異世界を救ってくれと、妖精さんに頼まれました

あさぼらけex

文字の大きさ
29 / 29

第31話 ふたつの二重封印

しおりを挟む
 ついに始まった、混色の四重封印。
 緑の龍脈のパワースポットを淀ませた、ルビーの赤の魔素が居場所を無くす。
 フィーナのピンチにユウトの身体は動くが、ユウトはまだ眠ったままだった。


 ユウトの腕輪の宝珠が、さらに輝きを増す。
 これはフィーナを守りたい一心から、ユウトの青の魔素が暴走しだしたためだった。
 元々パワースポットの緑の魔素は、淀んでいる。
 そこに居るユウトは、いつ暴走してもおかしくはなかった。

 フィーナとアスカは、緑の魔素を浄化する四重封印から、離れる。
 ふたりはユウトの暴走を抑えるべく、二重封印〔フェアリーデュエット)にきりかえる。
 ユウトの腕輪の宝珠を中心に、魔法陣が浮かぶ。

「ユウトお願い。元に戻って!」
 二重封印の踊りの最中、フィーナが叫ぶ。

「く、」
 その横で、ミクが苦痛に顔を歪める。
 四人で抑えてた魔素の淀みを、ふたりで抑える事になったからだ。

「しっかりしろ、ミク。」
 マドカがミクを励ます。
 退魔の剣を手にするマドカだが、ぶっちゃけやる事がない。
 ルビーの持ち込んだ汚れた赤の魔素は、既に浄化した。
 パワースポットに溜まった魔素は、淀んではいるが、汚れてはいない。
 緑の王妃が、安らぎの魔素を注ぎ続けてるためだ。
 青の国のパワースポットからあふれた魔素とは、そこが違う。
 ユウトも安心して、幼児退行出来る訳だ。

 だから退魔の剣を振るったら、緑の王妃の効力も薄れる。
 ユウトを凶暴化させても構わないなら、マドカも退魔の剣を震える。
 淀んだ魔素を薄め、妹たちの援護が出来る。


 しばらくして、フィーナとアスカの二重封印により、ユウトの魔素の暴走が止まる。
 ユウトの浄化の腕輪の宝珠は、いつもの鈍く澄んだ輝きに戻る。

「私らの出番は、ここまでだな。」
 アスカは妖精体から人間体に戻る。
 フィーナは妖精体のまま、ユウトを見守る。

「ああ、後はコマチとミク次第だな。」
 マドカはアスカに近づくと、退魔の剣をアスカに返す。
 コマチとミクは、優雅に舞い踊る。
 淀んだ魔素も、澄んだ魔素に戻りつつあった。

「全く、おまえってヤツは。
 人使いが荒すぎるぜ。」
 アスカはその場に腰をおろす。
 修行してる所を連れてこられたアスカは、疲労困ぱい。
 ダメージ量的には、マドカより酷かった。

 対してフィーナは、妖精体のまま、眠るユウトの上で踊り続ける。
 これはミク達の行う二重封印とは違う。
 二重封印は、魔素を清めるための儀式。
 対してフィーナの舞いは、ユウトを癒すためのものだった。

「やるじゃねーか、おまえの妹。」
 共に疲れきったアスカとマドカ。
 マドカはアスカに対して、フィーナをほめる。

「そう言う事は、本人に言ってやれ。」
「あいつ、苦手なんだよなぁ。」
「へー、緑の国の第一王女、マドカリアス様ともあろう者が、フィーナ如きを苦手にするとはな。」
 アスカはちょっと大げさに、マドカを茶化す。

「おいおい、私は浄化の腕輪を失った。
 すでに王女でもなんでもないさ。」
 マドカは自嘲気味に、笑みを浮かべる。
「でも、コマチとミクにとって、おまえが姉である事には変わりない。
 それも、頼りになるお姉さまだろ。」
 とアスカはコマチを励ます。

「ぬかせ。
 私は異世界パルルサ王国に、骨を埋める覚悟だったんだ。
 今さら姉ズラ出来っかよ。」
「でも、異世界パルルサ王国での仲間は、おまえをジュエガルドに戻す事を選んだんだろ。」
「でもでも、うっせーな。」
 そう言うマドカだが、その表情はどこか、晴れ晴れしている。

