに、正面玄関に近づけない。
「そんなとこに突っ立ってないでよ!」
厳しい声に振り向くと、ムーンジュエリーのナナさん。
「ごめんなさい」
「みんなが動揺するのは分かるけど、今はお客様第一で考えて」
「……」
「あなたがそんな顔してたら、私たちだって不安になるでしょ!」
周りを見れば、みんな不安そうな顔でこっちを見てる。
「みなさん……」
「笑顔が出ないなら、受付の子たちのフォローに回って。ここは私たちに任せて」
テナントの皆さんがゆっくり近づいてくる。
「そうだ。俺たちに任せて」
north館のメンズ用品Astraの榎本店長も来てた。
「ありがとうございます」
正面玄関にならんでいるのは、テナントのスタッフの人たち。
south館だけじゃなくnorth館からも来てくれてる。
受付には渋谷店営業部の原さんが入った。
私とすれ違いに本社の人たちも応援に来て、テナントの人たちに事情を説明しだした。
「1回 忘れましょ!営業終わったらその話もう一度聞かせて!」
1階を去る直前、ナナさんの声がした。
幹部が全員集まらない。
もう出社してるって、姿を見かけたって人はいるのに……
「どうすんだろ。朝礼やんないってことかな?」
「珍しいね。これまでそんなこと1回もなかったよね」
「もう戻っていいかな?」
営業部の横にある会議室、朝礼のために集まっているメンバーはソワソワしてる。
早く戻って仕事したいって顔。
「お待たせして申し訳ありません」
入って来たのは総務の平さん。
「今日の朝礼は行いませんとのことです。皆さん、どうぞこのままお仕事に戻られてください」
なんてことない普通の報告なのに、彼女の目に涙が溜まってて、声も震えてる。
「平さん。何かあったんですか?」
聞いたのは販売部の伊藤君。
平さんのプライベートが何もないんだったら、その涙は朝礼がなくなった原因と関係あるって、みんなそう考える。
平さんはしばらく迷って
「あの……いずれ皆さんのお耳に入ると思うので、でも私から言ってもいいのか……」
また泣きそうになるから、余計に気になる。
「なんかあったの?」
みんなが平さんに近づいてきて、
「大丈夫、平さん、教えて」
「あの……どうか、落ち着いて聞いてくださいね」
「うん。大丈夫だから!」
「あの……は、蓮見チーフが……じ、さつ、したそうです」
え?
ジサツ?
平さんが言った言葉が理解できなかった。
脳内で漢字に変換できないって言うか、したくない。
「……」誰も何も言えなくて、平さんは顔を覆ってしまった。
「なんで?」一人が声をもらすと、「うそ……」「そんな……」「いつ?」「噓でしょ」「あり得ない」
あちこちで聞こえる声。
「蓮見さんが?」
「本当なの?」
「だって昨日も普通だったのに」
「自殺なんて、嘘でしょ!」
「蓮見チーフは?未遂ですよね?」
平さんは顔を覆ったまま首を横に振った。
「じゃ、蓮見さんは……」
立っていられなかった。
理解するのを拒否してるように頭の中が真っ白。
誰かが泣いてたり、叫んでたり、どこか遠くの景色に感じる。
だって昨日、普通に話してたのに……
「大丈夫か?」
あちこちに連絡したり呼ばれて行ったりしてる中、声をかけてくれたのは同じ営業部の原さん。
「今日の営業はどうなるんでしょう」
「やるしかないだろうな。とりあえず開店の準備はしよう」
「そう言えば木村課長は?」
「課長と連絡が取れないんだ。総務の話では蓮見さんに付き添ってるとか……」
そうか。木村課長は蓮見さんを可愛がってたから、相当ショックだろう。
五十嵐だって……
今頃は蓮見チーフに付き添ってるのかもしれない。
ショックじゃない訳ないだろう。
あんな素敵な彼女が、しかも自らって
五十嵐は大丈夫なんだろうか。
「そろそろ店舗に行くが、百瀬は?やめとくか?」
「いいえ。こんな時こそ私が頑張らないと」
「無理するなよ」
原さんだっていつもの元気なんてないくせにそう言ってくる。
当然、渋谷店の方でも全てが機能してなくて、みんな不安な顔。
総合受付の人たちは誰も正面玄関にいなくて、受付が空いたまま。
ガラス戸の向こうには連休中日でお客様が10時になるのを待っている。
足が竦む。
みんなが大変な時こそ頑張らないとって思うのに、正面玄関に近づけない。
「そんなとこに突っ立ってないでよ!」
厳しい声に振り向くと、ムーンジュエリーのナナさん。
「ごめんなさい」
「みんなが動揺するのは分かるけど、今はお客様第一で考えて」
「……」
「あなたがそんな顔してたら、私たちだって不安になるでしょ!」
周りを見れば、みんな不安そうな顔でこっちを見てる。
「みなさん……」
「笑顔が出ないなら、受付の子たちのフォローに回って。ここは私たちに任せて」
テナントの皆さんがゆっくり近づいてくる。
「そうだ。俺たちに任せて」
north館のメンズ用品Astraの榎本店長も来てた。
「ありがとうございます」
正面玄関にならんでいるのは、テナントのスタッフの人たち。
south館だけじゃなくnorth館からも来てくれてる。
受付には渋谷店営業部の原さんが入った。
私とすれ違いに本社の人たちも応援に来て、テナントの人たちに事情を説明しだした。
「1回 忘れましょ!営業終わったらその話もう一度聞かせて!」
1階を去る直前、ナナさんの声がした。
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