魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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荒野を行く

第219話 勇者禅譲される

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 魔王を倒して、すでに数話。
 俺はやっと、オオミヤ城に帰還しる。



「よいしょ、っと。」
 ドス。
 俺はオオミヤ城の城門前に、兵士から預かった碑石を置く。

 肩の荷も軽くなり、俺はオオミヤ城に入る。

「きゃー、勇者様よー。」
「魔王を倒した勇者様の、ご帰還だー。」
「ありがとう、勇者様ー。」

 俺は熱烈的な歓迎を受ける。
 オオミヤ城の人々から、自由意志は失われていない。
 そう、俺は間に合ったんだと、ここに来てやっと実感出来る。

 早くローザに会いたい。

 沿道の声援に手を振って応えながら、俺の足取りも早くなる。
 だけど王座の間に続く階段の前で、俺の足が止まる。
 なんと、ここで王様が待っていた。

 く、俺はローザに会いたいのだが、王様を無視する訳にもいかない。

 とりあえず王様に報告せねばなるまい。

「王様、魔王は私の手で、成敗してまいました!」

「きゃー、素敵ぃー。」
「さすが勇者様だぜー。」

 俺の報告に、歓声があがる。

「うむ、見事である。」
 王様は鋭い眼光を、俺に向ける。
 一瞬殺意めいたモノを感じるが、そんな殺気はすぐに消えた。

「つきましては、これをお納めください。」
 俺は幻の金水晶を差し出す。
 輝きを失い、ヒビの入った金水晶。

 なんらかのお叱りは、あるかもしれない。
 だけど俺を讃えるこの歓声。そう無下にも出来ないはず。

「うむ、これが幻の金水晶か。よくぞ取り戻してくれた。」
「きゃー、素敵ぃー。」
「さすが勇者様だぜー。」

 なぜかお咎めなし。
 これには俺も、亜然としてしまう。

 王様は家臣の者に、幻の金水晶を渡す。
「では、宝物庫の奥に、厳重に保管してまいります。」
 家臣の者は、金水晶を持ってこの場を立ち去る。

 宝物庫の中か。
 もしかしたら、誰も見た事がないのかもしれない。
 実物の、幻の金水晶を。

「うむ、全ては言い伝え通りであった。それでこそ、勇者の血を引く者。おまえこそ真の、勇者ウラワの子孫!」
 王様はそう受け応える。
 これに少しカチンとくるのは、なぜだろう。

「おまえこそ、この地を治めるのに、ふさわしい人物!」

 ん?
 急に何言い出すんだ、この王様。

「わしに代わって、この国を治める気はないか?」

 な、何言ってやがる、こいつは!

 狡兎こうと死して走狗そうく煮らる。

 俺は身の危機を感じる。
 この誘いに乗ってはいけないし、この国にいたら俺の危険が危ない!
 なら、こう答えるしかない。

「いいえ。私が治める国があるならば、それは私自身の手で、探してまいります。」
 これで、俺もこの国から離れられる。

「そうか。それならば、私も止められはしない。おまえも存分に旅を楽しむがいい。」
 王様は複雑な表情で、俺に言う。
 俺はその旅に、危険を感じる。

 おそらく王様は、刺客を放つだろう。

 俺は逃げのびる事が、出来るのだろうか。
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