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2人だから、
(二人だけの誓い)
──夜。公爵家のテラス。
星々が瞬く下、キャスリンとアベルは並んで座っていた。
サファイアはすでに寝室で眠っている。
静寂の中で、アベルがぽつりと口を開いた。
⸻
アベル
「……キャスリン。
君とサファイアを守りたい──それはひとつの“愛”ではないだろうか?」
キャスリンは驚いたように横顔を見やる。
扇子を閉じ、黙って彼の言葉を待った。
⸻
アベル
「兄のように、すべてを乗り越えて貫き通すのも、きっと“愛”だったのだと思う。
……彼は思慮が足りず、間違いを重ねた。
けれど、情熱に殉じたことだけは、本物だったのだろう」
彼の声には苦さと、どこかの敬意が混じっていた。
⸻
アベル
「私たちのように、頭で考えてばかりの人間には、あの情熱は理解できない。
……私は兄に劣っているとは思わない。
けれど──“愛を知らなかった”のだ」
アベルは拳を握りしめ、キャスリンをまっすぐに見つめた。
⸻
アベル
「だから、君とサファイアに誓う。
私はもう義務ではなく、愛を学ぶ。
君と共に、そしてサファイアと共に──
本当の家族の愛を、知りたい」
⸻
キャスリンの胸が高鳴る。
彼女はそっと視線を逸らし、扇子で口元を隠した。
キャスリン
「……邪魔くさいことを言いますわね。
ですが──一緒に学んでいくのも、悪くはないかもしれません」
夜風が二人の間を吹き抜け、星々が一層輝きを増していた。
(愛の試練・条件の提示)
──公爵家・応接間。
テーブルを挟んで、キャスリンとアベルが向かい合っていた。
サファイアは庭で遊んでいて、二人きりの時間が与えられる。
⸻
キャスリン
「……殿下。先ほどの“愛を学びたい”というお言葉、確かに受け取りました。
ですが──口先だけでは、私は納得しません」
アベル
「……では、どうすれば?」
キャスリンは扇子を閉じ、真っ直ぐにアベルを見据える。
キャスリン
「結婚に際して、いくつか条件を取り決めます。
私が認められる“試練”を乗り越えられるかどうか──それで殿下の本気を見極めます」
⸻
アベルは息を呑み、真剣に頷いた。
アベル
「言ってくれ。どんな条件でも、受けよう」
キャスリンは一枚の紙を差し出す。
そこには几帳面な文字で書かれた取り決めが並んでいた。
⸻
キャスリンの条件(例)
1. 義務ではなく、日々サファイアに愛情を注ぐこと。
2. 政務においても、必ず“家族を守る選択”を第一にすること。
3. 私の読書と静かな時間を尊重すること。
4. 感情よりも契約を重んじる──ただし“愛”だけは誤魔化さないこと。
⸻
アベルは紙を手に取り、ひとつひとつ目を通した後、口元に苦笑を浮かべた。
アベル
「……まるで婚約契約の条文だな」
キャスリン
「当然ですわ。私にとって結婚は契約。
愛を口にするなら、その分だけ責任を果たしていただきます」
⸻
アベルは真剣に頷き、紙を胸に押し当てる。
アベル
「わかった。これが君の試練なら、必ず守り抜こう。
私は義務ではなく──愛として、この契約を果たす」
キャスリンは一瞬だけ瞳を揺らし、扇子を開いて小さく笑った。
キャスリン
「……さて、言葉通りにできるかどうか。楽しみにしていますわ、殿下」
(国王夫妻への報告)
──王宮・謁見の間。
キャスリンとアベルは揃って国王夫妻の前に進み出た。
キャスリンが差し出したのは、一枚の書面。
⸻
国王
「これは……婚約の条件、だと?」
アベル
「はい。キャスリンが提示し、私が受け入れた。
この契約を果たすことで、愛を学び、家族としての責任を果たしたいのです」
国王は眉をひそめる。
だが、先に口を開いたのは王妃だった。
⸻
王妃
「……まぁ。
愛し合うなら、こんな条件など必要ないはずですわ。
あなたたちは、まだ“愛”に不安を抱えているのかしら?」
キャスリンがわずかに目を伏せ、アベルは言葉に詰まる。
⸻
王妃は静かに続けた。
王妃
「すべて、ありのままでいいのではなくて?
