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すべて嘘と知る
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夜中の二時。
義母の部屋の明かりだけが、薄く灯っていた。
「ごめんねえ……」
申し訳なさそうな声に、私の心がまたひとつ削れる。
夫は帰ってこない。
「残業」の通知は、今日で七日目だ。
暗い台所に、食器と私だけが残っていた。
ふと気づく。
——ああ、この結婚。
終わらせてもいいのかもしれない。
離婚組・真希の快勝トーク
休憩室のソファにもたれながら、
真希がコーヒーを啜ってにやりと笑った。
真希
「私はもう“離婚組”だからね。
みんな、こっちおいで。
清々しいよ。マジで。」
真香と安美が聞き耳を立てる。
真希
「深夜の映画?
見放題やで。
元の家やとさ──
“あれしろ”“これしろ”
“まだ寝ぇへんの?”
とか言われて集中できんかったけど、
今は誰も邪魔しない。最高。」
安美
「ええなぁ……自由ってそういうことよね」
真香
「で、困らんの?生活」
真希は肩をすくめて笑った。
真希
「困るわけないやん。
経済的に自立してる女が、
離婚して困るわけがない。
むしろ勝ち組。
ストレス源が一個消えるだけやで?」
⸻
芽衣が、箸を置いて真希を見つめる。
芽衣
「……早くそっち行きたいです」
真希はにっこり笑って、芽衣の肩を軽く叩いた。
真希
「大丈夫。その日が来たら、
私ら全員で祝杯あげたるわ」
安美
「餃子パーティーやね」
真香
「焼肉でもいいで」
芽衣は、ひそかに胸の奥が温かくなるのを感じた。
真希の“娘さくらの強烈エピソード”
弁当を食べ終えた真希が、
箸袋をきゅっと丸めて話し始めた。
⸻
真希
「うちの子、さくら。
あの子ね……ほんま強烈やったわ」
芽衣と安美、真香が聞き耳を立てる。
真希
「離婚したとき、
“ママのとこ行く。大学行きたいとこあるし、
受験終わったら寮に入るから心配せんでいいよ”
って、さらっと言ったのよ」
芽衣
「え……心が強い……」
真希
「そう。しっかり目標あるのよね。
で、今年のお正月の話なんやけど──」
さくらが元夫の実家に行ったときの話。
真希
「元夫姉の息子、涼太には“お年玉一万円”。
で、さくらには、姑が笑いながら、
**“大学生になったらね~”**って言いながら千円」
芽衣
「えっ……露骨……!」
真香
「涼太くんと十倍違うん!?」
真希
「そうよ。
しかも元旦那、
“よかったな、ちゃんとお礼言えよ”
って、全然怒らへんのよ」
安美
「うわ……最低やん」
真希は苦笑して続けた。
真希
「でね……さくら、日記つけてたのよ。
淡々と全部書いてるの。いままでの事、
“姑は私に千円。涼太には一万円。
パパは私の味方をしなかった” って」
芽衣
「っ……つらい……」
真希
「離婚の話になった時、
“私の日記、読んでください”って出してきて。いっぱいあるのよね。イジワルって、やった方は、覚えてなくても、された方は覚えてるちゅうねん。」
元旦那も義両親も、
読んで、あわあわしてたわ。真っ青。
あの子、文才あるわ。冷静すぎて怖いくらい」
真香
「強すぎる……」
真希は続けた。
真希
「で、さくらがね──
“面会? うん、行くよ。
だってお年玉もらえるんやろ?
これぞ本当のパパ活やん?”
一回三万で、って元旦那の前で、言いだしたのよ」
芽衣
「……え、天才?」
安美
「時代の子すぎる!」
真希
「その後よ。
“でも、こう言っとけば、もう会わない人になるからね”
ってケロッとして言ったの。
もう私がびっくりしたわ」
三人、しばし沈黙。
そのあと、同時に吹き出した。
パパは、三万出してまで、私と面会しないよ。そのうち私も成人するからね。
もう、これで会わないかな。
真希がコーヒーを置き、少し声を落とした。
⸻
真希
「だってね……
元旦那、介護を全部 私に丸投げしようとしたのよ」
芽衣
「え。仕事してるのに?」
真希
「そうよ。私もフル勤務なのに、
“そこはヘルパーさんで” とか勝手に言うわけ」
安美
「ヘルパーさん入っても、結局こっちが動くのにね」
真希
「そうそう。
でね、私が、
“じゃあ私はいつ休むの?” って聞いたら──」
真香
「……なんて言ったの?」
真希、鼻で笑う。
真希
「“大丈夫、お前ならできる”
……だって」
芽衣
「最低……!」
⸻
真希は続ける。
真希
「でね、義母を施設に入れようって言ったら、
“薄情者”とか“冷たい奴”とか言われてね」
安美
「出た……そのパターン……」
真希
「いやいや、
あんな意地悪ばば、誰が仲良くすんねん!
って思ったわよ」
真香
「ほんまよね、現実見てほしいわ」
⸻
真希はふっと表情を緩めた。
⸻
真希
「で、離婚してからね。
さくらと週一で深夜映画行ってるのよ」
芽衣
「え、いいなぁ……!」
真希
「帰りにスーパー寄って、
“これ今日の半額やで”って、さくらがカゴに放り込んでくれるの。
朝は一緒に弁当作って……
なんかもう、幸せなんよね」
安美
「素敵……めっちゃ素敵……!」
真香
「真希さん、完全に勝ち組やん」
芽衣は、その会話を聞きながら、
胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
芽衣
「……私も、そっち行きたいです」
真希はにっこりと笑った。
真希
「大丈夫よ。
来る時は、私ら全員で出迎えたる」
義母の部屋の明かりだけが、薄く灯っていた。
「ごめんねえ……」
申し訳なさそうな声に、私の心がまたひとつ削れる。
夫は帰ってこない。
「残業」の通知は、今日で七日目だ。
暗い台所に、食器と私だけが残っていた。
ふと気づく。
——ああ、この結婚。
終わらせてもいいのかもしれない。
離婚組・真希の快勝トーク
休憩室のソファにもたれながら、
真希がコーヒーを啜ってにやりと笑った。
真希
「私はもう“離婚組”だからね。
みんな、こっちおいで。
清々しいよ。マジで。」
真香と安美が聞き耳を立てる。
真希
「深夜の映画?
