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宇宙召喚編
第20話 期待の超新星
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これは西暦9980年のはるか未来のお話。
来たる星間レースの参加メンバーが発表された。
それは、速さを競うよりも戦闘撃破に特化したメンバー構成だった。
そんな相手との対戦経験を持っていたマイン。
マイは、その驚きの戦闘結果に戦慄する。
「こりゃあ、まともに相手にしたら、たまったもんじゃないわね。」
ケイの言葉に、ただうなずくマイとユア。
「まあ、捕まったりはしないけどね。」
リムの言葉に、ケイとユアは何か気づく。
「なんで?ユアとケイがいなくなったら、僕嫌だよ。」
マイは気づかない。が、ユアとケイはマイにつっこむ。
「なんで私達だけ居なくなる事前提なのかな?」
「これだけ注目されたレースよ。ここで拿捕なんて出来ないわ。」
マインがそう言うと、マイも少しは安心する。
「でも、厄介な相手である事は、変わりないわよ。どうしたもんかねー。」
リムはそう言って考えこむ。
「そうよ、相手にしなければいいじゃない。これはレースなんだから。」
リムはそうひらめく。
「それだ。マイちゃん、私達は逃げて逃げて、逃げまくるわよ。」
「それでそのまま優勝だー」
落ち込み気味なマイを、ケイとユアがはげます。
「そうよね、私達の優勝だー。」
マイもその気になって叫ぶ。
「いや、その事なんだが。」
ここでジョーが水をさす。
「この勝負、相手はどちらも本気だ。絶対勝っちゃだめだぞ。」
その意味は、マイには分からなかった。
そうだろうなと言う表情をしているのは、マインだけだった。
「これまでの恒星系調査の出費比率を教えてやる。」
ジョーはそんなマイ達に説明する。
「グリムアの出費比率は48%、レドリアが47%だ。」
「え、じゃあうちの出費比率って。」
ユアは、その出費比率のあまりの低さに驚く。
「あちゃー、よくこれでレースに参加しようなんて思ったわね。」
ケイも、もっともな事を言う。
が、マイはそれがどうしたの、という思いでさらなる説明を待つ。
ジョーは、マイの察しの悪さにあきれ、逆に尋ねてみる。
「あー、マイ。これでうちが勝っちゃったら、どうなるかな?」
「少ない出費で恒星系の開発権得られてラッキー!」
「あほかー!」
マイの脳天気な答えに、思わずつっこむジョー。
「あほってなによ。」
マイもすぐに言い返す。
マイらしいやと、マインはクスリと笑う。
「あなた、面白いって言うか、バカよね。」
リムは笑いをこらえ、なんとか口にする。
「なんでよー。」
マイにはその意図が分からない。
「はあ、いいか、マイ。よく聞けよ。」
ここでジョーが説明する。
「どっちの陣営も、恒星系開発に、本気なんだ。これでうちが開発権を取ってみろ。新たな問題の火種にしかならんだろ。」
それでもマイは、納得出来ない。
「でも、うちだって出費してるよね?開発権勝ち取る権利はあるよね?」
「うちは蚊帳の外だろ。本来これは、レドリアとグリムアの争いだ!」
「じゃあ、なんで参加するの?勝つ気ないんなら、始めから出なければいいじゃない!」
そう叫ぶマイは、涙目だ。
このまま話してても、平行線のままだろう。そこで、ジョーはおれた。
「分かった。頑張って優勝してこい、期待の超新星!」
「はい!」
どうせ、ゴンゴル三姉妹には勝てないだろう。ジョーはそう思っている。
「任せて下さい!必ずゴンゴル三姉妹に勝ってみせます!」
「何?」
マイの言葉に、みんな一様に驚く。
「マイ、何か思いついたのか?」
優勝の現実味を帯びたその言葉に、ジョーは恐る恐る尋ねてみる。
「いえ、きっとやってくれます。ユアとケイが!」
とびっきりの笑顔でそう答えるマイ。
「その間に、期待の超新星マイがゴールして優勝です。」
マイがそう続けると、皆はあきれた笑みをうかべる。
しかし、マインだけはたまらず大笑い。
「あはははは、」
初めて見るマインのその姿に、皆は驚く。
マインはなんとか笑いをおさえて、マイに聞いてみる。
「マイ、超新星の意味知ってるの?」
「え?大型新人とか、そういう意味でしょ?」
「あはは、やっぱり知らないんだ。超新星ってね、星が最期に大爆発する事よ。あははは。」
そのまま笑いころげるマイン。何がそんなにツボったのか?
