義妹に婚約者を譲ったら、貧乏鉄面皮伯爵に溺愛されました。

夢窓(ゆめまど)

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お弁当つくり

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(子供たちのお手伝い)

 孤児院の裏庭。
 長机の上に、唐揚げや卵焼きが入った小さなお弁当箱がずらりと並んでいた。

「はーい! 次はこの唐揚げを入れてね!」
 メイベルが声をかけると、子供たちは楽しそうに動き出す。

「ぼく、唐揚げ担当!」
「わたしは卵焼き、ちゃんと真ん中に置く!」

 ちいさな手がぎこちなくも一生懸命に、弁当を組み立てていく。
マスクして、手袋もして、頑張ってます。



「スプーンとフォークは、袋にひとつずつね」
 年上の子が小さい子に教えながら、カトラリーを袋詰めしていた。

「できた!」
「見て見て、きれいに詰められたよ!」

 笑顔の声があちこちから響き、弁当箱が一つずつ完成していく。



「……なるほど」
アドレは静かにその様子を見守り、頷いた。

「ただ与えるだけでなく、働き方も覚えさせるのか」

「ふふふ、そうなんです。
 一緒に作れば、美味しいのも嬉しいのも、二倍ですからね!」
メイベルは笑顔で答えた。


(アドレの言葉)

 ララベル妃殿下は、子供たちと一緒に卵焼きを詰めながら、ふと小さく呟いた。

「……私には、こんな発想はありませんでした。
 ただ“唐揚げ”と聞いて、疑って……」

 その隣で、アドレが静かに口を開いた。

「――こういう支援は、大切なことです」

「……アドレ様……?」

「衣食住だけでは、人は育たない。
 学びを得てこそ、子は未来を選べる。
 領民の子であれ、孤児であれ……国の未来を担うのは彼らだ」

 無表情のまま、淡々と告げる声。
 けれどララベルには、その一言が胸に深く響いた。



「……わたくしも……もっと目を開かなければならないのですね」
 ララベルは目元を押さえ、静かに頷いた。

「はい。殿下の隣に立たれる方であれば」
 アドレの声は、まるで当然のように平坦だった。


(妃殿下の計画)

 子供たちと一緒に弁当を詰め終えたあと、ララベル妃殿下は深く息をついた。
 その目は、さきほどまでとは違う決意に満ちていた。

「……アドレ様の言葉、胸に響きました。
 学ぶ場があれば、子供たちはもっと未来を描けるのですね」

 アドレは小さく頷く。
「ええ。支援は一度きりではなく、続けることが肝要です」

「……わたくしも、この手で何かを残したい。
 孤児院の子たち、領民の子たちが学べる――“お勉強の場所”を作りたいと思います」



 侍女が目を丸くした。
「妃殿下……!」

 ララベルはまっすぐに子供たちを見つめ、穏やかに微笑んだ。
「殿下にご相談いたします。きっと、賛同してくださるはずです。
 これからは、私も――“唐揚げの隣”で誇れる存在になりたいのです」


(殿下への報告)

 その夜。
 ララベルは決意を胸に、殿下の執務室を訪れた。

「……殿下、少しお時間をいただけますか?」

「どうした、ララベル。顔つきが……いつもと違うな」



 ララベルはまっすぐに殿下を見据えた。
「子供たちのために、お勉強の場所を作りたいのです。
 孤児院や領民の子供が学べる、小さな教室を――わたくしが中心になって運営したいと思います」

「……ララベル……」
殿下は驚いたように目を見開いた。



「今までは……唐揚げに嫉妬して、泣いてばかりでした。
 でも、あの子供たちの笑顔を見て、気づいたのです。
 唐揚げは敵ではなく、きっかけでした。
 わたくしも、殿下の隣にふさわしい妃になりたいのです」



 殿下はしばらく黙っていたが――やがてふっと笑った。

「……そうか。
 私が惚れたのは、唐揚げではなく……やはり、おまえだったんだな」

 ララベルの頬が赤く染まる。

「殿下……」

「計画は、必ず実現させよう。私と共にな」


(孤児院イベント)

 孤児院の庭には、色とりどりの布で飾られた屋台が並んでいた。
 その中でも一番賑わっていたのが――「メイベル特製・唐揚げ弁当」の屋台だった。

「いらっしゃいませ~! 唐揚げ弁当、あつあつですよ~!」
「おにぎりもセットです!」

 子供たちが声を張り上げ、メイベルと一緒に歌いながら弁当を手渡していく。
 ♪ からあげ~ おにぎり~ ♪
 ぎこちない歌声が重なるたび、客は笑顔になり、弁当は飛ぶように売れていった。



「すごい……本当に、飛ぶように……」
 その列に、ララベル妃殿下の姿があった。
 侍女が慌てるのも気にせず、彼女は自ら並んで弁当を受け取る。

「……これが、殿下が夢中になられた唐揚げ……」
 そっと包みを開き、一口。

「……っ! おいしい……!
 これは……誰だって惹かれますわね……」



 遠くからその様子を見ていた殿下は、少し頬を赤らめて呟いた。
「……だから言っただろう。唐揚げは裏切らないってな」

 アドレは無表情のまま腕を組み、短く答える。
「……我が妻の料理だからだ」


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