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第5話 家路を急ぐ
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う~ん、体が痛い。
私が目覚めたときの感想がこれだった。
床で寝たっけ?
目をつぶったまま、スマホを手探りで探した。
いつもならスマホを掴んでいだはずだけど、今日は何やら勝手がちがう。
……草?…どこで寝たっけ?
億劫だけど目を開けた。
……公園?
目を開けたら知らない男が隣で寝ていた。なんて話は聞いたことがあったけど、公園で寝ていたなんて話は、女子の間では聞いたことがなかった。
違う!ここは違う所!
一気に覚醒し、身を起こした。
やっちゃった寝過ごした。今何時だ?
そんな事を思っても、時計なんて持っていない。辺りはとっぷりと日が暮れていて、どの位の時間帯なのか検討もつかなかった。
帰らないと。親御さんが心配している。
私は立ち上がり、帰り道を探した。が、眠りにつく前と場所が違う。ブナの木の所で寝たはずだけど、その木はないし、周りにあった池も姿を消していた。参道すらなく、寝ていた場所は森の外だ。
なんで場所が違うの?
私は眠りにつく時の事を思い出そうとした。
確か、あの時、誰かと話をしたはず。話をしたという記憶はあるんだけど、思い出しそうになると、記憶が逃げていく。
これではまるで、夢を思い出そうとしている時みたい。というか、夢なの?
いや、とにかく帰ろう。
帰り道があるわけではないけれど、来る時には森を右手にして進んで来たんだから、帰りはその逆に進めばいいだけ。迷うことはないはず。
私は歩きだした。
太陽が沈んだ方の空には、満月が輝いている。
元の世界では気付かなかったが、月明かりというのは結構明るい。夜道でも普通に歩けることに驚いた。また、日本と違い平地なので、月明かりが遮られる心配もなかった。
そうだ、星!
昼間考えた事を思い出して、食い入るように空を見つめた。こんな満月の夜でも、星座を構成する1等星は十分に見える。何でもいいから知っている星座はないか?
…ん?んん?ないぞ。
まじか。ここ違う世界じゃん。いや、タイムスリップでも、そんなに大した違いはないのだけれどね。
私は、怖いくせにワクワクするような、高揚感に満たされた。
元の世界から見れば完成されていないこの世界では、可能性は無限にあるんじゃない?植物を調べて植物学者になれるかもしれないし、星を調べて天文学者にも、根気よく頑張ればエジソンにも匹敵する発明王にも、そして上手くいけば、夢にまで見た一国一城の主に、なれるかも!
く~、夢が広がった♪
気持ちは軽く、足取りも軽く、どんどん進む事ができたけど、前方に浮かぶ雲が、不自然に赤く光っているのが見えてきた。
さっきまで雲がなかったから気付かなかったけれど、あれは火事じゃない?
まさか、家じゃないよね。
私は走り出した。
家が見えてきた。見覚えがあるから間違いない。
家が燃えてたんじゃなかった。
「ただいま…」
戸を開けると、今朝の女性と見知らぬ男性が私の方を見た。
「アンナ、どこに行ってたのね」
女が空でも飛びそうな勢いで、私に駆け寄った。
「ごめんなさい。探検をしていたら、いつの間にか寝ちゃって」
「暗くなる前に帰ってきなさいって、いつも言ってるのに」
「とにかく、何もなくて良かった。」
男性が女性を落ち着かせるような口調で話した。
「二人共、心配を掛けてご免なさい。次からはちゃんとします」
私の言葉を聞いた二人は顔を合わせた。
「なんだかお姉さんになったみたいだな」
しまった。安心させようと言ったのだけど、かえって不審に思われたかも。でも、アンナの言葉遣いなんて知らないし、こればっかりはどうすることもできない。
むしろ、この両親とおぼしき二人に不審に思われないように生活することなんてできるの?
