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第24話
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すっと目が覚めた。
見上げる天井には太い梁が見える。自分の家の天井ではない。ここはどこだっけ?
自分がどこに居るのかわからずに目が覚める時が、たまにある。
なぜ、こんな錯覚めいた目覚めをするのか、興味があるけど私では解明できないだろうなぁ。
私は、まどろんでいる思考のなか、ここがどこなのか思い出そうとしたが、思い出せそうで思い出せない。それを何回か繰り返した。
…ああぁ、リーベリだ。アイユークの部屋で寝たんだ。
頭にようやく血が巡り、しっかりとした思考ができるようになってきた。
「文献」
気分的には大声を出したはずだが、実際にはそれほど大きな声ではなかった。上半身をよじるようにして起こす。
隣のベッドではノノさんが気持ちよさそうに寝ている。可愛い。
私はそっとベッドから抜けた。
抜き足差し足で部屋を移動する。アイユークの部屋には、ガラス窓が一箇所だけだけ設置してある。丸い柄がたくさんあるガラスを使た変わった窓だ。近くで見ると丸い柄だと思っていた物は、日本酒なとの瓶底の丸い部分を並べて、それを金属で縁取りしたような作りになったている。元の世界では、ロンデルガラスというのだけど、私は知らないです。
そのガラス窓越しに空が紫色になっていて、日の出の時間が近いことがわかる。
そういえば、私達にあてがわれた部屋は、ガラス窓ではないけれど、ここから侵入されたんだよね。敵が誰かは知らないけれど、彼らがその気になればアイユークの命すら狙えるってこと?
私は不安と興味の二重奏でガラス窓を外しにかかった。
戸の縁は金属で作られている。私達の使った客間の戸は木製だったので、それに比べると頑丈に作られている。
少し触ると窓の構造が分かってきた。
窓は日本で言うところの、ふすまと同じようなはめ込み式になっている。はめ込む際に、窓が外に落ちないように、外壁の横幅が若干狭く作られている。
この部屋の窓では、それ自体が重いので簡単に取り外す事はできないけど、客間の方は木製なので、それほど苦労しないで取り外せると思う。
「何をしている」
背後から、いきなり声をかけられた。
心臓の止まる思いをしつつ振り返ると、アイユークがこちらを見ていた。
「ごめんなさい」
こんな時は、謝るしかない。どう見ても怪しい動きをしていたのは私だ。
「アンナさんでも、そんなに驚くのですね」
邪気なく笑うその姿は、相変わらず子供のもので、見ていた私は健やかな怒りが湧き上がってきた。
「わざと驚くように声をかけましたねっ」
怒ったふりをするように、私は頬を膨らませた。
「せっかくのかわいい顔が台無しですよ」
どうせ、私は可愛くないからね。
私は感情が膨らむのと同調するように、さらに頬を膨らませた。
それから数時間後、ノノさんの笑い声がこだました。
「そんなに膨らんでいたんですか?」
アイユークが早朝の事をノノさんに話し、朝食に彩りを添えていたからだ。
「アンナちゃん、ほっぺたを膨らませすぎると、そういう顔になっちゃうよ」
私は反論も兼ねて、そんなに膨らませていないと実演してみせた。まあ、ノノさんを笑わせようと、朝よりも誇張して膨らませてはいたけど。その膨らんだほっぺたを、ノノさんは自身の手でサンドした。当然、私の口からは食事時には似合わない音を立てて空気が漏れる。
「アンナちゃん、はしたない」
え~!?、ノノさんがやったんじゃん。
「アンナさんには、私に対する不敬罪を問うことにしましょ」
アイユークまで悪ノリをしてきた。あなたの立場上、ソレ、冗談になりませんから。
私は、ともかく謝った。その様子が面白かったらしく、眼の前にある二人は、さらに笑い声を高めた。
