魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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ユミコ奪還編~ルギア神殿へ

第75話 勇者城塞都市チチブに着く

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 城塞都市チチブの門番、黄金色の仏像のオブジェの前で、精霊の笛を奏でる俺。
 ユミコへの想いを載せたその旋律に、仏像のオブジェの輝きが鈍る。


 俺はオブジェを警戒しつつ、少し右に動いてみる。
 オブジェは動かない。
 さっきまでは、俺を正面に捉えるよう、常に動いていた。

 俺は今度は、近づいてみる。
 一定の距離に近づくと、黄金の騎士の姿に変形するはずだが、今は変形しない。
 なんと俺は、オブジェの所まで、たどり着いてしまった。

「まさか。」
 俺はオブジェに触れてみる。

 かシャーン!

 オブジェは地面に崩れ落ちる。
 崩れるとは言っても、黄金の騎士の鎧のパーツが、地面に散らばった感じだ。

 なんなんだ、これは。
 意志を持った鎧。と言ったところか。
 城塞都市チチブに近づく者は、誰であれ、攻撃するよう作られたのか。
 それとも俺を襲ったのは、精霊ルギアの差しがねなのか。

 俺が悩んでいると、鎧の輝きが、少しずつ回復していく。
 それに伴い、バラバラに地面に落ちたパーツが、徐々に動いてくっついていく。

 やばい!
 俺は一目散に、チチブの街中へと駆け込んだ。

 はあはあ、流石にここまでは追ってこないだろう。
 チチブに着いた俺は、この街にあるはずの、ルギア神殿を目指す。
 って、どこにあるんだろう。
 とりあえず、誰かに聞いてみる。

「城塞都市チチブにようこそ。
 ここはゴーレムに護られているので、魔王軍が攻めてきても安全です。」
 ふーん、あの仏像のオブジェ、ゴーレムって言うのか。
 てか、ルギア神殿どこなの?

「ゴーレムは魔王軍六魔将のカトウサに、混乱呪文をかけられてしまいました。
 でもこの街を護る意志は損なわれませんでした。
 ですが、この街に入る者を見境なく襲うようになってしまいました。」
 カトウサ?ああ、カトウさんね。
 失敗続きで処刑されたって、スズキくんが言ってたっけ。
 それよかここの住民は、どうやって出入りするのよ。
 つか、ルギア神殿どこよ?

 聞いたヤツの人選を間違えてた。
 やっぱ信心深そうな、お年寄りなんかに聞けばいいかも。

「私ぁ、ムサシに住んでたんだけどね、魔物の大群に滅ぼされちまったよ。
 で、命からがら、このチチブに逃げて来たって訳さ。」
 って、マジかよ婆さん。
 この辺の魔物、勇者である俺でも苦戦してんだぞ。
 この婆さん、俺より強いのか?
 つか、ルギア神殿どこ?

 くそ、婆さんがダメなら、爺さんに聞いてみるか。

「わしはムサシで道具屋を営んでいたんじゃが、隣りの武器屋のオヤジが、凄い防具を入手したと、自慢してたっけ。」
 そんな事は聞いていない!
「何、その武器屋の場所だと?
 街の東のはずれ、大きなニレの木が目印だ。」

 な、なんだこいつら。
 俺がルギア神殿の場所を聞いてるのに、誰も答えてくれない。

「あれぇ、ユウタ君じゃない?」
 絶望する俺に、誰かが声をかける。
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