『原作者が消えた世界で婚約破棄されましたが、転生者は負ける気しません』

夢窓(ゆめまど)

文字の大きさ
23 / 33

『いっぽん300祈り!異世界やきとり開店します』

しおりを挟む

王宮をあとにしたマリーとアルフォンスは、
人目を避けて地方の商業都市へと移り住んだ。

名前も肩書きも伏せて、しばらくは「ただの市民」としての生活を試してみることにしたのだ。



◆マリーの台詞

「王宮を出たらね、ちょっとした商売でもしようと思ってたの。
……転生者ってさ、おいしいもの食べて、適当に生きたら勝ちでしょ?」

呆れ半分、感心半分の目で見つめるアルフォンスは、彼女の買い物袋を抱えている。

「……その台詞、王宮で言ってたら即・謹慎処分だっただろうな」

「いまは“市民マリー”ですので」



◆市民生活は、買い出しから

商業都市の市場は活気に満ちていた。
マリーは前世で鍛えた主婦スキルを発揮して、野菜と肉を見事な値引き交渉で仕入れる。

さらに、隣家の“ちょっとだけ転生者”な奥さんから、異世界式炊事場のコツを伝授され、すぐさま順応。

料理スキルLv.99の実力は伊達じゃない。
即興でつくった焼肉のタレは、
「醤油+みりん+にんにく+赤ワイン」の黄金バランス。



◆夜:焼肉パーティー開始!

マリーの「ごはんできました~」の声を皮切りに、
にぎやかな宴が始まった。

「ほら、焼けたわよ! こっちがゴマだれ、そっちは塩レモン!」

集まったメンバーは、ちょっと濃いめの面々だった。
• カイ(神殿所属/アルフォンスの旧友。物腰やわらか)
• ヨナ(味覚ゼロ貴族/“食えりゃいい”教の教祖)
• ご近所のおばちゃん(元・管理栄養士の転生者。おこわが異世界バズり中)
• 元暗殺者の少女(見た目は10歳。鍋の火加減と肉の裏返しに命をかける)
• しゃべるもふもふ(どこから来たのか不明。匂いで誘われてきた)



◆ヨナの迷言(安定)

「この肉……なんか、焼いた味がするな」

マリーが即座に返す。

「黙って食べてなさい、」



◆ふと、カイがぽつりと

「……この世界さ、なんか変わってきてると思わない?
“祈り”の通り方っていうか……感じが違うんだよ」

一瞬、空気が静まった。

マリーとアルフォンスが、無言で目を合わせる。

(“レキシエル”で変更した祈りフィルター……
あれが、ようやく本格的に作用し始めた?)

「……祈りの“質”が上がってるのかもな。
見返りを求めるんじゃなく、ただ“願うだけ”の祈りに」

「うん。ああいう静かな願いのほうが、世界に届きやすいのかもしれないね」



マリーが焼き網の端で肉をひっくり返しながら、ふっと笑った。

「ま、明日のことは明日考えましょ。
今日は焼肉。生きてるなら、ちゃんと食べなきゃ」

アルフォンスがそれに笑みで応じる。

「……うん。
“祈り”より先に、“食う”が来るのが君らしい」


王宮を離れ、市井での暮らしを始めた転生者・マリーとアルフォンス。
ふたりが移り住んだ商業都市の市場の一角に、ぽっかり空いた屋台スペースがあった。

そのとき、ふと浮かんだひとつの考え。

――焼肉ができたなら、焼き鳥だってできるはず。

最初はただの思いつきだった。
けれどその一週間後には、「夜だけ営業・やきとり屋 LUNATIC CHICKEN(ルナティック・チキン)」が本当に開店していた。

世界は書き換えた。
けれど、焼き鳥の煙と人の本音までは止められない。



店のコンセプト
•屋号:LUNATIC CHICKEN(ルナティック・チキン)
•営業時間:日没後から「祈りの鐘」が鳴るまで
•形式:カウンター8テーブル3席の小さな居酒屋スタイル

主なメニュー
•月見つくね:卵黄の代わりに“聖属性の液体光”を使用。濃厚でまろやか。
•無敵のねぎま:魔除け効果付き。ねぎも鶏も産地は転生者ネットワーク経由。
•祈りの皮パリパリ:火属性強化バフあり。クリスピーな食感。
•もふもふ串:食材ではない。しゃべる小動物が好んで注文する定番品。