食事が終わったときに、私はアイユークにコーヒーなどの嗜好品について尋ねたが、ウォルフのときと同様で残念ながら知らないとの答えだった。
「アンナさん、そういった話をもっと聞きたいですね」
アイユークは溢れんばかりの好奇心を、自身の目から光として放出していた。
私は、夢の話なんですが、と前置きをしてから、2日前の夜にノノさんに話した船や飛行機、スマホなどの話を聞かせた。
「全部、夢なんですけどね」
最後に念押しで、夢であることを強調した。
「そのエンジンや電波というものは、アンナさんには作れないのですか」
私は知識がなくて無理ですと、すぐさま答えた。そもそも石油などの燃料もない。電波なんてどうやって作っているのかさえ知らない。
「知らないと言うことで、何かの交渉材料に使ってますか?」
いやいや、まってよアイユーク。そんな疑いの目を私に向けないで。
「アイユーク様、アンナちゃんに知識とその気があったら、こんな便利なものがある、とすでに交渉をしていますよ」
ノノさんの言葉で、アイユークの表情は緩んだ。
「ノノさんの言うことはもっとですね。では何か思い出せるまで、文献はおあずけにしましょう」
今、なんて言った?おあずけって言ったよね。ひどい。それはないよ、アイユーク。
私は反論をしようとしたが、その前にアイユークが続けた。
「…と言いたいところですが、約束は守ります。どうか片鱗だけでも思い出せたら、ご教授願いたい」
自領の豊かさを求める為なのはわかっているんだけど、アイユークの立ち振舞を見ていると、哀れに思えてきた。
私は有効な技術などを思い出したら、すぐに報告をすると約束をし、まずは麦の改良から初めましょう、と締めくくった。
リーベリには何よりも食べ物が足りない。これをなんとかしなければ、この先の成長はありえない。
食べ物が増えれば人も増え、色々な才能を持った人も増える。それらの人々は多様な技術を生む土壌になるだろうし、ここに暮らす人々が、現代人と同じ人である以上、きっかけさえあれば自力での産業革命もありうる。
私のようなまがい物ではなく、本当の意味で知識を持った人、いや知識を作り出す人が出てくる事は間違いない。
それにはしっかりとした教育機関が必要になるのかな…。
知識人の増加は特権階級の排斥に繋がっていくかもしれない。アイユークはそのことをどう思うかな。
私は判断できないでいた。
見上げる天井には太い梁が見える。自分の家の天井ではない。ここはどこだっけ?
自分がどこに居るのかわからずに目が覚める時が、たまにある。
なぜ、こんな錯覚めいた目覚めをするのか、興味があるけど私では解明できないだろうなぁ。
私は、まどろんでいる思考のなか、ここがどこなのか思い出そうとしたが、思い出せそうで思い出せない。それを何回か繰り返した。
…ああぁ、リーベリだ。アイユークの部屋で寝たんだ。
頭にようやく血が巡り、しっかりとした思考ができるようになってきた。
「文献」
気分的には大声を出したはずだが、実際にはそれほど大きな声ではなかった。上半身をよじるようにして起こす。
隣のベッドではノノさんが気持ちよさそうに寝ている。可愛い。
私はそっとベッドから抜けた。
抜き足差し足で部屋を移動する。アイユークの部屋には、ガラス窓が一箇所だけだけ設置してある。丸い柄がたくさんあるガラスを使た変わった窓だ。近くで見ると丸い柄だと思っていた物は、日本酒なとの瓶底の丸い部分を並べて、それを金属で縁取りしたような作りになったている。元の世界では、ロンデルガラスというのだけど、私は知らないです。
そのガラス窓越しに空が紫色になっていて、日の出の時間が近いことがわかる。
そういえば、私達にあてがわれた部屋は、ガラス窓ではないけれど、ここから侵入されたんだよね。敵が誰かは知らないけれど、彼らがその気になればアイユークの命すら狙えるってこと?
