魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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ユミコ奪還編~ルギア神殿へ

第74話 勇者精霊の笛を吹く

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 やっとユミコが待つ城塞都市チチブにたどり着いた俺。
 しかしチチブの入り口の前には、強力な門番が立ちふさがっていた。


「ヒーリング。
 ヒーリング。
 ヒーリング。
 ヒーリング。」
 とりあえず体力を回復させる。
 全快させるのに、四回も回復呪文を唱えてしまった。

 しかし、どーすればいーんだ、これ。
 預言者ミツフタは、俺がチチブに行けるよう、アドバイスしてくれたはず。
 まさかあいつ、このモンスターの存在を把握してなかったのか?
 いや、仮にも預言者を名乗るんだから、そんなはずない。
 何か手段があるはず。
 チチブに入るための手段が。

 とりあえずこいつの居ない、別の城壁に回ってみよう。
 もしかしたら、普通に城門があるかもしれない。

 だがこの仏像のオブジェ。
 ずっと俺を正面に捉えている。
 俺が右側の城壁へ回り込もうとすると、黄金の騎士に変形!

 やべっ!

 俺は慌てて距離をとる!
 黄金の騎士は仏像のオブジェに戻るが、すでに俺を敵認識してるようだ。

 くそっ。
 どうすればいいんだ。
 つか、きたねーぞ、精霊ルギア!
 懸命に行動したヤツに対する仕打ちが、これか!
 最後の最後で、絶望を叩きつけるなんて、いい趣味してるぜ。精霊ルギア!

 って、精霊?
 俺はその単語に引っかかる。
 そいやあ、精霊の名のつくアイテムを持ってたな。

 精霊の笛。
 これ、何かに使えるんじゃないか?
 俺は、イワツキの村を出た時の事を思い出す。
 確かこの後使うかもしれないと、ユミコが過去に恩を売った妖精から、脅し取った笛。

「これはね、魂を吹き込まれた無機質を、おとなしくする事が出来るのよ。」
 ユミコはそう言うと、笛を吹いた。

 聞きほれる俺に、ユミコが笛を渡す。
「はい、ユウタも練習してみて。」
「え?」
 俺はユミコの差し出す笛に、なんのアクションもとれずに固まってしまう。
 だってこの笛、ユミコが口をつけた物だよな。
 え、それを本人の目の前で吹くの?

「なに?あなたも努力や練習する所を、人に見られたくないタイプ?
 確かタカスナもそうだったわ。」
 と、ユミコは好意的に解釈してくれる。

「いいわ。だったら私の演奏を、しっかり目に焼きつけておいてね。」
 ユミコは再び、精霊の笛を吹いた。

 その凛々しくて美しいユミコの姿は、俺の目に焼きついている。
 あの時のユミコの姿は、行動は、しっかり再現する事くらい、簡単に出来る。

 あの時のユミコを思いながら、俺は精霊の笛を吹く。

 ぴーひひゃっひゃっひゃっひゃっひゃあーぴろりろりん。

 ユミコを思う俺の気持ちが、せつないメロディを奏でる。

 黄金色の仏像のオブジェは、なぜかその輝きがかげる。
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