城好きのアンナ〜すべての城を制覇します〜

chui

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第11話 戦いの後

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 神父が指揮を取り始めると、ものごとがスムーズに運んだ。
 まず、大人たちを呼び戻すために、鐘を正式な方法で鳴らした。
 私の力については、まだ不安に思う人がいたので、悪魔や神の力ではなく、魔法によるものだと説明した。
 ダスティン達は盗賊で、鐘の音を聞いて教会に来たところ老人子供しかいなかったので、人質にして金品を巻き上げようとしていたと発表した。
 その他、些末なことも含めて、問題が見つかる度に神父が手際よく処理した。
 「アンナ様、私のことはウォルフとお呼び下さい」
 私は神父の言葉を思いだしていた。今までの関係性もあるし、先の経緯もあるのに、アンナ様だの、ウォルフだのと呼べないでしょ。
 その事を伝えると、臣下としてそれは受け入れられないと拒絶し、もしも主従関係を解消するなら、貴女の力は悪魔のものだと公表する。と、遠回しに脅してきた。
 結局お互いの呼び名については、村人の前では今まで通りという事に落ち着いたが、ノノさんの前では臣下の関係性で呼び合うことになった。もちろん私は反対したんだけど…。
 「ノノちゃんは仲間ですから、構わないでしょ。おや?仲間ではないのですか??」
 そんな風に言われてしまい、そうなってしまった。
 ウォルフの声が聞こえる。戻ってきた男達に、教会で起こった事を話し始めたようだ。
 松明に照らされている彼の顔を見ていると、私を襲ってきた人物と同じ人とは思えない、心底優しい人に見える。
 どちらが本当の彼なのだろう。
 彼は、私の視線に気付くと、大仰しく私の方へ手を伸ばした。みんなが一斉に私の方を見る。私は、うつむいた。
 人の目に、さらされるのは、苦手なんだよね。
 「アンナちゃん、あっちに行こうか」
 ノノさんが、教会の裏の方へ、私をエスコートしてくれた。
 さすがノノさん。ナイスフォロー。
 でも、それは、私のためだけじゃなかったみたい。
 「私、神父さんがあんな人だとは知らなかった…」
 そう話すノノさんに、笑顔はない。
 私のような幼子に大人の、しかも神父が襲ってきたのたのだから、ショックを受けたに違いない。
 ノノさんだって、あんな奴見たくないよね。
 「ごめんね」
 「ノノさんが謝ることなんかないよ」
 「…わたし、アンナちゃんが顔を押さえられているとき、見ていたのに、助けに行けなかった」
 やっぱり近くに居たんだ。【稲妻】を使わなくて良かった。
 「ノノさん、正直に話してくれてありがとうね。怖かったでしょう」
 「怖かったけど、アンナちゃんを助けなきゃって思って、けど、動けなくて」
 「普通の人だったら逃げてるよ。謝るにしても、おどけながら言うだろうし。でも、ノノさんは違う。私にちゃんと向き合って話してる。本当に勇気があると思う」
 ノノさんの目の光沢が増した。形の良い唇が、きゅっと強く結ばれる。
 「なんで、そんなこと、言うの…」
 彼女はそう言うと、私に抱きついた。目から光の妖精が翔び立ったに違いない。
 これでは昨夜と、あべこべだ。
 けれど、悪い気はしない。むしろ、喜びさえ感じている。だって、昨日から支えてもらってばかりだもんね。優しさのお返しだ。
 私はノノさんの背中を、やさしく擦った。
 ヒクヒクしながら泣いているノノさんは、忘れていたけれど12、13歳の女の子だ。7歳位の女の子の前では、お姉さんとして頑張っていたに違いない。
 ウォルフを前にして動けなかったのも、ダスティンの時に死にかけたからだ。そんな経験をしてもなお、私と接してくれている。
 本当に強い人だ。
 「お前ら何やってんだ?」
 離れた所から声が掛かる。この声は…テオだ。
 「ちょっと顔を洗ってくるね」
 そう言うとノノさんは、立ち上がっり、テオいない方へ歩きだした。
 せっかくノノさんと素敵な時間を過ごしていたのに、こいつは本当にタイミングの悪い奴だ。
 「なに、おんな同士で抱き合ってんだ~?」
 「うるさいな。そんなに時だってあるんだよ」
 「なに怒ってんだよ」
 あ~、ホントにムカつく。
 「おばちゃんに言われて、お前を呼びに来たんだ。来いよ」
 そう言って、私の手を引っ張る。
 こいつ、なんで人の手を握っているんだ。馴れ馴れしいヤツ!
 思わず手を振りほどいてしまい、けげんな表情をしたテオが振り向く。
 「…お前、昨日から変だぞ」
 アンナと一番仲が良かったのがテオだったのかもしれない。彼の顔に、悲しみの色が混じってきた。
 「ごめんね、テオ。魔法を使ってから、体が敏感になっちゃって、強く握られると痛いんだ」
 「早く言えよ」
 そう言うと小指を突き出し、これをつかめ、と言ってきた。
 これは、あれに似ている!
 小学生の頃、お遊戯で男子と手を繋がなくてはならない時に、手を握るのが恥ずかしくて、小指だけを絡めて手を繋いだことにしていた。
 今となっては、小指だけを絡めた方が、逆に恥ずかしいけど。
 やさしく掴んでくれればいいからと、私は手を差し出した。それをテオは無言で握って、歩きだした。
 黙っていれば、いい子なのにね。
 「おばちゃん、アンナ連れてきたよ」
 私は両親の前に連れてこられた。二人は複雑な表情をしている。
 「ありがとうテオ。またアンナと仲良くしてね」
 母からそう言われると、彼は自身の祖母のところに向かった。
 「…アンナ、大変だったね」
 「色々とありすぎて、よくわからない」
 子供としての立ち振舞いがわからない。特に、この両親もどう接していいのかわからない。
 父が口をひらいた。
「神父さんが話したいそうだ」
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