「婚約破棄されたけど、筋肉があれば世界は変えられるらしい」  筋肉は裏切らない。だから私は貴族令嬢をやめて鍛えます

夢窓(ゆめまど)

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第15話「王子のプロポーズは、お茶会のあとで」──「えっ?いつ私が言い寄られてたんですか?」無自覚筋肉ヒロインの返答は…!

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──愛の告白よりも大切なものがある。まずは体幹。それから愛。それが、私たちの筋肉主義。

本日、お茶会。
豆乳入りのカボチャスコーンと、低糖プロテインミルクティーが出される予定だ。

筋肉改革以降、こうした“お茶筋文化”は国中に広まりつつある。
見た目はおしゃれ、でも中身はタンパク質。
これが新しい貴族の常識。

「リュティア嬢。お茶会のあと、少し、お時間いただけますか?」

王子が静かに声をかけてきた。

……はい?

「ストレッチですか?」

「……いえ、違います」

「もしかして、新プロテインの試飲会?」

「違います」

「じゃあ、なんです?」

「……プロポーズです」

「はい???」

そのあと、三秒ほど無言になった。

「えっ? いつ私が王子に言い寄られてたんですか??」

王子が口を開けたまま、フリーズした。

「いや……ずっとですけど……?」

私は真顔で首をかしげた。

「……筋肉って、色気と相反すると思ってたんですけど」

その場にいた執事が、耐えきれずに咳き込み、
マルセロ講師は「ここまで鈍いのは逆に天才」と呟き、
ユリウス王子は、力なく笑った。

「では、順序を変えましょう。まず体幹。次に愛。それが君の道だろう?」

「……はい。じゃあ、まずはスクワット100回からですね」

「いや、そうじゃないんだけど……まあいいか」

お茶会はいつも通り穏やかに進んだ。

プロテイン入りのクッキーをつまみながら、筋肉の話で盛り上がる。

そのあと、王子がひとことだけ言った。

「リュティア。これからも、君の隣に立たせてほしい。愛も、筋肉も」

私は微笑んで、こう返した。

「ええ。筋肉があるなら、ぜひどうぞ」

プロポーズの言葉の意味、私が本当に理解するのは――
たぶん、もう少し筋肉がついてから。

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