愛は契約で縛るものではありません。
サファイアは……生きている人間なのよ。
条文に守られるより、心に守られるべき子どもでしょう?」
⸻
その言葉に、キャスリンの手が震えた。
アベルもまた、強く拳を握りしめる。
アベル(心の声)
「……私たちはまだ、愛を“信じ切れていない”。
だから契約で縛った……。
だが、本当に必要なのは──ありのままを受け入れることなのかもしれない」
⸻
王は重々しく頷いた。
国王
「二人よ……条件にすがるのではなく、己の心を示してみせよ。
それこそが“家族”を作るのだ」
(キャスリンの思索)
──公爵家・夜の私室。
机の上には婚約の条件を書いた書面が置かれ、窓から月明かりが差し込んでいた。
キャスリンは紅茶を前に、扇子を閉じたままじっと座り込んでいた。
⸻
キャスリン(心の声)
「……愛し合うなら、条件はいらない──王妃様はそう仰った。
確かにそうかもしれない。
けれど私は、愛を知らない。
知らないからこそ、形で縛るしかなかったのよ……」
彼女は書面に視線を落とし、指先でなぞる。
⸻
キャスリン(心の声)
「“義務ではなく、愛を注ぐこと”──そう書いたのは、私自身がそれを恐れていたから。
もし愛されなかったら? もし私がまた、捨てられたら?
……条件がなければ、不安で立っていられなかった」
⸻
窓辺に歩み寄り、月を見上げる。
サファイアの無邪気な笑顔が脳裏に浮かび、胸が締めつけられる。
キャスリン(心の声)
「サファイアは条文などなくても、私を“おかあさま”と呼んだ。
……それは条件ではなく、心が結んだ絆。
なのに私は、まだ……信じ切れていない」
⸻
キャスリンは小さく息を吐き、紅茶を口にした。
静かな夜の中、瞳にはわずかな揺らぎが残っていた。
キャスリン(心の声)
「……愛は、契約で守るものじゃない。
でも私には、どうしても怖いのよ」
(カナタとの対面)
──王家の塔、幽閉された部屋。
静かな扉を開けると、かつて第一王子だったカナタが座っていた。
やつれた顔で、それでも高慢さを失わぬ目をこちらに向ける。
⸻
カナタ
「……キャスリン? 何の用だ」
キャスリンは無言で横に立つサファイアの手を握り、前へ進めた。
小さな青い瞳が、カナタを真っ直ぐに見つめる。
⸻
サファイア
「……おとうさま?」
その声にカナタの表情が一瞬だけ揺らぐ。
だがすぐに視線を逸らし、苦く笑った。
カナタ
「……ふん。あの女の子か。
私の娘……なのか?」
⸻
アベルが静かに前に出て、サファイアを見つめる。
その目は確信を帯びていた。
アベル
「間違いない……この瞳、この立ち姿……
サファイアは、兄上の娘だ」
⸻
キャスリンは冷ややかに扇子を閉じ、言葉を告げる。
キャスリン
「殿下。あなたが捨てた“責任”がここにあります。
この子は必死に生きようとし、笑顔でしがみついてきました。
愛されることなく──それでも“生きたい”と」
サファイアがキャスリンの裾を握り、怯える声を出す。
サファイア
「……いや、おかあさま……わたし、すてられたくない」
⸻
アベルはサファイアを抱き寄せ、兄を睨んだ。
アベル
「兄上……あなたはこの子を愛さなかった。
だが私は、この子を“娘”と呼び、守り抜く。
それが私の愛の形だ」
──夜。公爵家のテラス。
星々が瞬く下、キャスリンとアベルは並んで座っていた。
サファイアはすでに寝室で眠っている。
静寂の中で、アベルがぽつりと口を開いた。
⸻
アベル
「……キャスリン。
君とサファイアを守りたい──それはひとつの“愛”ではないだろうか?」
