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『初めての“試作石けん”作り!ハーブと魔法で大奮闘』王太子の即位は、どうなる?
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「……公爵令嬢マルグリット。王家の命である。王妃として嫁いでもらう」
王宮謁見の間。
王の言葉は重く、反論など許されぬ空気が満ちていた。
民衆の不安を鎮めるため、形式上の王妃が必要だ──そう説明された。
ジニーを即妃とし、マルグリットは“表向きの王妃”として、国の顔になる。
(……つまり、寵妃ジニーに頭を下げ続ける日々ってこと?)
(気持ち悪い王子の妻? しかも本命は別にいる男?)
マルグリットの背筋に、冷たいものが走った。
「ご命令……かしこまり……」
そう頭を垂れたあと、彼女は静かに、泉へと向かった。
⸻
森サイド
マルグリット泉ドボンからしばらくして
森の暮らしへ
⸻
「……やっほーっ!」
森の中で、マルグリットはスカートの裾をたくし上げ、全力疾走していた。
前方を逃げるのは、ふわふわの白ウサギ。
草の間をくぐり抜け、木の根を跳び越え……あ、転んだ。
「いたた……でも楽しいっ!」
顔にも髪にも泥がついているが、そんなことどうでもいい。
日焼け止めを塗り、簡単なアッパッパを着て、陽射しを全身で浴びる。
畑に水をやり、川辺で足を冷やし、夜は酒盛り。
(あの時、王子に嫁いでたら……今頃、宮廷の牢獄で心をすり減らしてた)
(……ここで正解。人生、これで勝ち組よ)
マルグリットは笑いながら、再びウサギを追いかけた。
王家サイド
⸻
「……行方不明だと?」
玉座の間に、重く響く国王の声。
報告に駆け込んできた神殿の神官は、顔面蒼白だった。
「泉のほとりに、靴と髪飾りが……。おそらく、身を投げられたかと」
王妃候補が失踪。しかも立太子の式典を目前に控えた時期に。
王宮は一瞬でざわつき、貴族たちの間にざわめきが走った。
「……今すぐ捜索隊を出せ! 王妃候補を失えば、式は成り立たぬ!」
⸻
公爵家サイド
⸻
「──な、なんだと……?」
報告を聞いた公爵は、真っ青になったかと思うと、そのまま床に崩れ落ちた。
「お、お嬢様が……泉に……」
側近たちが慌てて抱き起こし、部屋の奥へ運ぶ。
⸻
その頃、当の本人は──
「わははっ、捕まえた!」
森の中で、全身泥まみれのマルグリットが白ウサギを抱き上げ、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
髪には草の葉っぱ、頬には土の筋。
だが、その瞳は生き生きとして輝いていた。
(……王子の妻? そんなの、まっぴらごめん)
◾️ある晴れた午後。
森の中のちいさな作業小屋に、ふわっとハーブの香りが広がっていた。
「……というわけで、本日は“マロン式・石けんづくり講座”です!」
マロンが気合を入れてエプロンの紐をきゅっと結ぶ。
アデルが目を輝かせながら材料を並べる。
「オリーブオイルに、ラベンダー……あと、ミントも入れてみようよ!」
「待って、それ肌がピリつく人いるから様子見よう!」とマルグリットが止める。
⸻
石けんづくりは、思ったより大変だった。
「え、苛性ソーダってこんなに扱い慎重なの……?」
「水と混ぜると熱持つからね。魔法で冷やしながら40度守って……うわ、ちょっと待って!」
「ぎゃー!泡立ってきたー!」
「泡じゃない、それ“攪拌”してるだけ!混ぜる混ぜる!」
アデルが静かに後ろからのぞいていたが、すぐ逃げて行った。
(……これは女の戦場だな)
⸻
数時間後──
とろりとした“石けんのもと”が型に流し込まれる。
「はいっ、これでひとまず完成!」
「……で、使えるのはいつ?」
「一ヶ月後。」
「……長ッ!!」
「乾燥と熟成がいるのよ。焦ると肌に刺激残るから。魔法使ってもこれは無理。地道にね」
⸻
仕上げは、手描きのラベル貼り。
「名前どうする?」「“森のやさしさ”とか?」「“しっとりハーブの石けん”?」
「それ、うっかり食べそう……」
三人でゲラゲラ笑いながら、棚に並べられた石けんたち。
熟成完了まで、あと30日。
森の風と時間が、それを静かに見守っていた。
◆ 森の石けん工房、はじめました。
「……あれ、マルグリット、何してるの?」
