『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)

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夜の取引現場ーー外人傭兵

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夜の街外れ。
宮廷の外交官と、外人傭兵の頭目らしき男が密かに会っていた。
片手に灯されたランプの下で、金貨の入った袋が積まれていく。

「約束どおりの額だ」
外交官は細い目を光らせた。
「貴殿ら傭兵が“治安維持”を名目に街を支配してくれるおかげで、側妃の殿下は安心して政を進められる」

傭兵頭目がにやりと笑う。
「俺たちも楽だ。文句を言う民は税と一緒に刈り取ればいい」



忍び寄る影

少し離れた屋根の上。
レンが幻影魔法で姿を消しながら呟く。
「……動かぬ証拠だな」

エリオは耳を澄ませ、補助魔法で声を拾い上げる。
「聞こえる……金のやりとりまで……!」

ヨシュアは拳を握りしめ、必死に抑え込む。
「今すぐ止めたい……けど、証拠を確保する方が先だ……!」



決定的瞬間

外交官がさらに口を開いた。
「次の一手は……王を“病死”させることだ。その後、正妃とその子を始末する。
そのための傭兵は、もう十分に用意してある」

傭兵頭目が笑う。
「へっ、任せとけ。俺たちの刃は金で動く。国がどうなろうが知ったことか」

レンが低く囁いた。
「……これ以上は危険だ。戻るぞ」
エリオが素早く魔法で記録の符を完成させる。
「はいっ!」




屋根から飛び降り、影の中を戻る三人。
エリオがホッとしたようにヨシュアの腕にしがみついた。
「あぁ……心臓止まるかと思った……!」
「ちょ、ちょっとエリオ!? 離れて!」

レンは口元をゆるめ、
「……慣れると、男同士も悪くないでしょう?」

「「だから違うって言ってるでしょ!!」」
ふたりの声がまたハモり、ジェシカは思わず吹き出した。



三本柱の証拠が揃った
• 財務卿:民を食い物にした帳簿
• 侍従長:王を薬漬けにする現場
• 近衛副団長:裏切りと傭兵支配の記録
• 外交官:傭兵との取引・暗殺計画の会話

これで「側妃派の中枢」の証拠がすべて出揃いました。


叔父の館にて
揃えた証拠を抱え、私たちは再び叔父の館へ戻った。
騎士団の旗が翻り、傭兵たちは牢に繋がれつつある。
少しずつ、空気が変わってきていた。

正妃は痩せた体で椅子に座り、手紙をしたためていた。
「……兄上に、ヨシュアの決意を伝えます。どうか、この声に応えてくださいますように」

ペンを置き、彼女は手紙を差し出した。
「レン。あなたが届けてくれますか?」



レンに託される

レンは静かに受け取り、深く頭を下げる。
「承知しました。殿下の旗が折れぬよう、必ず援軍を連れて戻りましょう」

「え、レンが行くの?」
エリオがきょとんと目を丸くする。
「……あら、私ひとり? 寂しいわね」
レンが冗談めかして微笑む。

「いや、冗談になってないから!」
エリオが慌てて叫び、
ヨシュアは複雑そうに眉を寄せた。
「……僕たちだけで大丈夫だろうか」



母の願い

正妃はヨシュアの手を取り、穏やかに告げた。
「……ヨシュア、私が手紙を出すのは“あなたを助けるため”ではありません。
あなたが立ち上がった、その姿に応える者がきっと現れるから」

ヨシュアは目を伏せ、そして強く頷いた。
「……わかりました、母上」

転移の決意

正妃の手紙を受け取ったレンは、静かに立ち上がった。
「……普通に使者を出せば途中で消されるわ。確実に届けるには――私の転移魔法しかない」

ヨシュアが驚いた顔をする。
「転移魔法……? そんな大技ができるのか!」

「距離も長いし、体力の消耗も大きいけれど……やれないことはないわ」
レンは淡々と答えた。



転移の準備

エリオが思わず身を乗り出す。
「わ、わたしも一緒に……!」

レンは首を振った。
「初心者がついて来れる魔法じゃないの。あなたはここで守りなさい」

「……はい」
エリオは少し残念そうに肩を落とす。



別れの言葉

魔法陣が床に広がり、青白い光が揺らめく。
私は思わず声をかけた。
「……一人で大丈夫? 寂しいわね」

レンは振り返り、唇にかすかな笑みを浮かべる。
「心配しないで。あなたたちこそ気をつけて。……ほんとに、寂しくなったら迎えに来てあげるわ」

「……冗談でも、ほんとでも、頼りにしてるわ」
私はそう答えた。



転移の瞬間

レンが詠唱を終えると、光が一気に広がり、彼の姿はふっと掻き消えた。

「……すごい……」
ヨシュアが息を呑む。
エリオはじっと床を見つめ、
「……やっぱり、僕もいつか……あんな魔法を……」
と小さく呟いた。

私は二人を見回し、拳を握る。
「――レンが戻るまで、この国を守るのは私たちよ」



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