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値切れないか、交渉している王子
大広間の空気は、舞踏会どころか裁判所のように張り詰めていた。
キャスリンは涼しい顔で書類束をテーブルに並べ、アベルは額に手を当てる。
⸻
キャスリン
「今まで殿下からいただいた品々──商人に鑑定させております。
市場価格の三倍程度が“定価”とされるのが通例ですね。花束一つでも時価で金貨五枚はくだらないと」
アベル
「……それをいちいち持ち出すのか」
キャスリン
「もちろん。公爵家から差し上げた贈答品も、すべて領収書がございます。
カフス、腕時計、書物、式典用の外套……金貨三百枚程度になりますわね」
領収書の束を広げると、会場から「おお……」と感嘆とも嘲笑ともつかぬ声が上がる。
⸻
アベル
「だが、殿下からも“贈り物”はあったはずだ。ドレスなど──」
キャスリン
「あら? ドレス? 殿下はルビー様と“お揃い”で贈られるばかりでしたよ。
婚約者である私に向けての贈り物は……残念ながら記録にございません」
ルビーの頬が真っ赤に染まり、俯く。
⸻
キャスリン
「ですので、合算して裁判に持ち込むのが最も公平でしょうね。
公爵家としても、国庫から支出される資金が“愛人遊び”に消えていたとなれば、国全体に関わる大問題ですもの」
ざわめく会場。アベルは思わず苦笑しつつも、目の奥には鋭い光を宿す。
⸻
キャスリン
「ですから、殿下──」
扇子を軽やかに閉じ、すっと顔を上げる。
「合算して、裁判判決で参りましょう」
水を打ったように静まり返る。
アベル
「待て──」
だがその声を遮るように、キャスリンが続けた。
⸻
キャスリン
「曖昧な理由での婚約破棄は、契約違反です。
慰謝料の加算は当然、証拠の提出も求められます。
公爵家としても、王家の品位を守るため、あえて“裁判で白黒”をつけるのが最善かと」
⸻
カナタ
「ば、馬鹿な! 王家を訴えるだと!?」
キャスリン
「ええ、訴えますわ。
むしろ殿下の行動が、この国の信用を揺るがしていると証明できますから」
ルビーは真っ青になり、視線を落とした。
⸻
貴族たちはひそひそと囁き合い、やがて「公爵令嬢の勝ちだ」「あの王子は終わりだ」とざわめきが広がっていく。
アベル(心の声)
「……完全に追い込まれたな。兄上、これ以上の失態は王家そのものの瓦解を招く」
⸻
キャスリンは一礼し、最後に微笑んだ。
キャスリン
「──皆さま。私は裁判の準備がございますので、これで失礼いたします。
どうぞ引き続き、パーティーをお楽しみくださいませ」
彼女は扇子を軽く開き、そして――パチンと鋭く閉じた。
その一音が、大広間にこだました瞬間。
⸻
会場の貴族たちがどよめき、拍手とも嘲笑ともつかぬ“ざまぁの波”が広がっていく。
誰もが一様に、王太子の末路を悟ったのだ。
そして悠然と背を向ける。
残されたのは、青ざめた第一王子と、何も言えないルビー、そして苦々しい顔のアベルだけだった。
キャスリンは背筋を伸ばし、静かな足取りで会場を後にした。
残されたのは、青ざめた第一王子カナタと、何も言えず俯くルビー。
そして――アベルだけが、その光景を見つめていた。
沈黙のあと、誰かがぽつりと呟く。
廷臣A
「……公爵家の管財人が作った請求書なら、ひとつの漏れもないだろうさ」
その言葉が、広間を駆け抜けた。
まるで“判決”が下されたように、誰も反論できない。
⸻
会場の貴族たちがどよめき、拍手とも嘲笑ともつかぬ“ざまぁの波”が広がる。
青ざめた第一王子と、何も言えないルビー。
そして、ただひとり冷静に見つめるアベル。
アベル(心の声)
「……この瞬間、兄の終わりを確信した」
静寂の中、キャスリンの足音だけが優雅に響いた。
それはまるで、正義と計算を携えた女神の行進だった。
キャスリンは涼しい顔で書類束をテーブルに並べ、アベルは額に手を当てる。
⸻
キャスリン
「今まで殿下からいただいた品々──商人に鑑定させております。
市場価格の三倍程度が“定価”とされるのが通例ですね。花束一つでも時価で金貨五枚はくだらないと」
アベル
「……それをいちいち持ち出すのか」
キャスリン
「もちろん。公爵家から差し上げた贈答品も、すべて領収書がございます。
カフス、腕時計、書物、式典用の外套……金貨三百枚程度になりますわね」
