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2章 俺の異世界でのパートナーは、可愛いだけじゃなかった。

18 ハイレグも好きだけど、俺はチャイナドレスが好きだ。

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「今、魔王様が胸のでけぇ女を異世界から集めてるだろ? その人等の服も頼まれてるんだが、いいアイデアが全然浮かばなくてな。ゼストもそっちの世界に行きっぱなしだっていうし、何か良さげなのはないかい?」
「えっ? 俺ですか?」

 突然ヤシムさんが、俺にそんな難題を持ちかけてきた。
 あまりにも急すぎる話だが、俺は頭にチャイナドレス姿の美緒を想像した。もちろん、丈の短いヤツだ。

 だって、モデルはみんな俺の世界の巨乳女子。
 チャイナドレスの、はち切れそうな胸の辺りが俺は好きでたまらない。

 そんな俺のニヘラ顔を見て、ヤシムは早速紙とコンテのような筆記具を俺に差し出した。

「どんなのでもいいから、アイデアを貰えると嬉しいんだけどな」

 絵に自信はないが、巨乳好きのクラウならきっとこの服を「イイ!」と評価してくれるだろう。

「あぁ、でも美緒も着るのか」

 それを見せる相手がクラウだという事が不満だが、俺は下手なりにその絵を描いて、覗き込んできたヤシムに渡した。

「いいじゃないか、いいじゃないか。それで、この膝から下の足には何を履かせるんだ?」
「それは、そのままでもいいんじゃないかと」

 太股ふとももの上の方までスリットが開いている魅力的な脚には、やっぱり生か肌色のパンストだ。
 けど、『デザイン案・ユースケ』と公表されたりしたら、美緒や元居た世界の巨乳女子たちに変態のレッテルをはられてしまうだろうか。親衛隊のハイレグよりは落ち着いていると思うのだけど。

 ヤシムは「ほぉ」と何度も呟き、食い入るようにデザイン画を見つめている。
 この時間をとてつもなく長く感じてしまうが、やがてニヤリと起きた顔が「合格だ」と笑った。

「やっぱ異世界から来た奴の意見ってのは斬新だな。向こうの趣向を取り入れるのは、大事だと思うぜ。それに、これを着るのは向こうの女なんだしな」
「ホントですか? 本当にこれにするんですか?」
「アイデアとしてな。大筋はこれにして、少し手直しさせてもらうぜ」

「やった! ありがとうございます!」
「なぁに、礼を言うのはこっちだ」

 まさかの採用に、俺はチャイナ服姿の美緒を頭に蘇らせる。やっぱり胸の存在は偉大だ。
 
 ヤシムはデザイン画をびょうで壁に留めると、ふと表情を強張らせて俺を振り返る。

「そういえば、お前たちエルドラに行くって言ってたな?」
「あ、はい。モンスターが現れて、観光地が閉鎖されているらしくて」

 俺は慌ててチャイナ女子たちの妄想を頭の外に追いやった。

「モンスターが出たって話は聞いてるが、お前は異世界から来たばかりなんだろ? その剣を使いこなせるのか?」

 ヤシムが親指の先で示したのは、俺がさっき鍛冶屋で揃えてもらった初心者用の剣だ。
 俺が正直に首を横に振ると、ヤシムは「だよな」と短く唸る。

「何か……あるんですか?」

 勿論あると返されそうな雰囲気だが、ヤシムは少し考えた表情を見せるだけで詳細を語ろうとはしなかった。

 ただ、一つだけ俺に忠告してくる。

「もしそこで緋色ひいろの魔女に会ったら、一目散に逃げろ。メルは強い。だから、アイツのことは考えずに、自分の命の事だけ考えて逃げろ。いいな?」
「緋色の……魔女?」
「そうだ、分かったな?」

 そんなの全然分からない。
 詳細を聞きたいのに、タイミング悪くメルが戻ってきてしまった。
 ドアの音が鳴った瞬間、ヤシムは人差し指で「この話は終わり」だとジェスチャーを見せたので、それ以上何も聞けなくなってしまう。

「お帰り」

 ヤシムがほんの少しだけ見せた鋭い視線も、あっという間に消えていた。
 パッと笑顔で現れたメルは、水色のワンピースを脱いでラベンダー色のワンピースを着ていた。
 水色のと大して変わらないシンプルなワンピースだが、胸にはまさかのカーボ印が縫い付けられている。ヤシムが刺繍したのかと思うと髭面のオッサンが可愛いと思えてしまう。

 背負っていた剣を片手に、メルは俺たちの真ん中でくるくると回って見せた。

「かわいいよ、メル」
「ありがと、ユースケ。ヤシムさん、これすっごく気に入ったわ」

 そう言って彼女が指さしたのは、予想通りカーボの顔の刺繍だ。
 彼女の笑顔に癒されつつ、俺は緋色の魔女の名前が頭にこびりついてしまい、明日からの旅に初めて不安を覚えたのだ。





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