ドリンク
• ホーリーレモンサワー
• 異世界うめしゅ
• 転生者特製・ノンアル薬草ソーダ



本音が漏れまくる客たち
• 転生者A(元社畜)
「いやあ……戻ったところで仕事ないし。逆に気が楽で」
• 転生者B(元ギャル)
「マジで異世界の男のが優しいって。尊さが段違い」
• 元・暗殺者の少女
「……ねぎまの“ねぎ”だけ食べたい」(※謎の偏食)
• カイ(神殿職員)
「……これが“俗世の味”ってやつか。意外と悪くないな」



マリーの台詞(店じまいの夜)

「転生者の人生って、焼き鳥みたいなものなのよ。
串に刺されて、焼かれて、焦げるところもあれば、ちゃんと美味しいところもある」

アルフォンスが静かに暖簾を下ろす。

「……それでも、誰かが“食べる価値がある”と思ってくれるなら、悪くない」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

婚約破棄された悪役令嬢ですが、英雄にも聖女にもなりません

鷹 綾
恋愛
王太子からの婚約破棄。 悪役令嬢として断罪され、処刑エンド確定―― その瞬間、エレナは前世の記憶を思い出した。 ここは乙女ゲームの世界。 そして自分は、必ず破滅する“悪役令嬢”。 だが彼女は、復讐も、英雄になることも選ばなかった。 正義を掲げれば、いずれ誰かに利用され、切り捨てられると知っていたから。 エレナが選んだのは、 「正しさ」を振りかざさず、 「責任」を一人で背負わず、 明日も続く日常を作ること。 聖女にも、英雄にもならない。 それでも確かに、世界は静かに変わっていく。 派手なざまぁはない。 けれど、最後に残るのは―― 誰も処刑されず、誰か一人が犠牲にならない結末。 これは、 名前の残らない勝利を選んだ悪役令嬢の物語。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

婚約破棄された公爵令嬢ですが、王太子を破滅させたあと静かに幸せになります

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エレナは、 誕生日の舞踏会で突然、婚約破棄を宣言される。 「地味で役に立たない」と嘲笑され、 平民の少女を新たな婚約者に選ぶ王太子。 家族にも見放され、エレナは王都を追われることに――。 しかし彼女は、ただの“癒しの令嬢”ではなかった。 静かに力を蓄え、事実と証拠だけで王太子の虚飾を暴き、 自らの手で破滅へと導いていく。 復讐の果てに選んだのは、 誰かに与えられる地位でも、名誉でもない。 自分で選び取る、穏やかな幸せ。 これは、 婚約破棄された公爵令嬢が 王太子を終わらせたあと、 本当の人生を歩き出す物語。 -

【完結】王位に拘る元婚約者様へ

凛 伊緒
恋愛
公爵令嬢ラリエット・ゼンキースア、18歳。 青みがかった銀の髪に、金の瞳を持っている。ラリエットは誰が見ても美しいと思える美貌の持ち主だが、『闇魔法使い』が故に酷い扱いを受けていた。 虐げられ、食事もろくに与えられない。 それらの行為の理由は、闇魔法に対する恐怖からか、或いは彼女に対する嫉妬か……。 ラリエットには、5歳の頃に婚約した婚約者がいた。 名はジルファー・アンドレイズ。このアンドレイズ王国の王太子だった。 しかし8歳の時、ラリエットの魔法適正が《闇》だということが発覚する。これが、全ての始まりだった── 婚約破棄された公爵令嬢ラリエットが名前を変え、とある事情から再び王城に戻り、王太子にざまぁするまでの物語── ※ご感想・ご指摘 等につきましては、近況ボードをご確認くださいませ。

攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました

犬野きらり
恋愛
攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました… というタイトルそのままの話です。 妹視点では、乙女ゲームも異世界転生も関係ありません。 特に私(主人公)は出しゃ張たりしません。 私をアピールするわけでもありません。 ジャンルは恋愛ですが、主人公は恋愛していません、ご注意下さい

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...