フィーネが首をかしげる先で、マルグリットは真剣な表情で“白衣のようなもの”を着ていた。
「危険物を扱いますので、防護は万全ですわ。……アデル、火加減お願いします」
「まさか料理じゃないよな?」
「違います。今日は“石けん”を作りますの!」
──始まりは、森暮らしの悩みだった。
汗をかいたあと、水で流すだけでは限界がある。
マルグリットは気づいたのだ。
(私は今、野生に近い……)
だが、元王妃候補たるもの、「清潔」は捨てられない。
そこで彼女が選んだのが──コールドプロセス石けん。
◆ 材料はシンプルに
• 油(オリーブオイル or ラード or 太白ごま油)
• 苛性ソーダ(危険なのでアデルの魔法ロック付き)
• 精製水
※あとは好みでハーブ粉末や蜂蜜などを追加できる。
「苛性ソーダは強アルカリなので、水に溶かすときは慎重に……あと逆に入れると爆発しますわよ。はい、常識です」
「こわっ」
アデルはしっかり魔法障壁を張りつつ、混ぜる作業をサポート。
やがて白くとろみのある液体ができあがり、それを木型に流し込む。
「これで、“自然派森の石けん” 完成です!」
「……これ、すぐ使えるの?」
「いえ、最低でも4週間は熟成させますわ。苛性ソーダの刺激を飛ばして、肌に優しくするのです」
「理系だ……」
「私はですね、王妃教育よりこっちのほうが100倍楽しいですのよ!」
⸻
◆ オプションの使い方
翌日、マロンとアデルも参戦。
• マロン:ミント粉末+ラード→「虫除けスッキリ系」
• マルグリットラベンダー+はちみつ→「癒しのしっとり系」
• アデル:炭+木酢液→「“漢の石けん”……真っ黒だけどな」
(マルグリット曰く「“男子風呂の香り”がしますわね……」)
完成した石けんは、みんなの部屋の窓辺で乾燥中。
木箱に並ぶ様子は、まるでスイーツ工房のよう。
⸻
◆ 結果
その後、森のはずれの無人販売所に来た旅人や村人から
「ここのお風呂、すごくいい匂いする!」
「肌すべすべになった!」
「なんか他の売ってませんか?」
と大好評。
マルグリットは笑顔で言う。
「王子と結婚していたら、石けんなんて一生作れなかったでしょうね……」
アデル「つくってたら多分、怒られてたな」
マロン「泡立てただけで怒る男、いそう」
マルグリット「今度、固形シャンプーも作らない?」
王宮謁見の間。
王の言葉は重く、反論など許されぬ空気が満ちていた。
民衆の不安を鎮めるため、形式上の王妃が必要だ──そう説明された。
ジニーを即妃とし、マルグリットは“表向きの王妃”として、国の顔になる。
(……つまり、寵妃ジニーに頭を下げ続ける日々ってこと?)
(気持ち悪い王子の妻? しかも本命は別にいる男?)
マルグリットの背筋に、冷たいものが走った。
「ご命令……かしこまり……」
そう頭を垂れたあと、彼女は静かに、泉へと向かった。
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森サイド
マルグリット泉ドボンからしばらくして
森の暮らしへ
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「……やっほーっ!」
森の中で、マルグリットはスカートの裾をたくし上げ、全力疾走していた。
前方を逃げるのは、ふわふわの白ウサギ。
草の間をくぐり抜け、木の根を跳び越え……あ、転んだ。
「いたた……でも楽しいっ!」
顔にも髪にも泥がついているが、そんなことどうでもいい。
日焼け止めを塗り、簡単なアッパッパを着て、陽射しを全身で浴びる。
畑に水をやり、川辺で足を冷やし、夜は酒盛り。
(あの時、王子に嫁いでたら……今頃、宮廷の牢獄で心をすり減らしてた)
(……ここで正解。人生、これで勝ち組よ)
マルグリットは笑いながら、再びウサギを追いかけた。
王家サイド
⸻
「……行方不明だと?」
玉座の間に、重く響く国王の声。
報告に駆け込んできた神殿の神官は、顔面蒼白だった。
「泉のほとりに、靴と髪飾りが……。おそらく、身を投げられたかと」
王妃候補が失踪。しかも立太子の式典を目前に控えた時期に。
王宮は一瞬でざわつき、貴族たちの間にざわめきが走った。
「……今すぐ捜索隊を出せ! 王妃候補を失えば、式は成り立たぬ!」
⸻
公爵家サイド
⸻
「──な、なんだと……?」
報告を聞いた公爵は、真っ青になったかと思うと、そのまま床に崩れ落ちた。
