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4話
しおりを挟む私の父、エバス・ロン・ハールブルクが反逆者として逮捕されたことは、国内の貴族社会を震撼させる出来事だった。
さらに一部の貴族からは、私、シャル・イン・ハールブルクが自分の家を裏切り、国家に暴露して自分だけ助かった、まさに極悪非道の悪役令嬢という、消えない烙印を押されたようなものだった――。
シャルは、薄暗い地下へと続く階段を降りていく。
壁や床は、砲撃でも破壊されない頑丈な岩でできていて、手で触れるとひんやりと冷たく、自分の心の温度に近い気がした。
しかし、壁に掲げられた松明の温かさと小さな炎が、シャルの姿を長く影として映し出す。
そして、シャルのヒールの音だけが響く。
「なんだ、お前か……自ら実家を見捨てた気分はどうだ?」
「清々しい気分ですわ……お父様」
そう、私は実の父が捕らわれている牢獄にいる。
その父は、いつもと変わらない風格を保ちながら、冷たい床にあぐらをかいて座っていた。
「シャルよ、ハールブルク家の新しい当主はお前が継げ」
「嫌と言ったら?」
エバスは、凛とした表情でシャルを見つめる。
「なら、ハールブルク家は貴族と爵位を剥奪されて一般人になるまでよ……」
やんわりとした誤魔化し方だが、シャルは知っている。
貴族の身分を剥奪された家は普通なら一般人として生活できるが、謀反を企てた貴族は違う。
おそらく貴族剥奪はもちろん、男性は極刑……女性は、辱められる運命だろう……。
シャルは両手の拳を強く握りしめ、指の間から赤い水滴が小さく、ぽたりと床に落ちた。
父のエバスは目を閉じ、何も言わずに佇んでいる。
「あたしは悪役令嬢のシャル・イン・ハールブルクよ。なら悪役令嬢らしく、実家の面倒は見ますわ!」
シャルは鉄格子の中のエバスに背を向け、去っていく。
(お父様……あたしは貴方の娘で誇らしいです。せめてもの償いをするなら、最後まで気高い悪役令嬢としてのシャル・イン・ハールブルクを演じきります……)
「お父様……大好きです」
シャルは誰にも気づかれないよう、小さく囁いた。
「もういいのか?」
地下の階段を上がり、地上の入口に出ると、シャルの目の前には愛するケイヤが待っていた。
「えぇ、大丈夫……」
ケイヤはシャルが両手を背中に回しているのに気づき、柔らかい細い片腕を掴んで手のひらを見た。
シャルの手のひらは真っ赤になっていた。
拳を握りしめすぎた力がどれほど強かったかを物語るように。
「見ないで……これは転んだだけ……」
「転んだにしては、ドレスは綺麗だな……」
ケイヤはシャルの片腕を握ったまま、もう片方の腕で腰を抱き寄せ、優しく抱きしめた。
「お願い……今は優しくしないで……」
「ああ、わかった」
シャルの目からは大粒の涙が止まらなかった。
ケイヤは何も言わずに、ただ優しく抱きしめ続けた。
二人は夕焼けの光に照らされ、外の木々の葉が優しい微風に揺れると、シャルの黒髪も揺れて涙を隠すようにしていた――。
ケイヤはシャルの肩を優しく抱いて屋敷へと一緒に帰り、シャルの専属従者ハナヨを呼び、シャルの手のひらの治癒をさせて、夜は過ぎていく。
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