八百屋王女、なんの冗談ですか?ーー行方不明のパパが国王でした!?

夢窓(ゆめまど)

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お肉の入ったスープ

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【カールの決意】

カールは、財布を強く握った。

――ああ。
この国は、
まだやり直せる。

妹がいて、
父が悔いて、
慕ってくれる民がいる。

カールは、静かに言う。

「父上。
次は……俺も一緒に行きます」

父王は、うなずいた。

「それでいい」

【父王も初めて孤児院を訪れる】

朝の市場。
人の声、荷車の音、肉と野菜の匂い。

父王――アルバートは、
外套のフードを深くかぶり、
ビックとカールの少し後ろを歩いていた。

(……この匂いは、
牢の中では、夢にしかなかったな)



【市場:民が“王家”に気づく瞬間】

肉屋の前で、ビックが立ち止まる。

「ここ、いい匂い」

店主が顔を上げ、
一瞬アルバートを見る。

値踏みするような目。
だが、すぐに笑顔になる。

「王さま、
肉なら、うちの店はどうだろうかな?」

アルバートが、わずかに目を見開く。

「私が……わかるのか」

「昔、兵舎に納めてたことがありましてね。
顔、忘れませんよ」

周囲の客が、ざわりとする。

だが、ひれ伏す者はいない。

店主は続けた。

「いい肉があるんだよ」

ビックが、すっと前に出る。

「あ、あたしがね、パパに」
少し照れて、言い直す。

「孤児院の子に、シチューを作るの。
安くしてくれるなら、助かるなって」

店主は、一瞬黙り込み、
それから、ふっと笑った。

「……いいな。孤児院の子は、
肉入りシチュー食べれるんだ」

ビックの目が輝く。

「えっと……
おじさん、食べられないの?」

店主は、肩をすくめた。

「時々、だな」

その一言が、
アルバートの胸を強く打つ。


【父王、名を名乗る】

アルバートは、フードを外した。

「……父ちゃん」
ビックが呼ぶ。

「ビック」

静かに名を返す。

「私は、アルバートだ」

市場が、一瞬静まり返る。

だが――
誰も、ひれ伏さない。

店主が、口を開いた。

「……王さま」

そして、
アルバートは、大きく笑った。

「いつでも、奢ってやろう。
孤児院に来い」

ビックが、跳ねる。
「やった!!」

カールが、息をのむ。

(……これが、民だ)

【肉屋店主の言葉】

「王さま、うちに
大鍋ありますよう」

店主は、肉を大きく切り分けながら言った。

「今日は、
みんなに腹いっぱい食わせてやりたい」
アルバートは、しばらく黙っていたが、
低く言った。

「……破産しないなら、払うぞ」

店主は、包丁を止め、
まっすぐ王を見る。

「毎度、ありがとうございます」

その言葉には、
卑屈さも、媚びもなかった。

ただ、
対等な感謝だった。



【孤児院】

大鍋が据えられる。

肉、野菜、水。
シンプルな材料。

だが、
湯気が立ち上るたび、
子どもたちの目が輝いていく。

「今日……肉?」

「ほんと?」

「夢じゃない?」

ビックが、胸を張る。

「夢じゃないよ。
ちゃんと、塊ある。
父さんが、買ってくれたんだ。」

アルバートは、
その言葉を聞いて、
そっと目を閉じた。

――ああ。
私は、
この言葉を、王としてではなく、
父として、聞きたかったのだ。

【父王の重い独白】

宝石は、音もしない。
腹も満たさない。

だが、
この鍋は違う。

笑い声があり、湯気があり、
生きている。

アルバートは、
深く、深く息を吸う。

(……遅かったかもしれない。
だが、
遅すぎては、いない)