領収書の束を広げると、会場から「おお……」と感嘆とも嘲笑ともつかぬ声が上がる。
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アベル
「だが、殿下からも“贈り物”はあったはずだ。ドレスなど──」
キャスリン
「あら? ドレス? 殿下はルビー様と“お揃い”で贈られるばかりでしたよ。
婚約者である私に向けての贈り物は……残念ながら記録にございません」
ルビーの頬が真っ赤に染まり、俯く。
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キャスリン
「ですので、合算して裁判に持ち込むのが最も公平でしょうね。
公爵家としても、国庫から支出される資金が“愛人遊び”に消えていたとなれば、国全体に関わる大問題ですもの」
ざわめく会場。アベルは思わず苦笑しつつも、目の奥には鋭い光を宿す。
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キャスリン
「ですから、殿下──」
扇子を軽やかに閉じ、すっと顔を上げる。
「合算して、裁判判決で参りましょう」
水を打ったように静まり返る。
アベル
「待て──」
だがその声を遮るように、キャスリンが続けた。
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キャスリン
「曖昧な理由での婚約破棄は、契約違反です。
慰謝料の加算は当然、証拠の提出も求められます。
公爵家としても、王家の品位を守るため、あえて“裁判で白黒”をつけるのが最善かと」
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カナタ
「ば、馬鹿な! 王家を訴えるだと!?」
キャスリン
「ええ、訴えますわ。
むしろ殿下の行動が、この国の信用を揺るがしていると証明できますから」
ルビーは真っ青になり、視線を落とした。
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貴族たちはひそひそと囁き合い、やがて「公爵令嬢の勝ちだ」「あの王子は終わりだ」とざわめきが広がっていく。
アベル(心の声)
「……完全に追い込まれたな。兄上、これ以上の失態は王家そのものの瓦解を招く」
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キャスリンは一礼し、最後に微笑んだ。
キャスリン
「──皆さま。私は裁判の準備がございますので、これで失礼いたします。
どうぞ引き続き、パーティーをお楽しみくださいませ」
彼女は扇子を軽く開き、そして――パチンと鋭く閉じた。
その一音が、大広間にこだました瞬間。
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会場の貴族たちがどよめき、拍手とも嘲笑ともつかぬ“ざまぁの波”が広がっていく。
誰もが一様に、王太子の末路を悟ったのだ。
そして悠然と背を向ける。
残されたのは、青ざめた第一王子と、何も言えないルビー、そして苦々しい顔のアベルだけだった。
キャスリンは背筋を伸ばし、静かな足取りで会場を後にした。
残されたのは、青ざめた第一王子カナタと、何も言えず俯くルビー。
そして――アベルだけが、その光景を見つめていた。
沈黙のあと、誰かがぽつりと呟く。
廷臣A
「……公爵家の管財人が作った請求書なら、ひとつの漏れもないだろうさ」
その言葉が、広間を駆け抜けた。
まるで“判決”が下されたように、誰も反論できない。
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会場の貴族たちがどよめき、拍手とも嘲笑ともつかぬ“ざまぁの波”が広がる。
青ざめた第一王子と、何も言えないルビー。
そして、ただひとり冷静に見つめるアベル。
アベル(心の声)
「……この瞬間、兄の終わりを確信した」
静寂の中、キャスリンの足音だけが優雅に響いた。
それはまるで、正義と計算を携えた女神の行進だった。
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