私は不安と興味の二重奏でガラス窓を外しにかかった。
戸の縁は金属で作られている。私達の使った客間の戸は木製だったので、それに比べると頑丈に作られている。
少し触ると窓の構造が分かってきた。
窓は日本で言うところの、ふすまと同じようなはめ込み式になっている。はめ込む際に、窓が外に落ちないように、外壁の横幅が若干狭く作られている。
この部屋の窓では、それ自体が重いので簡単に取り外す事はできないけど、客間の方は木製なので、それほど苦労しないで取り外せると思う。
「何をしている」
背後から、いきなり声をかけられた。
心臓の止まる思いをしつつ振り返ると、アイユークがこちらを見ていた。
「ごめんなさい」
こんな時は、謝るしかない。どう見ても怪しい動きをしていたのは私だ。
「アンナさんでも、そんなに驚くのですね」
邪気なく笑うその姿は、相変わらず子供のもので、見ていた私は健やかな怒りが湧き上がってきた。
「わざと驚くように声をかけましたねっ」
怒ったふりをするように、私は頬を膨らませた。
「せっかくのかわいい顔が台無しですよ」
どうせ、私は可愛くないからね。
私は感情が膨らむのと同調するように、さらに頬を膨らませた。
それから数時間後、ノノさんの笑い声がこだました。
「そんなに膨らんでいたんですか?」
アイユークが早朝の事をノノさんに話し、朝食に彩りを添えていたからだ。
「アンナちゃん、ほっぺたを膨らませすぎると、そういう顔になっちゃうよ」
私は反論も兼ねて、そんなに膨らませていないと実演してみせた。まあ、ノノさんを笑わせようと、朝よりも誇張して膨らませてはいたけど。その膨らんだほっぺたを、ノノさんは自身の手でサンドした。当然、私の口からは食事時には似合わない音を立てて空気が漏れる。
「アンナちゃん、はしたない」
え~!?、ノノさんがやったんじゃん。
「アンナさんには、私に対する不敬罪を問うことにしましょ」
アイユークまで悪ノリをしてきた。あなたの立場上、ソレ、冗談になりませんから。
私は、ともかく謝った。その様子が面白かったらしく、眼の前にある二人は、さらに笑い声を高めた。
食事が終わったときに、私はアイユークにコーヒーなどの嗜好品について尋ねたが、ウォルフのときと同様で残念ながら知らないとの答えだった。
「アンナさん、そういった話をもっと聞きたいですね」
アイユークは溢れんばかりの好奇心を、自身の目から光として放出していた。
私は、夢の話なんですが、と前置きをしてから、2日前の夜にノノさんに話した船や飛行機、スマホなどの話を聞かせた。
「全部、夢なんですけどね」
最後に念押しで、夢であることを強調した。
「そのエンジンや電波というものは、アンナさんには作れないのですか」
私は知識がなくて無理ですと、すぐさま答えた。そもそも石油などの燃料もない。電波なんてどうやって作っているのかさえ知らない。
「知らないと言うことで、何かの交渉材料に使ってますか?」
いやいや、まってよアイユーク。そんな疑いの目を私に向けないで。
「アイユーク様、アンナちゃんに知識とその気があったら、こんな便利なものがある、とすでに交渉をしていますよ」
ノノさんの言葉で、アイユークの表情は緩んだ。
「ノノさんの言うことはもっとですね。では何か思い出せるまで、文献はおあずけにしましょう」
今、なんて言った?おあずけって言ったよね。ひどい。それはないよ、アイユーク。
私は反論をしようとしたが、その前にアイユークが続けた。
「…と言いたいところですが、約束は守ります。どうか片鱗だけでも思い出せたら、ご教授願いたい」
自領の豊かさを求める為なのはわかっているんだけど、アイユークの立ち振舞を見ていると、哀れに思えてきた。
私は有効な技術などを思い出したら、すぐに報告をすると約束をし、まずは麦の改良から初めましょう、と締めくくった。
リーベリには何よりも食べ物が足りない。これをなんとかしなければ、この先の成長はありえない。
食べ物が増えれば人も増え、色々な才能を持った人も増える。それらの人々は多様な技術を生む土壌になるだろうし、ここに暮らす人々が、現代人と同じ人である以上、きっかけさえあれば自力での産業革命もありうる。
私のようなまがい物ではなく、本当の意味で知識を持った人、いや知識を作り出す人が出てくる事は間違いない。
それにはしっかりとした教育機関が必要になるのかな…。
知識人の増加は特権階級の排斥に繋がっていくかもしれない。アイユークはそのことをどう思うかな。
私は判断できないでいた。
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