【民が気づく“王家”】

子どもが、
アルバートを見上げる。

「……おじさん、
また来る?」

アルバートは、
即座に答えた。

「ああ、また来よう!」

カールが、横で静かに言う。

「……俺も」

ビックが笑う。
「じゃあ、次はパンもね!」

みんなの明るい笑顔が広がる。

王家は、鍋の前で、民に気づかれた。


カール、ビックのために“特別王女授業”を開始

八百屋式王妃教育が暴走しつつある王宮。

ビックは机に突っ伏してぼやいていた。

ビック
「うぅぅ……“麗しゅう”が言えない……
 歩くと転ぶ……
 お辞儀は前に倒れる……
 王女ってむずかしい……」

侍女
「ビクトリア様……元気を……」

そこへ。

カール(兄)登場
「ビック。少し、お時間をよろしいでしょうか?」

ビックの顔がぱっと明るくなる。

ビック
「兄ちゃん!! どうしたの?」

カールは微笑んでビックの手をとった。

カール
「ビックには……多少、王女としての基本も必要です。
 ですが、それは“あなたのペース”で学べばいいと思うのです」

ビック
「兄ちゃん……やさしい!!」

教師(遠くで泣く)
「(私の授業は地獄だったのか……?)」



◆ カール兄の特別授業:ご挨拶

場所は静かな小庭。

カールがゆっくりと膝をついて、ビックの目線に合わせる。

カール
「ビック。挨拶には“気持ち”が大事です。
 言葉が少し間違っていても構いません。
 まずは、笑顔で言えばよいのです」

ビック
「笑顔なら得意だよ!」

カール
「では、“ごきげんよう”と言ってみましょう」

ビック
「ごきげん……
 ようッッ!!(全力)」

カール
「びっくりしましたが……素晴らしいです!」

側近
「いや、素晴らしくはないだろ!!?」

カール
「気持ちがこもっていましたから」

ビック
「兄ちゃんに褒められると嬉しい!!」



◆ カール兄の特別授業:歩き方

カール
「王女の歩き方は“猫のように静かに”です」

ビック
「猫……?」

カール
「そうです。そっと……静かに」

ビックは真剣な顔で歩こうとする。

――スッ、スッ、スッ。

侍女
「おおお!? ビック様が転ばずに歩いている!!」

カール
「上出来です。焦らず。ゆっくりと」

ビック
「兄ちゃんの言うとおりにしたらできた!」

教師(泣き崩れる)
「カール殿下……あなたが教師で良いのでは……」



◆ カール兄の特別授業:お辞儀

カール
「お辞儀は、“相手を思う気持ち”です。
 深くやらなくても大丈夫。胸に手を当てて、軽く。」

ビック
「こう?」

カール
「はい。美しいですよ、ビック」

ビック
「えへへ!」

国王(隠れて見てる)
「(かわいい……かわいい……! 師匠が優しすぎる!)」



◆ ビック、兄に質問攻め

ビック
「兄ちゃん、王子ってどうしてそんなに優しいの?
 王宮の先生たちはみんな怖いのに!」

カールは少し照れて笑った。

カール
「私は十年、父上(国王)と牢にいました。
 だから……人に優しくしたいと思うようになったのです。
 特に、家族には――」

ビック
「家族……!!
 兄ちゃん、私のこと“家族”って思ってる?」

カール
「もちろんです。
 あなたは私の妹ですから」

ビック
「兄ちゃん……!!(飛びつく)」

カール
「わ、ビック!? (倒れかける)」



◆ 国王、こっそり見ながら嫉妬

国王
「……なぜ、カールにはあんなに懐くのだ……?
 私は“父ちゃん”と呼ばれたのに……
 カールは“兄ちゃん大好き”……?」

側近
「陛下、また拗ねておられる……」

国王
「だって! 私もあんなふうに褒めたい!!」

側近
「やめてください、過保護が過ぎます!!」



◆ 最後:ビックの宣言

ビック
「兄ちゃん、私……王女の勉強、がんばるよ!
 兄ちゃんが教えてくれるならできる気がする!」

カール(心から微笑む)
「ビックなら、必ずできます。
 一緒にゆっくり進みましょう」

ビック
「うん!!」

国王(遠くから)
「(うらやましい……! でも嬉しい……!)」

侍女
「なんだこの平和な家族……」



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