キャスリンは驚いたように横顔を見やる。
扇子を閉じ、黙って彼の言葉を待った。
⸻
アベル
「兄のように、すべてを乗り越えて貫き通すのも、きっと“愛”だったのだと思う。
……彼は思慮が足りず、間違いを重ねた。
けれど、情熱に殉じたことだけは、本物だったのだろう」
彼の声には苦さと、どこかの敬意が混じっていた。
⸻
アベル
「私たちのように、頭で考えてばかりの人間には、あの情熱は理解できない。
……私は兄に劣っているとは思わない。
けれど──“愛を知らなかった”のだ」
アベルは拳を握りしめ、キャスリンをまっすぐに見つめた。
⸻
アベル
「だから、君とサファイアに誓う。
私はもう義務ではなく、愛を学ぶ。
君と共に、そしてサファイアと共に──
本当の家族の愛を、知りたい」
⸻
キャスリンの胸が高鳴る。
彼女はそっと視線を逸らし、扇子で口元を隠した。
キャスリン
「……邪魔くさいことを言いますわね。
ですが──一緒に学んでいくのも、悪くはないかもしれません」
夜風が二人の間を吹き抜け、星々が一層輝きを増していた。
(愛の試練・条件の提示)
──公爵家・応接間。
テーブルを挟んで、キャスリンとアベルが向かい合っていた。
サファイアは庭で遊んでいて、二人きりの時間が与えられる。
⸻
キャスリン
「……殿下。先ほどの“愛を学びたい”というお言葉、確かに受け取りました。
ですが──口先だけでは、私は納得しません」
アベル
「……では、どうすれば?」
キャスリンは扇子を閉じ、真っ直ぐにアベルを見据える。
キャスリン
「結婚に際して、いくつか条件を取り決めます。
私が認められる“試練”を乗り越えられるかどうか──それで殿下の本気を見極めます」
⸻
アベルは息を呑み、真剣に頷いた。
アベル
「言ってくれ。どんな条件でも、受けよう」
キャスリンは一枚の紙を差し出す。
そこには几帳面な文字で書かれた取り決めが並んでいた。
⸻
キャスリンの条件(例)
1. 義務ではなく、日々サファイアに愛情を注ぐこと。
2. 政務においても、必ず“家族を守る選択”を第一にすること。
3. 私の読書と静かな時間を尊重すること。
4. 感情よりも契約を重んじる──ただし“愛”だけは誤魔化さないこと。
⸻
アベルは紙を手に取り、ひとつひとつ目を通した後、口元に苦笑を浮かべた。
アベル
「……まるで婚約契約の条文だな」
キャスリン
「当然ですわ。私にとって結婚は契約。
愛を口にするなら、その分だけ責任を果たしていただきます」
⸻
アベルは真剣に頷き、紙を胸に押し当てる。
アベル
「わかった。これが君の試練なら、必ず守り抜こう。
私は義務ではなく──愛として、この契約を果たす」
キャスリンは一瞬だけ瞳を揺らし、扇子を開いて小さく笑った。
キャスリン
「……さて、言葉通りにできるかどうか。楽しみにしていますわ、殿下」
(国王夫妻への報告)
──王宮・謁見の間。
キャスリンとアベルは揃って国王夫妻の前に進み出た。
キャスリンが差し出したのは、一枚の書面。
⸻
国王
「これは……婚約の条件、だと?」
アベル
「はい。キャスリンが提示し、私が受け入れた。
この契約を果たすことで、愛を学び、家族としての責任を果たしたいのです」
国王は眉をひそめる。
だが、先に口を開いたのは王妃だった。
⸻
王妃
「……まぁ。
愛し合うなら、こんな条件など必要ないはずですわ。
あなたたちは、まだ“愛”に不安を抱えているのかしら?」
キャスリンがわずかに目を伏せ、アベルは言葉に詰まる。
⸻
王妃は静かに続けた。
王妃
「すべて、ありのままでいいのではなくて?
