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一章~幼少期
六話~胸につっかえるもの
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「ごめんなさいっ! 寝過ごした……」
「なに、いつも作ってもらってたからな。アイリが疲れている時くらい俺に任せろ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」
そう言って少し俺をジト目で見る。
な、なんだよ……。
「寝過ごしたボクが悪いのは間違いないんだけど……何でご飯が出来たときに起こしてくれなかったの?」
「ん……。まぁ、いいじゃないか。しっかり寝れたろ」
「今の時間はむしろちょっと遅いくらいだよ! 兄さんと一緒に食べたかったのに……」
「ハッハッハッ」
マジ勘弁である。正直いつも一緒にいるだけでこちらのメンタルがゴリゴリ削られていっているのに、なぜ自分からその状況を作り出さんといかんのだ。
アイリが食卓の席に座り、俺は立ち上がり皿洗いをする。
カチャカチャカチャと皿や食器の触れ合う音だけが空間を支配する。そんな時、アイリが口を開く。
「そういえば……あまり気にしてなかったけど、ルナさん今日いないんだね」
「今までがおかしかったんだよ」
「そうだけど、昨日も村に行ってからルナさん来ることなかったでしょ? いつもなら朝昼夜に最低一回ずつは来てたのに」
……来すぎだろ。だが少し気になることでもある。この状況は俺の望み通りだが、昨日の今日でルナがこの家に来ないということはほぼありえない。
なぜなら直接来るなと言っても来たことあるからな。(白目)
鍛錬の途中で来なかったとはいえ、通常通りなら今頃この家でくつろいでいるだろう。
皿洗いが終わり、手を拭きながらアイリを見ると何やらソワソワしている。まるで当たり前の光景が急に無くなり、怯えているように見えた。
はぁ~。
「少し、外に出てくる」
「……兄さん?」
「多分遅くなるが気にせず家にいてくれ。そのうちルナも来るだろうし」
「兄さんっ!」
アイリは花が咲くように次第に唇をほころばす。
くそっ、俺は何を言っているんだ。折角のこの状況、自分で壊すことなんてアホの極みだ。
まぁそれも今日だけだ、そうっ!今日だけっ。
俺は自分の部屋へと戻り魔剣を手に取る。
この家から村まで歩いて二十分ほど。焦ることはない、ゆっくりと行こうか。
ルナの無事でも確認したら家にでも呼び、アイリを安心させてやろう。
その間、俺はダンジョンにでも行けばいい。
そう思い、俺は鼻歌を歌いながら村へと向かっていった。
◇◆◇◆
村へもう入る、というところで何やら怒号のような女の声と、耳に響くような高い音が、村から聞こえた。 何だ?と思い気配を隠しながら進んで行く。それくらい物騒な気配が神経をざわざわと刺激した。音は数秒続いて止んだ。それからも断続的にこもった音がしたが、やがてそれも聞こえなくなった。
「……さて、何をやってんのやら」
人が集まっているのは村の中心の広場。家の陰からこっそりと除く。
人が多くて分かりづらいがどうやら騒動の中心にいるのはルナと……その母親らしき人物だ。今まさにビンタされたところだろう、ルナの頬が真っ赤に染まっていた。両方の頬が赤いことから先ほどの音はビンタの音だったのだろう。
……何やらドロッとした感情が湧いてきた。その感情が何なのかと理解する前に騒動は進んで行く。
ルナの母親の声が少し離れた俺にも正確に聞こえてきた。
「ルナッ、何回も言っているでしょう! いい加減あの化け物のところに行くのはやめなさいっ!」
「ルウシェ君は化け物なんかじゃないもんっ! お母さんこそ分かってよ!」
「あなたと同じような年の子供がゴブリンキング率いる群れを殺したのよ!? あれが化け物じゃなければなんて言うのよ!」
「村を救ってくれた友達だもん! なんでみんなは化け物だとか鬼とか言うの!? ルウシェ君が居なかったら私たち死んでたかもしれないんだよっ!?」
「このっ……! 言うことを聞きなさいっ」
