魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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銀の笛奪還編

第23話 勇者復活を待つ

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 勇者ウラワと旅したと言うユミコは、自らの肉体に特殊な技法を施し、453年の歳月を生き抜いていた。
 ユミコは幽霊ではなかった。


「ユミコさん、俺はあなたに会いたい。
 姿を見せてください。」
 ユミコの話しに感動した俺は、俺とユミコとを隔てるこの壁がもどかしい。
 勇者ウラワの子孫として、ユミコに謝りたい。

「今は、特殊な技法を解除してる最中だから、見ないでほしいな。」
「なぜです、ユミコさん。
 あなたには453日の歳月しか、経ってないのでしょ。」

 ユミコの声は、知的で優雅さを感じる。
 勇者ウラワが魔王を倒して六年後、ユミコは特殊な技法を使用した。
 つまり勇者ウラワと別れてから、七年後の姿を維持している。
 そう、今のユミコは、アラサー女子。
 その美貌も、そんなに劣化していないはず!
 この声は、美人にしか出せない!
 最近の声優さんも、ルックス重視!
 故に、クマガイユミコは、超絶美女に間違いない!

「あはは、実は453年の歳月は、私の身体に刻まれてるのよ。」
「それって、」
 俺は思わず絶句。
 つまり今のユミコの姿は、453歳の老婆の姿なのだ。
「こんな姿、誰にも見られたくないわ。
 特にタカスナの子孫には。
 だから、私が453年の歳月を取り戻すまで、ちょっと待ってて。」
「はい。」
 俺は、そう答えるしかなかった。

 だけどちょっと待て。
 ユミコの声は、普通に美人だ。
 とても453歳の老婆の声とは思えない。

「ああ、私のこの声は、スピーカーを通じて話してるわ。」
 ユミコは俺の疑問を察して、答えてくれた。
「スピーカー?」
 と言われて俺は、辺りを見渡す。
 それらしき物は、見当たらないのだが。

「で、お願いなんだけどさ、ユウタ。
 先にイワツキの村に行っててくれないかな。」
「えと、ここで待ちますけど、ユミコさん?」
 俺は一刻も早く、ユミコに会いたい。
 だからここを離れたくはない。

「あのね、ユウタ。
 私は今、特殊な技法を解除して、453年の歳月を取り戻してる最中なのよ。」
 つまり、もうすぐ超絶美女のユミコと会える。
「その激痛が、そろそろ私を襲う。だから、お願い、、、」
 ユミコの声に、苦痛が混ざる。

 なるほど、苦しむ姿を見られたくないのだろう。
 姿と言っても、声だけだが。

「分かりました、ユミコさん。
 俺、イワツキの村で待ってます!」
「ありがとう。私もすぐに追いつくわ。
 宝箱の蓋を閉めたら、私の若返りが本格的に始まる。
 だから、蓋を閉めたら走って。お願いよ。」

 銀の笛を入れた宝箱の蓋は、開いたままだ。
 これがおそらく、ユミコ復活のキーアイテム。

「ユミコさん、またお会いしましょう!」
 俺は宝箱の蓋を閉めると、そのまま出口へと走り出す。

「ぐぎゃああ!」
 俺がユミコのほこらを出ると同時に、ユミコの悲鳴が辺りに響き渡る。
 俺は耳を両手でふさぎ、森の中を走った。
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