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サファイアのおうち
(サファイアの「おうち」)
──公爵家の中庭。
キャスリンはサファイアと並んでベンチに座り、花の咲く庭を眺めていた。
春の風が頬を撫で、どこか穏やかな時間が流れている。
⸻
キャスリン
「どう? サファイア。このお屋敷は気に入りましたか?」
サファイア(小さく首を傾げて、にっこり)
「うん! でもね……」
キャスリン
「でも?」
サファイアはキャスリンの腕にぎゅっと抱きついて、無邪気に言った。
サファイア
「サファイアのおうちは……おかあさまがいるところ!」
⸻
キャスリンの呼吸が止まる。
扇子を取り落としそうになり、思わず両腕でサファイアを抱きしめた。
キャスリン
「……あぁ……あなたという子は……」
胸が熱くなり、堪えきれずに瞳に涙がにじむ。
⸻
キャスリン(心の声)
「お屋敷でも、王宮でもない。
“私がいる場所が家”だと、この子は言うのね。
……私はずっと愛を遠ざけてきたのに。
今、あなたに“居場所”と呼ばれてしまった」
⸻
サファイアは何も知らず、キャスリンの胸に顔を埋めてにこにこと笑う。
キャスリンはそっと涙を拭い、髪を撫でながら小さく囁いた。
キャスリン
「……ええ。これからも、ずっと一緒に帰りましょうね」
(国外使節団の画策)
──王宮謁見の間。
豪奢な衣装をまとった国外の使節団が、堂々と国王夫妻の前に進み出る。
使節団長
「──陛下。我らが確認いたしました。
その幼子“サファイア”は紛れもなく王家の血を引く者。
ならば我が国との婚姻の証として迎えるのが筋でございましょう」
ざわめく廷臣たち。
キャスリンは思わずサファイアを抱きしめ、背を庇うように立つ。
⸻
国王
「何を言う。あの子は我が庇護下にある!」
使節団長
「しかし陛下。王家の血を持つ子が、外の地で育つことこそ国の恥。
今すぐ我らに託していただきたい」
サファイアは何も分からずキャスリンにしがみつき、震える声を出す。
サファイア
「……おかあさま……いや……」
⸻
キャスリンの瞳に怒りが宿る。
彼女は静かに一歩前に出て、扇子を広げた。
キャスリン
「いいえ、この子は渡しません。
たとえ外交の駒とされようと──この子は私の“娘”。
王家の血であろうがなかろうが、捨てられた時から、ここが居場所です」
⸻
使節団は顔を歪め、さらに強く主張する。
使節団長
「公爵令嬢ごときが、我らの決定を拒むか!」
その瞬間、アベルが前に出た。
鋭い瞳で使節団を見据え、剣の柄に手をかける。
アベル
「サファイアは王家の子であると同時に──私の娘でもある。
誰にも渡さない。
……この国で、私とキャスリンが“家族”として守るのだ!」
⸻
廷臣たちは息を呑み、使節団は怒りに満ちた視線を投げつける。
王宮の空気が一気に緊迫する中、サファイアはキャスリンの胸で必死にしがみついていた。
(外交と子供の叫び)
──王宮謁見の間。
国外の使節団が、冷徹な声で言い放った。
使節団長
「聞けば、その幼子は第一王子カナタ殿下の子──。
血は王家に連なる。だが母は、身分卑しい男爵令嬢。
ならばこそ、外交のため、友好のため……我らの庇護下に置くのが筋でございましょう」
廷臣たちがざわめき、王宮の空気が一気に凍りつく。
⸻
キャスリンはサファイアを庇うように抱き寄せ、静かに扇子を開いた。
だが、そのとき──
サファイア
「おかあさま、いや!
わたし、いきたくない!
