未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

文字の大きさ
6 / 215
宇宙召喚編

第6話 勝負を挑まれた

しおりを挟む
 これは西暦9980年の未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、同じようにこの時代に召喚された仲間達に、初めて出会った。
 しかし、その仲間達は、マイを歓迎してはいなかった。

 歓迎されていない事を肌で感じ、立ちつくすマイ。
 そんなマイに、ジョーが声をかける。
「マイ、挨拶を」
「それ、必要ですか?」
 ジョーの言葉をさえぎるように、ユアが口をはさむ。
「何を言う、これから一緒に戦う仲間だぞ。」
 ジョーはそう言うのだが、ユアの言い分も、ジョーには分かってる感じが、マイには感じとれた。
「いつまで戦えるんだか。」
 ユアははきすてるようにそう言った。
「アイのパートナーは、これまで4人。みんなすぐに戦死しています。」
 ユアの発言を補足するように、サポートAIのユウが続ける。
「うち3人は、訓練中に事故死です。チームに合流すらしていません。」
「あなたもかわいそうね、アイがパートナーじゃなければ、死ぬ事もなかったのにね。」
 ユアのその言葉に、マイもカチンとくる。
「おまえなあ、アイのせいじゃないだろ、それ!」
「本当にそう思ってるの?」
「お、おまえ、」
 ユアの反論に、マイの言葉がつまる。
「脱出用ポッド。」
「?」
 反論出来ないマイに対して、ユアがたたみかける。
「脱出用ポッドがあるのに、なんで戦死するんだろうね?」
「!」
 ユアのその言葉に、マイはハッとする。
 脱出用転送装置のおかげで、死なない戦争が可能になったのでは、なかったのか?
 マイはアイへと視線を向ける。
 アイはその視線に耐えられず、下を向く。

 ごめんなさい。
 そんなアイの感情が、ひたいのチップを通じてマイに伝わってくる。
 そして、知られたくなかったという感情も。

 アイ、おまえは4人も殺したのか?
 違う。
 マイにはなぜか、確信めいたものがあった。
 死んだのは、僕達のせいだ。
「アイ、ごめん。」
「なぜ謝るのですか?」
「なんでだろ?」
 なんとなく口から出た言葉に、マイも戸惑う。
「でもこんな思い、もうアイにはさせないから。僕は、死なない!」

「はあ?何言っちゃってんの?」
 マイとアイとの会話に、ユアが口をはさむ。
「おまえが死ぬ事は、確定してんの。」
「僕は死なないよ。」
 マイの、なにかふっきれたようなその感じに、ユアはいらだつ。
「あんた、最高にムカつくわね。いいわ。だったら、私が殺してあげる。」
 その物騒な物言いに、ジョーが口をはさむ。
「おいおい、何言ってんだ。仲間なんだから、仲良くしようぜ。」
 そして、この部屋にいる他の召喚者達も、口をはさむ。
「まあまあ、ジョーさん落ち着いて。」
「好きにやらせてやればいいじゃん。」
「これで死ぬようじゃ、この先足手まといでしかないしな。」
 他の召喚者達は、ユアの発言に賛同する。

「勝負よ、ぽんこつアイのパートナーさん。」
 ユアはマイを指さして勝負を申し込む。
「ぽんこつって、僕が勝ったらその言葉、取り消せよ。」
 マイもその勝負を受けて立つ。
「勝負は当然、実戦に即したトライフォースで行うわよ。」
「トライフォース?何だそれ。」
 マイにとっては初めて聞く単語だ。
「あらあら、嫌ですわ。こんな基礎中の基礎も知らないなんて。
 やっぱりすぐ死ぬんだから、教えてもらってないのですね。」
 そう言ってユアはクスクスと笑う。
「トライフォース。ひとりで三体の戦闘機を操縦するフォーメーションです。この三体でのトライフォースは、全ての戦術の基本になります。」
 ユアのサポートAIであるユウが、説明する。
「そうなんだ。アイ、インストールお願い。」
 マイはアイにそう言う。
 ひたいのチップを通じて、情報がマイの脳内に流れこんでくる。

「すっげー、これがトライフォースか。」
 三身一体のその陣形は、応用力が高く、様々な状況にも対応可能。
 操るひとの能力で、無限の可能性を発揮する。
「な、なにこいつ。」
 初めて知るトライフォースにはしゃぐマイを見て、ユアは不審がる。
「分かってるの、三体も同時に操縦する難しさが。」
「ま、仮にも召喚者なんだ。これくらいはこなしてくれないとね。」
 部屋の奥に座る別の召喚者が、そう口をはさむ。
「私達も見てるから、派手に殺してくれよ。」
 別の召喚者達は、そう言って部屋を出て行った。

 勝負の場所と時間が決められ、ふたりもその部屋を後にした。
 残されたメカニックマンのジョーが、途方にくれる。
 演習場のセッティング、トライフォース用の三体の機体の整備をふたり分。
 これをやるのはジョーひとりだ。
「ま、俺も天才だからなんとかなるけど。」
 ジョーの足元には、膝上くらいの高さのマシーンが数台、現れた。
 これらとジョーの意識はシンクロしている。これもトライフォースの応用だ。
 このトライフォースを意識して、ジョーはつぶやく。
「がんばれよ、マイ。おまえの魂の可能性は、誰にも負けねえよ。
 最初に召喚されたのがマイだったら、アイもあんな思いしなくてすんだかもな。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...