未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

文字の大きさ
2 / 215
宇宙召喚編

第2話 時を駆ける

しおりを挟む
 ここは、とある巨大宇宙ステーション。
 これより先は二十億光年、恒星系が一切存在しない。
 そのため、この宇宙ステーションを中心に、満天の星空と何も無い暗黒の宇宙空間が二分して存在する、そんな風景がひろがっている。

 この宇宙ステーションに存在する戦闘用転送ポッドに、ひとりのパイロットが転送されてきた。
 この転送ポッドと宇宙戦闘機の操縦席はつながっている。
 宇宙戦闘機に何かあれば即、この転送ポッドに転送される仕組みだ。
 プシュー
 転送ポッドの扉が開き、ひとりのパイロットが出てきた。
「はあ、はあ…」
 パイロットは両膝に両手をつき、肩で大きく息をする。
「死んでない。俺、生きてる…。」
「当然です。そのための転送ポッドです。」
 パイロットは、声のした方へと顔をあげる。
 グラマラスな女。
 その一言で言い表せるその女性は、宇宙戦闘機でのサポートAIだ。
 つまり目の前の女性は、アンドロイドだ。
「それは分かってるけど…」
 そう言って下を向く。
 目をつむると、目の前に迫る小惑星が見えてくる感覚にとらわれる。
 だめだ!目をつむれない!
「ああもう!」
 パイロットはいらだつ。
 あの時、素直に急上昇していれば結果は違っていた。
 それが分かってるだけに、自分の判断ミスと、その結果自分にまとわりつくこの恐怖感に、いらだつ。

「マイ、メディカルルームで休んで下さい。反省会はその後です。」
 マイと呼ばれたパイロットは、両膝に置いた両手を軽くあげ、姿勢を正して歩きだす。
「そうするよ、アイ。助けてくれて、ありがと。」
 サポートAIにそう言って、メディカルルームへ向かう。

 メディカルルームには、カプセル型のベッドがあるだけだ。
 窓の外には、満天の星空が広がっている。
「はあ、この反対側には何も無いなんて、思わないよな。」
 マイはベッドに横になると、ほどなく深い眠りに落ちた。

 ここは、西暦9980年の未来。
 人類は地球を離れ、広大な宇宙に勢力圏を伸ばしていた。
 人類は大きく3つの陣営に分かれて、何かと争いあっていた。
 脱出用ポッドの登場により、誰も死なない戦争が出来るようになった。
 このため、何かにつけて争うようになった。
 戦争を始めるのも、たやすくなったのだ。
 しかし、問題もあった。
 脱出用ポッドの先のコックピットに、誰が座るのか。
 それが問題になった。
 と言うのもこの時代、遺伝子解析で個人個人の才能と適正が明確になり、その才能を最大限引き出せるようになっていた。
 つまり、パイロットのステータス差がそのまま勝敗の結果になった。
 この結果を覆すために選ばれたパイロット。
 それは、遺伝子解析以前の人類である。
 つまり、過去の人間。
 才能も適正もクソもなく生きていた時代の人類なら、その才能を引き出した時、その才能と関係なく過ごした経験がブレンドされ、ステータスでは表せられない成果を上げられる事が判明した。

 こうして、西暦2020年前後から連れてこられたのが、マイである。

 連れてくるといっても、タイムマシンで直に連れてくるのではない。
 目的に見合った魂を見つけ出し、この時代に作っておいたアバターにその魂を召喚するのだ。
 魂を召喚させられた者にとって、この時代は夢の中と似たようなものだった。
 ひと夜の夢。
 目が覚めた時には、あまり覚えていない。
 そんな世界である。

 こうしてこの時代に召喚されたマイであったが、分からない事だらけだった。
 なぜはるか未来の人間と言葉が通じるのか。この疑問はすぐに解決した。
 この時代の人間と言葉が通じるのは、チップを内蔵したハチマキをしめてるからだ。
 このチップが脳の言語野に干渉し、相手が発した言葉の意味を、こちらの母国語に翻訳してくれる。
 さらにこのチップはサポートAIともつながっていて、色々補足もしてくれる。情報のインストールやダウンロードも可能だ。

 疑問なのは、なぜ自分が召喚されたのか。
 そして、他にも召喚された者はいるのか。

 これに対しては、機密事項という事で、答えはなかった。

 そして今、新たな疑問が浮かんできた。

 メディカルルームで目が覚めたマイは、メディカルルームから移動した。
 巨大宇宙ステーションと言っても、マイが移動出来る範囲は限られている。
 訓練用多目的ホールと、メディカルルームだけだった。
 そしてマイが出会える人間も、限られていた。
 サポートAIのアイと、メカニックマンのお兄さんのジョーだけだった。
 多目的ホールのラウンジで、アイと出くわす。
「マイ、早速先程の訓練の反省会をしましょう。」
 そう言うアイの言葉を、マイは手を振りながら遮った。
「その前に、ちょっと質問があるんだけど。」
「質問、ですか。ほとんどの疑問にはお答えしたと思いますが。」
 マイの言葉に、アイは首をかしげる。
「いやね、今さらするような質問じゃないんだけどね、つか、最初に聞いておく事だったんだけどね。」
「はい、何でしょう。機密事項以外でお願いしますよ。」
 アイは満面の笑みで質問を待った。

「俺、なんで女なの?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...