ここにいたい……おかあさまのそばにいたいの!」
小さな叫びが広間に響き、誰もが息を呑んだ。
⸻
キャスリンは震える肩を抱きしめながら、瞳を閉じて低く囁く。
キャスリン
「……お聞きになりまして? 陛下。
この子は外交の駒ではなく、一人の“娘”です」
⸻
アベルが前に進み出る。
剣の柄に手を置き、使節団を鋭く睨みつける。
アベル
「サファイアは、王家の子であると同時に──キャスリンと私の家族だ。
この国からも、この母の腕からも、誰一人として引き離させはしない!」
⸻
廷臣たちは息を呑み、国王夫妻も顔を曇らせる。
外交か、家族か──王国を揺るがす大きな岐路が訪れていた。
(外交を論破するキャスリン)
──王宮謁見の間。
国外使節団の声が鋭く響く。
使節団長
「この子は王家の血を引く。外交のため、我らの庇護下に置くのが筋!」
廷臣たちがざわつく中、キャスリンは一歩前に出て、扇子を広げた。
⸻
キャスリン
「──外交は請求と同じです。
互いの利益と取引で成り立つもの。
お金や資源で済むものを、わざわざ幼子を巻き込む必要がありますか?」
広間が静まり返る。
キャスリン
「もしそれでも“子を差し出せ”とおっしゃるのなら──容赦はいたしません」
⸻
アベルが剣の柄に手を置き、強く頷く。
アベル
「……キャスリン、その通りだ。
外交のために娘を犠牲にするなら、王国全体を敵に回す覚悟で来い!」
⸻
サファイアがキャスリンの裾をぎゅっと掴み、不安そうに見上げる。
キャスリンはその小さな体を抱き寄せ、静かに囁いた。
キャスリン
「大丈夫よ。あなたは、私たちの娘。
誰にも渡さない」
⸻
廷臣たちは息を呑み、使節団は言葉を失う。
場の空気は完全に逆転していた。
(国王夫妻の宣言)
──王宮謁見の間。
キャスリンの冷静な言葉が広間に響き渡った。
キャスリン
「外交は請求と同じ、取引で成り立ちます。
資源や金で解決できるものを、幼子に押し付ける必要はありません。
もしこの子を奪おうとするなら──容赦はいたしません」
静まり返る廷臣たち。
国外使節団は顔を歪め、反論しようとする。
⸻
だが、玉座の国王が片手を上げた。
国王
「……よい。キャスリンの言葉に理がある。
外交に子供を差し出すなど、王家の恥。
その幼子サファイアは、今日より正式に王家の庇護下に置く!」
⸻
王妃も立ち上がり、はっきりと告げる。
王妃
「サファイアは家族。
そして彼女を守り育てるのは、キャスリン──あなたです」
⸻
廷臣たちから驚きと安堵の声が広がる。
国外使節団は顔を赤らめて押し黙った。
⸻
キャスリンは静かに礼を取り、サファイアを胸に抱きながら答える。
キャスリン
「謹んでお受けいたします。
この子は──必ず、私が守り抜きます」
サファイアは涙を浮かべながら笑い、キャスリンの首にしがみつく。
サファイア
「やった! おかあさま……!」
⸻
アベルは二人の姿を見つめ、胸を熱くしながら心に誓った。
アベル(心の声)
「……必ず、この家族を守り抜く。
義務ではなく、愛として」
──公爵家の中庭。
キャスリンはサファイアと並んでベンチに座り、花の咲く庭を眺めていた。
春の風が頬を撫で、どこか穏やかな時間が流れている。
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キャスリン
「どう? サファイア。このお屋敷は気に入りましたか?」
サファイア(小さく首を傾げて、にっこり)
「うん! でもね……」
キャスリン
「でも?」
サファイアはキャスリンの腕にぎゅっと抱きついて、無邪気に言った。
サファイア
「サファイアのおうちは……おかあさまがいるところ!」
⸻
キャスリンの呼吸が止まる。
扇子を取り落としそうになり、思わず両腕でサファイアを抱きしめた。
キャスリン
「……あぁ……あなたという子は……」
胸が熱くなり、堪えきれずに瞳に涙がにじむ。
⸻
キャスリン(心の声)
「お屋敷でも、王宮でもない。
“私がいる場所が家”だと、この子は言うのね。
……私はずっと愛を遠ざけてきたのに。
今、あなたに“居場所”と呼ばれてしまった」
⸻
サファイアは何も知らず、キャスリンの胸に顔を埋めてにこにこと笑う。
キャスリンはそっと涙を拭い、髪を撫でながら小さく囁いた。
キャスリン
「……ええ。これからも、ずっと一緒に帰りましょうね」
(国外使節団の画策)
──王宮謁見の間。
豪奢な衣装をまとった国外の使節団が、堂々と国王夫妻の前に進み出る。
使節団長
「──陛下。我らが確認いたしました。
その幼子“サファイア”は紛れもなく王家の血を引く者。
ならば我が国との婚姻の証として迎えるのが筋でございましょう」
ざわめく廷臣たち。
キャスリンは思わずサファイアを抱きしめ、背を庇うように立つ。
⸻
国王
「何を言う。あの子は我が庇護下にある!」
使節団長
「しかし陛下。王家の血を持つ子が、外の地で育つことこそ国の恥。
今すぐ我らに託していただきたい」
サファイアは何も分からずキャスリンにしがみつき、震える声を出す。
サファイア
「……おかあさま……いや……」
⸻
キャスリンの瞳に怒りが宿る。
彼女は静かに一歩前に出て、扇子を広げた。
キャスリン
「いいえ、この子は渡しません。
たとえ外交の駒とされようと──この子は私の“娘”。
王家の血であろうがなかろうが、捨てられた時から、ここが居場所です」
⸻
使節団は顔を歪め、さらに強く主張する。
使節団長
「公爵令嬢ごときが、我らの決定を拒むか!」
その瞬間、アベルが前に出た。
鋭い瞳で使節団を見据え、剣の柄に手をかける。
アベル
「サファイアは王家の子であると同時に──私の娘でもある。
誰にも渡さない。
……この国で、私とキャスリンが“家族”として守るのだ!」
⸻
廷臣たちは息を呑み、使節団は怒りに満ちた視線を投げつける。
王宮の空気が一気に緊迫する中、サファイアはキャスリンの胸で必死にしがみついていた。
(外交と子供の叫び)
──王宮謁見の間。
国外の使節団が、冷徹な声で言い放った。
使節団長
「聞けば、その幼子は第一王子カナタ殿下の子──。
血は王家に連なる。だが母は、身分卑しい男爵令嬢。
ならばこそ、外交のため、友好のため……我らの庇護下に置くのが筋でございましょう」
廷臣たちがざわめき、王宮の空気が一気に凍りつく。
⸻
キャスリンはサファイアを庇うように抱き寄せ、静かに扇子を開いた。
だが、そのとき──
サファイア
「おかあさま、いや!