「えー、ひっどーい!」
マイはジョーにつめよる。
「僕なんて、爆発しちゃえって事ですか?大爆発を期待してるんですか?」
マイの瞳から、涙があふれてくる。
「あ、いや、期待してるだけだよ?超新星のマイに。」
「何よそれ。やっぱり爆発しちゃえって事?僕の事愛してるような事言ってたのに。」
「ば、バカ、今それ言うな!」
「バカって、やっぱり僕の爆発を期待してるんだ。うわーん。」
マイは床に崩れ、泣きだした。
それを見て、マインの笑いがぴたりと止まる。
そしてマイに抱きつく。
「ごめんね、マイ、ちょっと笑いすぎた。ごめんね。」
そのまま、ジョーを睨む。
「酷いよ、ジョー!あんな名前、付けなくてもいいじゃない、なんで付けたのよ!」
「あ、いや、そう言われても。」
ジョーはめんくらう。
そんなふたりを見ているふたりのサポートAIの、アイとミサ。
ふたりは顔を見合わせる。
私には無理だと、ミサは首をふる。
私は嫌ですよと、アイも首をふる。
おまえが適任なんだよと、ミサはアイの肩に手を置き、アイを見つめる。
マジですかと、アイはミサを見つめ返す。
その視線に耐えられず、ミサは視線をそらす。
アイはため息をついて、ミサの手をはらう。
マイとマインに歩み寄るアイ。
「あのー、よろしいですか、ふたりとも。」
アイの呼びかけに、マイとマインはアイの方を振り返る。
泣き疲れたマイの瞳。
怒りの色に少し涙の混じったマインの瞳。
やっぱきついですよと、アイはミサに視線を送る。
頑張れ、おまえなら出来ると、ミサは視線を返す。
意を決して、アイは言う。
「申し上げにくいのですが、超新星爆発って表現、この時代では使ってないんですよ。」
それを聞いて、マインの顔が赤くなる。
マイは意味が分からない顔をしている。
「星の最期を表す表現は、おふたりの時代のすぐ後で、別の表現に変わりました。
だからこの時代、超新星って表現は、大型新人ってくらいでしかありません。」
「バカ、私、すっごく恥ずかしいじゃない!」
アイの説明に、マインはそう言ってマイの身体に顔をうずめる。
それを見て、ミサは思う。
うん、私には無理だった。耐えられねー、あの状況ー。
マイは恥ずかしさに震えるマインの頭を撫でて、優しく声をかける。
「ありがと、マイン。私のために怒ってくれて。
私はもう大丈夫だから、マインも、ね。」
マイの言葉に、マインも小さくうなずく。
そしてふたりは立ち上がると、マイはジョーに頭を下げた。
「勘違いして、ごめんなさい。」
それを見て、マインもジョーに頭を下げる。
「か、勘違いして、ご、ごめんなさい。」
「ま、まあ、俺も悪かったよ。説明うまく出来なくてさ。
でも、期待してるのは確かだぜ。」
「はい、期待の超新星マイに、ご期待下さい。」
「なんか、期待ばっかだな。やっぱ変えるべきかもな。」
ジョーは自分で名付けたのだが、期待を表す単語の多さに、他の表現なかったのかと、ちょっと後悔。
「いえ、期待の超新星、今はこれでいいです。」
そんなマイを見て、ケイが叫ぶ。
「ようし、期待の超新星、爆発だぁ!」
「ちょ、ちょっと。」
ユアはこれはさすがにまずいんじゃと思ったが、
「超新星、爆発だぁ!」
マイもそう叫ぶ。
「みんな爆発だぁ、ゴンゴル三姉妹なんて、爆発だぁ!」
つられてリムもそう叫ぶ。
「爆発だぁ!」
今度はみんな一緒に叫ぶ。
いや、マイだけは叫ばず、何か考えこむ。
