夫と息子に捨てられたので、全部置いて出て行きます。明日から、タオルがなくても知りません。

夢窓(ゆめまど)

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騎士団の夜に

騎士団の夜合宿で、いろいろ教えてもらった。
衝撃だった。
知ってしまった、いろいろと、
大人の夜。
というか、男の合宿では、そういう話しかしない。

父さんは、アンナさんを気の毒な未亡人だと、僕に言っていた。

でも、みんなから聞いたら。
父さんは、アレやる気があったらしい。
だって、普通、嫁さん怖いから、家のものそんなに、持ち出さないもんな。
なんせ父さんは、現役だから。
浮気って、見えなくなるのよ。すべてが、それだけになるんだろう。

ハロルド様は、もしかしたら枯れているかもしれないけど、そこまではよくわからないとか、いろいろ、枯れてる?何が?

なんとなく、わかってきた。
アンナさんに、父さんが、優しい父アピールのために、僕を連れて行ってくれたんだろう。

あわよくば、父さんとアンナさんと僕で、新しい家庭を作りたいとか。

ないないないない。
絶対ない。

父さんは、母さんをすごく傷つけていたんだ。
理由を知って、僕も傷ついた。
子供だって、成長して理由がわかったら、傷つくんだよ。
誰も、そこを気にしてくれなかったけど。​​​​​​​​​​​​​​​​

ハロルドのプロポーズ
風が気持ちいい午後だった。
二人で庭を散歩していた。
ハロルド様が、急に立ち止まった。
「ジュリア、結婚申し込んでいいだろうか」
「はい」
間髪入れずに、答えた。
ハロルド様が、固まった。
「え、はいって言ったのか?」
「申し込んでいただいたので、はいと言いましたよ。それが、どうしたんですか?」
「いや、こんなにあっさり受けてもらえるとは」
ジュリアは、少し笑った。
「わかってました」
「何を」
「あなたの、深い愛に」
ハロルド様が、黙った。
「だから、お答えして。それから、一緒に苦労しようかなって、思って」

ハロルド様が、もう一度、真剣な顔をした。
「ジュリア、結婚して私の妻になってくれ」
ジュリアは、静かに頷いた。
「はい、よろしくお願いします」

風が、二人の間を通り抜けた。
庭の花が、静かに揺れた。​​​​​​​​​​​​​​​​

「すごいね。ハロルド様のプロポーズ、受けたんだ」
ケインが言った。
「鈍いって言われても」
母さんが、笑った。
「子供が二人もいるんだから、それぐらいの好意には気づきますよ」
「じゃあ、気づいてたんだ」
「ずっとね」

母さんが、笑って続けた。
「でも、ここで断ったら、後悔すると思ったから」
「うん」
「受けてから、苦労しようかなって」
少し間があった。
「ダメならケインには言って、夜逃げするわ」
「夜逃げ?」
「まあ、たとえばよ。しないけど」

ケインは、母さんの顔を見た。
穏やかだった。
父さんの家を出ていったあの夜とは、全然違う顔だった。
「母さんらしい」
母さんが、また笑った。​​​​​​​​​​​​​​​​

ハロルド様と、母さんは、結婚した。
身内だけの、簡単な式だった。
特に大きな問題がなかったのは、2人の関係は、みんな知ってて、応援してたからだと思う。

そして、僕は、十七歳になった。

リチャード様の側近候補が集まった。
なぜか、僕も入っている。
学校では、学年が違うから一緒にいない。三年生の僕と、一年生のリチャード様。昼休みに王子様専用の食堂で出会う。

その時間、僕はリチャード様のランチのサーブをする。卒業後も、多分この仕事続けると思う。
夜は、王宮の調理室でシェフとして働いている。
学生だけどね。
忙しく働いている。

ハロルド様は、側近でも、シェフでもいいと言ってくれている。

最近、ハロルド様は娘に夢中だ。
三人目が生まれた。
ローリーも、可愛がっている。子煩悩なパパになった。自分の子ができるなんてと、最近涙脆い。
生まれたてのマルグリットは、まだふにゃふにゃだ。