わたし、いきたくない!
ここにいたい……おかあさまのそばにいたいの!」
小さな叫びが広間に響き、誰もが息を呑んだ。
⸻
キャスリンは震える肩を抱きしめながら、瞳を閉じて低く囁く。
キャスリン
「……お聞きになりまして? 陛下。
この子は外交の駒ではなく、一人の“娘”です」
⸻
アベルが前に進み出る。
剣の柄に手を置き、使節団を鋭く睨みつける。
アベル
「サファイアは、王家の子であると同時に──キャスリンと私の家族だ。
この国からも、この母の腕からも、誰一人として引き離させはしない!」
⸻
廷臣たちは息を呑み、国王夫妻も顔を曇らせる。
外交か、家族か──王国を揺るがす大きな岐路が訪れていた。
(外交を論破するキャスリン)
──王宮謁見の間。
国外使節団の声が鋭く響く。
使節団長
「この子は王家の血を引く。外交のため、我らの庇護下に置くのが筋!」
廷臣たちがざわつく中、キャスリンは一歩前に出て、扇子を広げた。
⸻
キャスリン
「──外交は請求と同じです。
互いの利益と取引で成り立つもの。
お金や資源で済むものを、わざわざ幼子を巻き込む必要がありますか?」
広間が静まり返る。
キャスリン
「もしそれでも“子を差し出せ”とおっしゃるのなら──容赦はいたしません」
⸻
アベルが剣の柄に手を置き、強く頷く。
アベル
「……キャスリン、その通りだ。
外交のために娘を犠牲にするなら、王国全体を敵に回す覚悟で来い!」
⸻
サファイアがキャスリンの裾をぎゅっと掴み、不安そうに見上げる。
キャスリンはその小さな体を抱き寄せ、静かに囁いた。
キャスリン
「大丈夫よ。あなたは、私たちの娘。
誰にも渡さない」
⸻
廷臣たちは息を呑み、使節団は言葉を失う。
場の空気は完全に逆転していた。
(国王夫妻の宣言)
──王宮謁見の間。
キャスリンの冷静な言葉が広間に響き渡った。
キャスリン
「外交は請求と同じ、取引で成り立ちます。
資源や金で解決できるものを、幼子に押し付ける必要はありません。
もしこの子を奪おうとするなら──容赦はいたしません」
静まり返る廷臣たち。
国外使節団は顔を歪め、反論しようとする。
⸻
だが、玉座の国王が片手を上げた。
国王
「……よい。キャスリンの言葉に理がある。
外交に子供を差し出すなど、王家の恥。
その幼子サファイアは、今日より正式に王家の庇護下に置く!」
⸻
王妃も立ち上がり、はっきりと告げる。
王妃
「サファイアは家族。
そして彼女を守り育てるのは、キャスリン──あなたです」
⸻
廷臣たちから驚きと安堵の声が広がる。
国外使節団は顔を赤らめて押し黙った。
⸻
キャスリンは静かに礼を取り、サファイアを胸に抱きながら答える。
キャスリン
「謹んでお受けいたします。
この子は──必ず、私が守り抜きます」
サファイアは涙を浮かべながら笑い、キャスリンの首にしがみつく。
サファイア
「やった! おかあさま……!」
⸻
アベルは二人の姿を見つめ、胸を熱くしながら心に誓った。
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義務ではなく、愛として」
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