「お、お嬢様が……泉に……」
側近たちが慌てて抱き起こし、部屋の奥へ運ぶ。
⸻
その頃、当の本人は──
「わははっ、捕まえた!」
森の中で、全身泥まみれのマルグリットが白ウサギを抱き上げ、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
髪には草の葉っぱ、頬には土の筋。
だが、その瞳は生き生きとして輝いていた。
(……王子の妻? そんなの、まっぴらごめん)
◾️ある晴れた午後。
森の中のちいさな作業小屋に、ふわっとハーブの香りが広がっていた。
「……というわけで、本日は“マロン式・石けんづくり講座”です!」
マロンが気合を入れてエプロンの紐をきゅっと結ぶ。
アデルが目を輝かせながら材料を並べる。
「オリーブオイルに、ラベンダー……あと、ミントも入れてみようよ!」
「待って、それ肌がピリつく人いるから様子見よう!」とマルグリットが止める。
⸻
石けんづくりは、思ったより大変だった。
「え、苛性ソーダってこんなに扱い慎重なの……?」
「水と混ぜると熱持つからね。魔法で冷やしながら40度守って……うわ、ちょっと待って!」
「ぎゃー!泡立ってきたー!」
「泡じゃない、それ“攪拌”してるだけ!混ぜる混ぜる!」
アデルが静かに後ろからのぞいていたが、すぐ逃げて行った。
(……これは女の戦場だな)
⸻
数時間後──
とろりとした“石けんのもと”が型に流し込まれる。
「はいっ、これでひとまず完成!」
「……で、使えるのはいつ?」
「一ヶ月後。」
「……長ッ!!」
「乾燥と熟成がいるのよ。焦ると肌に刺激残るから。魔法使ってもこれは無理。地道にね」
⸻
仕上げは、手描きのラベル貼り。
「名前どうする?」「“森のやさしさ”とか?」「“しっとりハーブの石けん”?」
「それ、うっかり食べそう……」
三人でゲラゲラ笑いながら、棚に並べられた石けんたち。
熟成完了まで、あと30日。
森の風と時間が、それを静かに見守っていた。
◆ 森の石けん工房、はじめました。
「……あれ、マルグリット、何してるの?」
フィーネが首をかしげる先で、マルグリットは真剣な表情で“白衣のようなもの”を着ていた。
「危険物を扱いますので、防護は万全ですわ。……アデル、火加減お願いします」
「まさか料理じゃないよな?」
「違います。今日は“石けん”を作りますの!」
──始まりは、森暮らしの悩みだった。
汗をかいたあと、水で流すだけでは限界がある。
マルグリットは気づいたのだ。
(私は今、野生に近い……)
だが、元王妃候補たるもの、「清潔」は捨てられない。
そこで彼女が選んだのが──コールドプロセス石けん。
◆ 材料はシンプルに
• 油(オリーブオイル or ラード or 太白ごま油)
• 苛性ソーダ(危険なのでアデルの魔法ロック付き)
• 精製水
※あとは好みでハーブ粉末や蜂蜜などを追加できる。
「苛性ソーダは強アルカリなので、水に溶かすときは慎重に……あと逆に入れると爆発しますわよ。はい、常識です」
「こわっ」
アデルはしっかり魔法障壁を張りつつ、混ぜる作業をサポート。
やがて白くとろみのある液体ができあがり、それを木型に流し込む。
「これで、“自然派森の石けん” 完成です!」
「……これ、すぐ使えるの?」
「いえ、最低でも4週間は熟成させますわ。苛性ソーダの刺激を飛ばして、肌に優しくするのです」
「理系だ……」
「私はですね、王妃教育よりこっちのほうが100倍楽しいですのよ!」
⸻
◆ オプションの使い方
翌日、マロンとアデルも参戦。
• マロン:ミント粉末+ラード→「虫除けスッキリ系」
• マルグリットラベンダー+はちみつ→「癒しのしっとり系」
• アデル:炭+木酢液→「“漢の石けん”……真っ黒だけどな」
(マルグリット曰く「“男子風呂の香り”がしますわね……」)
完成した石けんは、みんなの部屋の窓辺で乾燥中。
木箱に並ぶ様子は、まるでスイーツ工房のよう。
⸻
◆ 結果
その後、森のはずれの無人販売所に来た旅人や村人から
「ここのお風呂、すごくいい匂いする!」
「肌すべすべになった!」
「なんか他の売ってませんか?」
と大好評。
マルグリットは笑顔で言う。
「王子と結婚していたら、石けんなんて一生作れなかったでしょうね……」
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