いや、体はアンナ本人なんだから、不審に思われても、確かめようがない。
ここで私は、ようやく疑問に思った。本物のアンナの意識はどこに行ったのだろう。
私と意識の入れ替わりをしようにも、私の元の体は生きてはいないだろうし…。
「よし、教会に行こう」
男の声で我に返った。
「アンナ、これ持ってて」
女性はそう言うと、竈から火の着いた薪を私に1本手渡し、スコップのようなもので竈の中に砂を投げ入れて消化している。
私は手に持った薪を眺めた。これは薪ではなくて、松明だ。それほど大きな火ではないのに、かなり熱かったので、できるだけ顔から離した。
「ありがとうアンナ。お父さん行こうか」
女性は私から松明を受け取り外に出た。
先程まで煌々と輝いていた月も、今は雲ですっかり覆われていた。
私は改めて二人の大人を見上げた。
この人たちが私の両親なんだ。
お母さん、お父さん…か。
別に私が悪いわけではないのに、二人に対して申し訳ない気持ちが湧き上がってくる。
「どうしたの?」
私の視線に気付いた母が問いかけてきた。
「いや、教会で何があるのかなって思って」
「集合の鐘が鳴ったのよ」
「こんな夜に?」
「あの火事と関係があるかもな」
「火事は消さないの?」
「そんな事、しないわよ」
「何もしないの?」
「だって危ないでしょう」
確かにそれはそうだけど、放っておいて大丈夫なのかな。
「燃える物が無くなったら、消えるから大丈夫よ」
私と母の会話を聞いていた父が、急ぐぞと急かしてきた。
「急ぐなら走ろう」
私はお母さんの手を引いて走った。
教会に着いた時には、私が松明を持っていた。両親は私の体力に驚いていたが、元いた世界でも子供の体力は無尽蔵だった気がする。
教会は三角屋根を持つ四角を基準とする石造りの建物で、私は積み木で作ったような建物だなと思った。
入口の扉の上に四葉のクローバーに似たデザインのマークが掲げられている。
中に入ると総勢100人程の老若男女が集まっていて、それぞれが、それぞれの話をしている。
「これで全員なの?」
「そうね。私達が最後だったみたい」
意外に人口が少ない。
「皆さん、よくぞ集まってくれました」
教会の奥の方から、よく響く声がした。見ると、いかにも神父らしい40代とおぼしき男性が立っている。
「皆様に悲しいお知らせをしなければなりません。村長様が殺されました」
教会を沈黙が支配した。
私が目覚めたときの感想がこれだった。
床で寝たっけ?
目をつぶったまま、スマホを手探りで探した。
いつもならスマホを掴んでいだはずだけど、今日は何やら勝手がちがう。
……草?…どこで寝たっけ?
億劫だけど目を開けた。
……公園?
目を開けたら知らない男が隣で寝ていた。なんて話は聞いたことがあったけど、公園で寝ていたなんて話は、女子の間では聞いたことがなかった。
違う!ここは違う所!
一気に覚醒し、身を起こした。
やっちゃった寝過ごした。今何時だ?
そんな事を思っても、時計なんて持っていない。辺りはとっぷりと日が暮れていて、どの位の時間帯なのか検討もつかなかった。
帰らないと。親御さんが心配している。
私は立ち上がり、帰り道を探した。が、眠りにつく前と場所が違う。ブナの木の所で寝たはずだけど、その木はないし、周りにあった池も姿を消していた。参道すらなく、寝ていた場所は森の外だ。
なんで場所が違うの?
私は眠りにつく時の事を思い出そうとした。
確か、あの時、誰かと話をしたはず。話をしたという記憶はあるんだけど、思い出しそうになると、記憶が逃げていく。
これではまるで、夢を思い出そうとしている時みたい。というか、夢なの?
いや、とにかく帰ろう。
帰り道があるわけではないけれど、来る時には森を右手にして進んで来たんだから、帰りはその逆に進めばいいだけ。迷うことはないはず。
私は歩きだした。
太陽が沈んだ方の空には、満月が輝いている。
元の世界では気付かなかったが、月明かりというのは結構明るい。夜道でも普通に歩けることに驚いた。また、日本と違い平地なので、月明かりが遮られる心配もなかった。
そうだ、星!
昼間考えた事を思い出して、食い入るように空を見つめた。こんな満月の夜でも、星座を構成する1等星は十分に見える。何でもいいから知っている星座はないか?