「ほんと、あいつらときたら、私に楽をさせてくれねー、ひどい奴らだぜ。」
 マドカは、異世界パルルサ王国での仲間達の顔を思い浮かべる。

「そのおかげで、いい物が見れたんじゃないか。」
 アスカは、二重封印中のコマチとミクに、視線を向ける。
「ああ、そうだな。」
 マドカは、ユウトの上で踊るフィーナに、視線を向ける。
「ほんと、あいつのあの気概。
 もっと早くに、見せてほしかったぜ。」

「フィーナはおまえと同じで、異世界に行って来たんだぜ。
 案外おまえとも、気が合うかもしれんぞ。」
「ふ、それはない。とも言い切れんか。
 以前のレスフィーナ相手なら、全力で否定するんだけどな。」

 アスカとマドカがくっちゃべってる間に、コマチとミクとの二重封印が終わる。
 コマチは妖精体のままだが、ミクは人間体に戻る。
「どうですか、お姉さま。」
 ミクはマドカに、評価を求める。

「初めてにしちゃ、上出来だ。」
「良かった。」
 ミクはその場に、へたり込む。
 初めての妖精変化は、ミクに相当の負担を強いていた。

「後はお母さま、いや、ここの魔素に取り込まれて淀んだ、お母さまの精神が、元に戻るかだが、」
 マドカはパワースポットに沈むユウトに、視線を向ける。
 コマチも同じ思いなので、二重封印が終わってからずっと、ユウトを見つめている。
 そんなユウトの上で、妖精体のフィーナは踊ったままだ。

「う、うーん。」
 皆の注目を浴びるユウトは、大きく伸びをする。
「ああ、よく寝た。」
 とユウトは目を覚ます。

 しかしこの声、ユウトの声ではなかった。

「ちょっと、ヤバいかも。」
 マドカは冷や汗を流す。

 ユウトの身体から発せられた、今の声。
 これは緑の王妃の声だった。
 パワースポットに閉じ込められた、緑の王妃の精神。
 淀みが浄化された今、そこに沈むユウトの身体を乗っ取る事は、マドカの想定したシナリオのひとつだった。



次回予告
 やってくれましたわね、青の小娘ども。
 我が聖域に土足で足を踏み入れるとは、なんとも恐れ知らずな小娘どもよ。
 青の小娘どもには、聖なる鉄槌を降さねばならぬな。
 ああ、私か。私は緑の王妃、エメラルド・ジュエラル・シルドレス。
 コマチとミクの二重封印〔フェアリーデュエット)で、自分の意思を取り戻す事が出来ました。
 後は、青の小娘どもを始末するだけですわ。
 あら、聞き捨てならないわね、緑の王妃さん。
 げ、あなたは青の王妃さん。いつからいらしたのです?
 ここは元々、私のコーナーですわ。
 それにあなた、名前があるなんてずるいですわ。
 え?あなたにもありますよね、カレンさん。
 カレン?それが私の名前…。
 もう、何バカな事言ってんですか。
 あなたは青の王妃、サファイア・ジュエラル・カレリーナ。
 私とはカレン、シルって呼び合う仲じゃないですか。
 そうでしたわ、シル。私はカレリーナ!
 私はサファイア・ジュエラル・カレリーナ!
 カレン、一体あなたに何があったの。名前ひとつでそんなに嬉しがるなんて。
 そりゃあ、あんたんとこの小娘に、バカにされたからね。
 って、うちの子達に鉄槌を降すって、どう言う事?
 あらカレン、嫌ですわ。私にもカッコつけさせて下さいよ。
 次回、ジュエガルド混戦記激闘編、魔素に潜むモノ。
 お楽しみに。

※今回、目覚めた緑の王妃の意思と、一悶着おこすつもりでした。
 けど、そこまで行けませんでした。
 次回もどうなるかは、分かりません。この予告とは異なる場合もありますが、それはそれとして、ご了承下さい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...