見放題やで。
元の家やとさ──
“あれしろ”“これしろ”
“まだ寝ぇへんの?”
とか言われて集中できんかったけど、
今は誰も邪魔しない。最高。」
安美
「ええなぁ……自由ってそういうことよね」
真香
「で、困らんの?生活」
真希は肩をすくめて笑った。
真希
「困るわけないやん。
経済的に自立してる女が、
離婚して困るわけがない。
むしろ勝ち組。
ストレス源が一個消えるだけやで?」
⸻
芽衣が、箸を置いて真希を見つめる。
芽衣
「……早くそっち行きたいです」
真希はにっこり笑って、芽衣の肩を軽く叩いた。
真希
「大丈夫。その日が来たら、
私ら全員で祝杯あげたるわ」
安美
「餃子パーティーやね」
真香
「焼肉でもいいで」
芽衣は、ひそかに胸の奥が温かくなるのを感じた。
真希の“娘さくらの強烈エピソード”
弁当を食べ終えた真希が、
箸袋をきゅっと丸めて話し始めた。
⸻
真希
「うちの子、さくら。
あの子ね……ほんま強烈やったわ」
芽衣と安美、真香が聞き耳を立てる。
真希
「離婚したとき、
“ママのとこ行く。大学行きたいとこあるし、
受験終わったら寮に入るから心配せんでいいよ”
って、さらっと言ったのよ」
芽衣
「え……心が強い……」
真希
「そう。しっかり目標あるのよね。
で、今年のお正月の話なんやけど──」
さくらが元夫の実家に行ったときの話。
真希
「元夫姉の息子、涼太には“お年玉一万円”。
で、さくらには、姑が笑いながら、
**“大学生になったらね~”**って言いながら千円」
芽衣
「えっ……露骨……!」
真香
「涼太くんと十倍違うん!?」
真希
「そうよ。
しかも元旦那、
“よかったな、ちゃんとお礼言えよ”
って、全然怒らへんのよ」
安美
「うわ……最低やん」
真希は苦笑して続けた。
真希
「でね……さくら、日記つけてたのよ。
淡々と全部書いてるの。いままでの事、
“姑は私に千円。涼太には一万円。
パパは私の味方をしなかった” って」
芽衣
「っ……つらい……」
真希
「離婚の話になった時、
“私の日記、読んでください”って出してきて。いっぱいあるのよね。イジワルって、やった方は、覚えてなくても、された方は覚えてるちゅうねん。」
元旦那も義両親も、
読んで、あわあわしてたわ。真っ青。
あの子、文才あるわ。冷静すぎて怖いくらい」
真香
「強すぎる……」
真希は続けた。
真希
「で、さくらがね──
“面会? うん、行くよ。
だってお年玉もらえるんやろ?
これぞ本当のパパ活やん?”
一回三万で、って元旦那の前で、言いだしたのよ」
芽衣
「……え、天才?」
安美
「時代の子すぎる!」
真希
「その後よ。
“でも、こう言っとけば、もう会わない人になるからね”
ってケロッとして言ったの。
もう私がびっくりしたわ」
三人、しばし沈黙。
そのあと、同時に吹き出した。
パパは、三万出してまで、私と面会しないよ。そのうち私も成人するからね。
もう、これで会わないかな。
真希がコーヒーを置き、少し声を落とした。
⸻
真希
「だってね……
元旦那、介護を全部 私に丸投げしようとしたのよ」
芽衣
「え。仕事してるのに?」
真希
「そうよ。私もフル勤務なのに、
“そこはヘルパーさんで” とか勝手に言うわけ」
安美
「ヘルパーさん入っても、結局こっちが動くのにね」
真希
「そうそう。
でね、私が、
“じゃあ私はいつ休むの?” って聞いたら──」
真香
「……なんて言ったの?」
真希、鼻で笑う。
真希
「“大丈夫、お前ならできる”
……だって」
芽衣
「最低……!」
⸻
真希は続ける。
真希
「でね、義母を施設に入れようって言ったら、
“薄情者”とか“冷たい奴”とか言われてね」
安美
「出た……そのパターン……」
真希
「いやいや、
あんな意地悪ばば、誰が仲良くすんねん!
って思ったわよ」
真香
「ほんまよね、現実見てほしいわ」
⸻
真希はふっと表情を緩めた。
⸻
真希
「で、離婚してからね。
さくらと週一で深夜映画行ってるのよ」
芽衣
「え、いいなぁ……!」
真希
「帰りにスーパー寄って、
“これ今日の半額やで”って、さくらがカゴに放り込んでくれるの。
朝は一緒に弁当作って……
なんかもう、幸せなんよね」
安美
「素敵……めっちゃ素敵……!」
真香
「真希さん、完全に勝ち組やん」
芽衣は、その会話を聞きながら、
胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
芽衣
「……私も、そっち行きたいです」
真希はにっこりと笑った。
真希
「大丈夫よ。
来る時は、私ら全員で出迎えたる」
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