…ん?んん?ないぞ。
まじか。ここ違う世界じゃん。いや、タイムスリップでも、そんなに大した違いはないのだけれどね。
私は、怖いくせにワクワクするような、高揚感に満たされた。
元の世界から見れば完成されていないこの世界では、可能性は無限にあるんじゃない?植物を調べて植物学者になれるかもしれないし、星を調べて天文学者にも、根気よく頑張ればエジソンにも匹敵する発明王にも、そして上手くいけば、夢にまで見た一国一城の主に、なれるかも!
く~、夢が広がった♪
気持ちは軽く、足取りも軽く、どんどん進む事ができたけど、前方に浮かぶ雲が、不自然に赤く光っているのが見えてきた。
さっきまで雲がなかったから気付かなかったけれど、あれは火事じゃない?
まさか、家じゃないよね。
私は走り出した。
家が見えてきた。見覚えがあるから間違いない。
家が燃えてたんじゃなかった。
「ただいま…」
戸を開けると、今朝の女性と見知らぬ男性が私の方を見た。
「アンナ、どこに行ってたのね」
女が空でも飛びそうな勢いで、私に駆け寄った。
「ごめんなさい。探検をしていたら、いつの間にか寝ちゃって」
「暗くなる前に帰ってきなさいって、いつも言ってるのに」
「とにかく、何もなくて良かった。」
男性が女性を落ち着かせるような口調で話した。
「二人共、心配を掛けてご免なさい。次からはちゃんとします」
私の言葉を聞いた二人は顔を合わせた。
「なんだかお姉さんになったみたいだな」
しまった。安心させようと言ったのだけど、かえって不審に思われたかも。でも、アンナの言葉遣いなんて知らないし、こればっかりはどうすることもできない。
むしろ、この両親とおぼしき二人に不審に思われないように生活することなんてできるの?
いや、体はアンナ本人なんだから、不審に思われても、確かめようがない。
ここで私は、ようやく疑問に思った。本物のアンナの意識はどこに行ったのだろう。
私と意識の入れ替わりをしようにも、私の元の体は生きてはいないだろうし…。
「よし、教会に行こう」
男の声で我に返った。
「アンナ、これ持ってて」
女性はそう言うと、竈から火の着いた薪を私に1本手渡し、スコップのようなもので竈の中に砂を投げ入れて消化している。
私は手に持った薪を眺めた。これは薪ではなくて、松明だ。それほど大きな火ではないのに、かなり熱かったので、できるだけ顔から離した。
「ありがとうアンナ。お父さん行こうか」
女性は私から松明を受け取り外に出た。
先程まで煌々と輝いていた月も、今は雲ですっかり覆われていた。
私は改めて二人の大人を見上げた。
この人たちが私の両親なんだ。
お母さん、お父さん…か。
別に私が悪いわけではないのに、二人に対して申し訳ない気持ちが湧き上がってくる。
「どうしたの?」
私の視線に気付いた母が問いかけてきた。
「いや、教会で何があるのかなって思って」
「集合の鐘が鳴ったのよ」
「こんな夜に?」
「あの火事と関係があるかもな」
「火事は消さないの?」
「そんな事、しないわよ」
「何もしないの?」
「だって危ないでしょう」
確かにそれはそうだけど、放っておいて大丈夫なのかな。
「燃える物が無くなったら、消えるから大丈夫よ」
私と母の会話を聞いていた父が、急ぐぞと急かしてきた。
「急ぐなら走ろう」
私はお母さんの手を引いて走った。
教会に着いた時には、私が松明を持っていた。両親は私の体力に驚いていたが、元いた世界でも子供の体力は無尽蔵だった気がする。
教会は三角屋根を持つ四角を基準とする石造りの建物で、私は積み木で作ったような建物だなと思った。
入口の扉の上に四葉のクローバーに似たデザインのマークが掲げられている。
中に入ると総勢100人程の老若男女が集まっていて、それぞれが、それぞれの話をしている。
「これで全員なの?」
「そうね。私達が最後だったみたい」
意外に人口が少ない。
「皆さん、よくぞ集まってくれました」
教会の奥の方から、よく響く声がした。見ると、いかにも神父らしい40代とおぼしき男性が立っている。
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