愛は契約で縛るものではありません。
サファイアは……生きている人間なのよ。
条文に守られるより、心に守られるべき子どもでしょう?」
⸻
その言葉に、キャスリンの手が震えた。
アベルもまた、強く拳を握りしめる。
アベル(心の声)
「……私たちはまだ、愛を“信じ切れていない”。
だから契約で縛った……。
だが、本当に必要なのは──ありのままを受け入れることなのかもしれない」
⸻
王は重々しく頷いた。
国王
「二人よ……条件にすがるのではなく、己の心を示してみせよ。
それこそが“家族”を作るのだ」
(キャスリンの思索)
──公爵家・夜の私室。
机の上には婚約の条件を書いた書面が置かれ、窓から月明かりが差し込んでいた。
キャスリンは紅茶を前に、扇子を閉じたままじっと座り込んでいた。
⸻
キャスリン(心の声)
「……愛し合うなら、条件はいらない──王妃様はそう仰った。
確かにそうかもしれない。
けれど私は、愛を知らない。
知らないからこそ、形で縛るしかなかったのよ……」
彼女は書面に視線を落とし、指先でなぞる。
⸻
キャスリン(心の声)
「“義務ではなく、愛を注ぐこと”──そう書いたのは、私自身がそれを恐れていたから。
もし愛されなかったら? もし私がまた、捨てられたら?
……条件がなければ、不安で立っていられなかった」
⸻
窓辺に歩み寄り、月を見上げる。
サファイアの無邪気な笑顔が脳裏に浮かび、胸が締めつけられる。
キャスリン(心の声)
「サファイアは条文などなくても、私を“おかあさま”と呼んだ。
……それは条件ではなく、心が結んだ絆。
なのに私は、まだ……信じ切れていない」
⸻
キャスリンは小さく息を吐き、紅茶を口にした。
静かな夜の中、瞳にはわずかな揺らぎが残っていた。
キャスリン(心の声)
「……愛は、契約で守るものじゃない。
でも私には、どうしても怖いのよ」
(カナタとの対面)
──王家の塔、幽閉された部屋。
静かな扉を開けると、かつて第一王子だったカナタが座っていた。
やつれた顔で、それでも高慢さを失わぬ目をこちらに向ける。
⸻
カナタ
「……キャスリン? 何の用だ」
キャスリンは無言で横に立つサファイアの手を握り、前へ進めた。
小さな青い瞳が、カナタを真っ直ぐに見つめる。
⸻
サファイア
「……おとうさま?」
その声にカナタの表情が一瞬だけ揺らぐ。
だがすぐに視線を逸らし、苦く笑った。
カナタ
「……ふん。あの女の子か。
私の娘……なのか?」
⸻
アベルが静かに前に出て、サファイアを見つめる。
その目は確信を帯びていた。
アベル
「間違いない……この瞳、この立ち姿……
サファイアは、兄上の娘だ」
⸻
キャスリンは冷ややかに扇子を閉じ、言葉を告げる。
キャスリン
「殿下。あなたが捨てた“責任”がここにあります。
この子は必死に生きようとし、笑顔でしがみついてきました。
愛されることなく──それでも“生きたい”と」
サファイアがキャスリンの裾を握り、怯える声を出す。
サファイア
「……いや、おかあさま……わたし、すてられたくない」
⸻
アベルはサファイアを抱き寄せ、兄を睨んだ。
アベル
「兄上……あなたはこの子を愛さなかった。
だが私は、この子を“娘”と呼び、守り抜く。
それが私の愛の形だ」
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