ローリーは、もう7歳になった。
お屋敷の厨房に来ては、ケインにまとわりつく。
困るけど、可愛いから、仕方ない。​​​​​​​​​​​​​​​​

リチャード様の側近候補は、三人いた。
僕以外の二人は、高位貴族の息子だった。

僕が王宮のシェフというのに、二人は戸惑っていた。
側近候補が、なぜ厨房にいるのかと。

でも、僕は思う。
シェフは、王族にとって大切だ。
毎日食べるものを作る。体を作るのは、食事だ。毒を盛られないように守るのも、信頼できるシェフがいるからだ。
それに、美味しいものを食べたら、人は笑顔になる。
リチャード様が、昼に食堂で笑顔になるのを、毎日見ている。

だから、食事を守る。
それが、僕の側近としての仕事だと思っている。​​​​​​​​​​​​​​​​


ある定期的ないつもの騎士団の夜の集会だった。
焚き火を囲んで、男だけの話が続いていた。
ハロルド様は枯れていないと、詳しく聞かされるケイン。
なるほど、ブランクは大丈夫なんだと。
ふむふむ。
乗馬と一緒で、乗れば体が思い出すらしい。その頃は、そういうのも理解できるようになっていた。

ふと気づいたら、この場所にリチャード様がいた。
見たら、側近候補の二人もいた。
なんでここに。

リチャード様が、声を落として言った。
「皆に相談がある」
場が、静かになった。
「婚約者ができた。かわいい女性だ」
「おお、おめでとう御座います。」
「だが、王族としては閨教育をと言われた。教えてくれるという女性は、かなり年上なんだが、どうしたらいいかな」

「おおおーーー!」
騎士団の夜に相応しい話題です、殿下。
あれやこれやと、男達の話、初めての体験話は続いた。妄想も混じった。収拾がつかなくなってきた。

結果、リチャード様は閨教育を断ることにしたらしい。
なぜそうなったかは、愛とロマンの、男の、ある。​​​​​​​​​​​​​​​ある。ある。
妄想話は、一晩中続いた。

他の高位貴族の側近候補達は、黙って聞いていた。最初は、夜の話題に、びっくりするんだよね。
なぜかリチャード様は、最初からこの雰囲気に馴染んでる。

次の日、朝の稽古が始まった。
練習時間は早い。
リチャード様は、頑張って起きてきた。他の二人は、まだ寝ぼけている。目が半分閉じたまま、剣を持っている。

僕は、朝練は、慣れているから、ロウエルさんと打ち合いをしていた。
ロウエルさんは、手加減しない。最初の頃は、毎日ぼろぼろだった。でも、気づいたらついていけるようになっていた。
この前の学校の剣術大会では、僕は、優勝した。
戦えるコックだ。

三人が、それを見ていた。
寝ぼけていた二人の目が、少し開いた。
リチャード様が、まっすぐ僕を見て言った。
「ケイン、私を鍛えてくれ」
僕は、剣を下ろした。
「かしこまりました」​​​​​​​​​​​​​​​​

僕の王宮での生活は、充実していた。
リチャード様の側近で、王宮のシェフ。二つは大変だけど、頑張っている。

最近、女子にモテるようになった。
ラブレターも、もらった。
騎士団の夜合宿で、いろいろ教わったから、そういうのも、これからだ。

そして、父さんとは、あれから会っていない。
刑務官として、島にいるはずだ。
会いに行こうとは、思わない。
でも、元気でいてほしいとは思う。

それぞれが、元気なら、それでいい気がする。

母さんは、ハロルド様と結婚して幸せそうだ。
ローリーは、今日も厨房に来た。
この頃は、クッキーを作るのが好きらしい。クマさんとウサギさんの型抜きしてる。
僕は、最近、賄いの献立を考えている。
王宮は、今日も慌ただしく動いている。​​​​​​​​​​​​​​​​

これで、おしまい 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また、たくさんのご感想をいただき、励みになりました。

すべてにお返事できず申し訳ありません。
お返ししていると、ネタバレになってしまう部分もあったため、この形とさせていただきました。どうかご了承ください。

そして――
次回作のご案内です。

『家を乗っ取られそうだったので、夫を募集したら――いいのを引き当てました。
契約夫婦、ただいま発酵中。』

現在制作中ではありますが、
金曜日より投稿開始予定です。

少しでも気になっていただけましたら、
ぜひ次作でもお付き合いいただけると嬉しいです。
感想 119

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みんなの感想(119件)

くーちゃん
2026.04.21 くーちゃん
ネタバレ含む
解除
さえりんこ
2026.04.20 さえりんこ
ネタバレ含む
解除
太真
2026.04.20 太真
ネタバレ含む
解除

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