魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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ユミコ奪還編~十二宮殿の戦い

第89話 勇者だが断りきれなかった。

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 神々の仮死の秘法を使ったユミコだが、それは永遠に若さを留めておくモノではなかった。
 生身の人間には三百年しか効果がなく、アバター体に魂を移したというユミコの寿命は、あと1ヶ月もなかった。


「そんな、ユミコが死ぬ。」
 俺はその場に崩れ落ちる。
「本来なら、とっくの昔に死んでる人間。
 そんなに悲しむ事も、なかろう。」
「な、」
 ルギアの何気ないひと言に、俺はキレる!

「ユミコがどんな想いで、生き長らえてきたと思ってるんだ!
 いくら精霊神ルギア様とはいえ、ユミコの想いを踏みにじる権利なんて、無い!」
「ああ、確かにないな。」
 ヒートアップする俺に対して、冷めた口調のルギア。
 これには俺も、出鼻をくじかれる。

「ユミコには、勇者ウラワとともにサーイターマルドを救ってもらった恩がある。
 だから少しの無茶は、聞き入れてもやる。
 だが、行き過ぎた干渉ともなれば、話しは別だ。」
「ちょ、ちょっと待て。」
 俺はルギアの言葉に引っかかる。

「ユミコがかつて救ったサーイターマルド、なんだろ?
 それをルギア様は、滅ぼそうと言うのか?」
「おまえは何を言ってるんだ?」
「だってそうだろ!
 ユミコを捕らえて、俺をここに呼んだ。
 俺をゴーレム達に殺させようとした事は、魔王にサーイターマルドを滅ぼされてもいいって事だろ!」

「はあ。」
 俺の意見に、ルギアは思っくそため息をつく。
「あのね、ユウタ。
 竜王とゴハンとの争いはね、サーイターマルド内の紛争にすぎないの!
 なんでそんな紛争ごときで、サーイターマルドが滅ぶのよ!」

 なんか知らんが、ルギアにキレられた。
 つか、竜王?ゴハン?なんだそれ?

「竜王は、あんた達が魔王と呼んでる存在。
 ゴハンは、あんたんとこの、国王でしょ。」
 そういや、国王はゴハン十六世だったな。
 あらすじにしかない名前だから、瞬時に出てこなかったよ。

「ついでに言うと、勇者ウラワは神武七龍神同士の争いが産んだ厄災から、サーイターマルドを、ひいてはジャパニガルドを救ったのよ。」

 な、なんだそれ?
 なんかスケールのでかそうな名前が、出てきたぞ。

 面食らう俺を見て、ルギアはニヤける。
「なあに?聞きたい事あったの?」
「く、」

 そう前回、ルギアは俺に聞きたい事ないかと、聞いてきた。
 対して俺は、ユミコを返せとだけ、答えた。
 そうだよ、とっととユミコを返せよ。
 こんな所で、興味深い話しを聞いてる場合ではない。
 後からユミコに聞けばいい話しだ。
 だけどルギアなら、ユミコには分からない所まで、知っていそうだ。

「あらあ?
 こういう時って、なんて言うのかしらね?」
「く、」
 知りたい欲求に負けそうな俺を、ルギアはあざ笑う。

「お、教えてください。」
 俺はボソりとつぶやく。
「何か言ったかしら?」
 くそ、俺の心を読めるのに、なんてヤな奴なんだ!

 だけど俺は、ルギアに敗北せざるを得ない。
「教えてください、ルギア様!」
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