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:レキシエル、再起動
しおりを挟むレキシエルの光に包まれた空間――そこは、世界のコードに直接アクセスできる“改変セッションルーム”。
マリーとアルフォンスは、光のスクリーンの前に並び、操作を進めていた。
「まず、ミキの召喚――これは消去する?」
アルフォンスが問いかける。
「いいえ、残して」
マリーの声は即断だった。
「彼女がここに来たのは、“誰かの選択”の結果。消すべきじゃない。
ただし、その後の展開は、きっちり修正させてもらうけど」
「了解、召喚記録は保持。シナリオだけ、書き換える」
⸻
◆項目:マリーの婚約破棄
「じゃあ、君の婚約破棄は――?」
「そのままで」
「えっ?」
「だって、あれがなきゃ、私は今ここにいない。
あの裏切りは、私を“観客”から“プレイヤー”に変えてくれたの」
アルフォンスは思わず笑ってしまう。
「君らしいや。じゃあ、“原因不明の婚約破棄”のまま保持っと」
⸻
◆項目:王弟リヴィウス
「さて、問題の王弟……いたいた。“転生者フラグ”確認。削除する?」
「削除して」
マリーの表情が険しくなる。
「本来、彼はとっくに“退場”してる存在。
それなのに、舞台裏から作者権限を乗っ取って、しつこくシナリオに介入してきた」
「了解。履歴を死亡状態に更新。ログも完全削除。
――ああ、これでやっと劇が終わる」
⸻
◆項目:王太子ライゼル
「次、王太子。これまた微妙な案件だな」
マリーは少し考えて、言った。
「“婚約者募集中”に戻して。
ただし、“演出による過剰補正”は全部オフにしてね」
「つまり、素の状態で生きろってことだな。
中身が問われる世界へようこそ」
⸻
◆項目:聖女
「じゃあ、“聖女の役割”はどうする?」
「廃止。もう“聖女が世界を救う”なんて構造、時代遅れなのよ」
「なるほど。“イベント発生には聖女が必要”って条件を解除する。
代わりに“祈り”と“意志”の総量で、現象が起きるように書き換え」
マリーは静かに頷いた。
「奇跡は誰かの専売特許じゃない。
この世界に生きる人全員が、祈って、選んで、動かしていくべきだから」
⸻
◆外見編集
「……おっと、こんな項目もある。“外見設定”」
「なにそれ?」
「“髪型調整”、“身長微調整”、“胸囲+5”――」
にやにやと笑うアルフォンスに、マリーは一瞬固まった。
「……触ったら、消すわよ」
「ジョーダンだってば!でも、君の立体モデル、ちょっと見て――痛っ!ごめんって!」
書板(物理)でぶん殴られる彼だった。
⸻
◆最終入力:世界スクリプトの再定義
アルフォンスが空中の端末に、コードを入力していく。
if (faith == illusion) {
reset(blessingEngine);
}
define true_will {
base: autonomous_intent;
protection: unrestricted;
}
main_character = "The World Itself";
マリーはその最後の一行を静かに見つめて、呟いた。
「もう、神なんていらない。
この世界は、“生きてる人たち”がつくっていくのよ」
⸻
【舞踏会:改変後世界の最初のイベント】
場所は、光でできたホール。
「王太子・ライゼル殿下、婚約者選定の社交舞踏会」――それが、イベントの名目だった。
招かれたのは、各地から集められた20名の貴族令嬢たち。
だがこの場には、もう“聖女演出”も、“信仰ブースト”も存在しない。
今夜は、素の力と人間性だけが試される。
⸻
◆マリーとアルフォンスの登場
「緊張してる?」
「……してない。ただの“観察”よ。
私たちはもう、“登場人物”じゃないんだから」
そう言いながら、マリーはドレスの胸元を――少しだけ、強調していた。無意識に。
⸻
◆王太子ライゼルの反応
そのマリーの姿に、王太子は足を止める。
「……君が、弟の彼女じゃなかったら……選んでいたのに。惜しいな」
マリーは、ただ静かに微笑んだ。
「でも、私は“選ばれる”気なんて、はじめからなかった」
⸻
◆アルフォンスの苦笑
「……ほんと、君って変わらないよな」
「うるさいわね」
⸻
◆ライゼルの独白
彼はまだ、ミキの幻想から目覚めきれていない。
でももう、あの作られた“奇跡の聖女”を信じられなくなっていた。
「君の目は……昔と同じだ」
「変わらないようにしたの。
私の意思は、誰にも書き換えさせなかった」
「……君は、王妃にふさわしかったよ」
「でも私は、“ふさわしいから”選ばれるのはゴメン」
⸻
◆ラストシーン
マリーとアルフォンスは、光のホールを後にする。
肩を並べながら、物語の外へと歩いていく。
「もういいわ。観察は十分。
彼がどう生きるかは――彼の問題」
「……ライゼルも、見えてたよ。
君を失ってから、世界の形が変わったこと」
マリーは静かに言う。
「物語に戻るつもりはない。
だって、私はもう、“世界そのもの”を書き換えたから」
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