また母親が手を振り上げ、ルナが目をぎゅっとつむる。
……あぁ、この光景はだめだ。
「なに、いつも作ってもらってたからな。アイリが疲れている時くらい俺に任せろ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」
そう言って少し俺をジト目で見る。
な、なんだよ……。
「寝過ごしたボクが悪いのは間違いないんだけど……何でご飯が出来たときに起こしてくれなかったの?」
「ん……。まぁ、いいじゃないか。しっかり寝れたろ」
「今の時間はむしろちょっと遅いくらいだよ! 兄さんと一緒に食べたかったのに……」
「ハッハッハッ」
マジ勘弁である。正直いつも一緒にいるだけでこちらのメンタルがゴリゴリ削られていっているのに、なぜ自分からその状況を作り出さんといかんのだ。
アイリが食卓の席に座り、俺は立ち上がり皿洗いをする。
カチャカチャカチャと皿や食器の触れ合う音だけが空間を支配する。そんな時、アイリが口を開く。
「そういえば……あまり気にしてなかったけど、ルナさん今日いないんだね」
「今までがおかしかったんだよ」
「そうだけど、昨日も村に行ってからルナさん来ることなかったでしょ? いつもなら朝昼夜に最低一回ずつは来てたのに」
……来すぎだろ。だが少し気になることでもある。この状況は俺の望み通りだが、昨日の今日でルナがこの家に来ないということはほぼありえない。
なぜなら直接来るなと言っても来たことあるからな。(白目)
鍛錬の途中で来なかったとはいえ、通常通りなら今頃この家でくつろいでいるだろう。
皿洗いが終わり、手を拭きながらアイリを見ると何やらソワソワしている。まるで当たり前の光景が急に無くなり、怯えているように見えた。
はぁ~。
「少し、外に出てくる」
「……兄さん?」
「多分遅くなるが気にせず家にいてくれ。そのうちルナも来るだろうし」
「兄さんっ!」
アイリは花が咲くように次第に唇をほころばす。
くそっ、俺は何を言っているんだ。折角のこの状況、自分で壊すことなんてアホの極みだ。
まぁそれも今日だけだ、そうっ!今日だけっ。
俺は自分の部屋へと戻り魔剣を手に取る。
この家から村まで歩いて二十分ほど。焦ることはない、ゆっくりと行こうか。
ルナの無事でも確認したら家にでも呼び、アイリを安心させてやろう。
その間、俺はダンジョンにでも行けばいい。
そう思い、俺は鼻歌を歌いながら村へと向かっていった。
◇◆◇◆
村へもう入る、というところで何やら怒号のような女の声と、耳に響くような高い音が、村から聞こえた。 何だ?と思い気配を隠しながら進んで行く。それくらい物騒な気配が神経をざわざわと刺激した。音は数秒続いて止んだ。それからも断続的にこもった音がしたが、やがてそれも聞こえなくなった。
「……さて、何をやってんのやら」
人が集まっているのは村の中心の広場。家の陰からこっそりと除く。
人が多くて分かりづらいがどうやら騒動の中心にいるのはルナと……その母親らしき人物だ。今まさにビンタされたところだろう、ルナの頬が真っ赤に染まっていた。両方の頬が赤いことから先ほどの音はビンタの音だったのだろう。
……何やらドロッとした感情が湧いてきた。その感情が何なのかと理解する前に騒動は進んで行く。
ルナの母親の声が少し離れた俺にも正確に聞こえてきた。
「ルナッ、何回も言っているでしょう! いい加減あの化け物のところに行くのはやめなさいっ!」
「ルウシェ君は化け物なんかじゃないもんっ! お母さんこそ分かってよ!」
「あなたと同じような年の子供がゴブリンキング率いる群れを殺したのよ!? あれが化け物じゃなければなんて言うのよ!」
「村を救ってくれた友達だもん! なんでみんなは化け物だとか鬼とか言うの!? ルウシェ君が居なかったら私たち死んでたかもしれないんだよっ!?」
「このっ……! 言うことを聞きなさいっ」
また母親が手を振り上げ、ルナが目をぎゅっとつむる。
……あぁ、この光景はだめだ。
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