女性恐怖症の俺がエロゲ攻略なんて不可能だろ!

人間

文字の大きさ
7 / 13
一章~幼少期

六話~胸につっかえるもの

しおりを挟む
「ごめんなさいっ! 寝過ごした……」

「なに、いつも作ってもらってたからな。アイリが疲れている時くらい俺に任せろ」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」

そう言って少し俺をジト目で見る。
な、なんだよ……。

「寝過ごしたボクが悪いのは間違いないんだけど……何でご飯が出来たときに起こしてくれなかったの?」

「ん……。まぁ、いいじゃないか。しっかり寝れたろ」

「今の時間はむしろちょっと遅いくらいだよ! 兄さんと一緒に食べたかったのに……」

「ハッハッハッ」

マジ勘弁である。正直いつも一緒にいるだけでこちらのメンタルがゴリゴリ削られていっているのに、なぜ自分からその状況を作り出さんといかんのだ。

アイリが食卓の席に座り、俺は立ち上がり皿洗いをする。
カチャカチャカチャと皿や食器の触れ合う音だけが空間を支配する。そんな時、アイリが口を開く。

「そういえば……あまり気にしてなかったけど、ルナさん今日いないんだね」

「今までがおかしかったんだよ」

「そうだけど、昨日も村に行ってからルナさん来ることなかったでしょ? いつもなら朝昼夜に最低一回ずつは来てたのに」

……来すぎだろ。だが少し気になることでもある。この状況は俺の望み通りだが、昨日の今日でルナがこの家に来ないということはほぼありえない。
なぜなら直接来るなと言っても来たことあるからな。(白目)
鍛錬の途中で来なかったとはいえ、通常通りなら今頃この家でくつろいでいるだろう。

皿洗いが終わり、手を拭きながらアイリを見ると何やらソワソワしている。まるで当たり前の光景が急に無くなり、怯えているように見えた。

はぁ~。

「少し、外に出てくる」

「……兄さん?」

「多分遅くなるが気にせず家にいてくれ。そのうちルナも来るだろうし」

「兄さんっ!」

アイリは花が咲くように次第に唇をほころばす。
くそっ、俺は何を言っているんだ。折角のこの状況、自分で壊すことなんてアホの極みだ。
まぁそれも今日だけだ、そうっ!今日だけっ。

俺は自分の部屋へと戻り魔剣を手に取る。
この家から村まで歩いて二十分ほど。焦ることはない、ゆっくりと行こうか。
ルナの無事でも確認したら家にでも呼び、アイリを安心させてやろう。
その間、俺はダンジョンにでも行けばいい。

そう思い、俺は鼻歌を歌いながら村へと向かっていった。






◇◆◇◆






村へもう入る、というところで何やら怒号のような女の声と、耳に響くような高い音が、村から聞こえた。  何だ?と思い気配を隠しながら進んで行く。それくらい物騒な気配が神経をざわざわと刺激した。音は数秒続いて止んだ。それからも断続的にこもった音がしたが、やがてそれも聞こえなくなった。

「……さて、何をやってんのやら」

人が集まっているのは村の中心の広場。家の陰からこっそりと除く。
人が多くて分かりづらいがどうやら騒動の中心にいるのはルナと……その母親らしき人物だ。今まさにビンタされたところだろう、ルナの頬が真っ赤に染まっていた。両方の頬が赤いことから先ほどの音はビンタの音だったのだろう。

……何やらドロッとした感情が湧いてきた。その感情が何なのかと理解する前に騒動は進んで行く。
ルナの母親の声が少し離れた俺にも正確に聞こえてきた。

「ルナッ、何回も言っているでしょう! いい加減あの化け物のところに行くのはやめなさいっ!」

「ルウシェ君は化け物なんかじゃないもんっ! お母さんこそ分かってよ!」

「あなたと同じような年の子供がゴブリンキング率いる群れを殺したのよ!? あれが化け物じゃなければなんて言うのよ!」

「村を救ってくれた友達だもん! なんでみんなは化け物だとか鬼とか言うの!? ルウシェ君が居なかったら私たち死んでたかもしれないんだよっ!?」

「このっ……! 言うことを聞きなさいっ」

また母親が手を振り上げ、ルナが目をぎゅっとつむる。

……あぁ、この光景はだめだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...