「やだ、今度は私が地雷踏んじゃった?」
そんなマイを見て、リムはぼそりと呟く。
「あ、そう言う意味じゃなくて。」
マイは重くなりかけた場の空気をはらうように、話しはじめる。
「ゴンゴル三姉妹は、そんなに脅威じゃないと思うんだ。問題なのは」
「えー?どうやって戦うってのよ?」
マイの発言をさえぎって、ケイが叫ぶ。
「レーダー使わないで戦うの?そんなの目をつぶって戦うようなもんよ?」
ケイの発言には、皆がうなずく。
現状、そんな不可能な打開案しかないから、悩んでいる。
「あ、いや、目をつぶっても、動く事は出来るじゃん。」
マイの言葉に、皆は驚く。つかあきれる。
「流石はカミカゼ日本人のマイ。言う事が違うな。」
マインの言葉に、マイはあわてて否定する。
「いやいや、目をつぶって戦うなんて、無理だと思うよ。
そりゃあソウルブレイド戦ならなんとかなりそうだけど、戦闘機だったら、無理でしょ。」
「え?ソウルブレイド戦で目をつぶるの?」
ケイはどん引く。
「まあ、他の感覚頼ればいいんだし、いけるんじゃね?」
ユアは少し考えて、なんかいけそうな気がした。
「馬鹿ね。ゴンゴル三姉妹戦をソウルブレイド戦で例えるなら、他の感覚もなしで戦うって事よ。」
「じゃあ、やっぱ無理かぁ。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「そ、そうじゃなくて!」
マイは、自分がなんかイタイ子扱いされ始めてるので、思わず叫ぶ。
「僕が言いたいのは、ダントッパの方が脅威じゃないかって事!」
「ダントッパ?なんで?」
ケイは、マイが何言ってるのかわからない。
「威戒王を倒した伝説の激突王だっけ?伝説だけあって、何かあるかもしれない。」
ユアは少し考えて、そんな気がしてきた。
「伝説と言っても、よそには伝わらない程の伝説よ?たいした事ないんじゃない?」
「そうだよね、なんかしょぼそう。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「でも、六色のブレイブ。これがトライフォースの陣形が六種類って事なら、確かに厄介ね。」
マインは、マイが思っている答えに辿り着く。
「そう、六色のブレイブ。」
そう言いながら、マイは右手の手のひらを縦に開いて、上下にゆっくりと振り動かす。
「もし、それにゴンゴル三姉妹のような能力があったら。」
と言って、右手の手のひらの動きを止める。
「そこへ、激突王!」
パシーん!
マインは、宙で止まったマイの手のひらを軽く殴る。
「あ」
皆にも、マイの言いたい事が伝わる。
確かに六色のブレイブは難解だ。
絶対勝ちにいくこの場面。少なくともゴンゴル三姉妹と同列に見るべきかもしれない。
だけど、そうは言っても。
「情報が少ないんだよなぁ。」
ジョーの言うこの言葉につきる。
「まあ、その時になれば分かるさ、今考えても仕方ない。
しっかり調整して、レースに備えよう!」
ジョーのその言葉が締めの言葉となり、解散となった。
「今日はマインの色んな表情が見れて、楽しかったね。」
リムはいたずらっぽく笑う。
「ちょ、」
マインは恥ずかしさがこみあげてくる。
「それ、私も思った。」
ケイも呼応する。
「なんか、楽しかったね。」
ユアも同様の感想を述べる。
「わ、忘れなさーい。」
マインは思わず叫ぶ。
「マイン、なんかごめん。」
マインのそんな行動の一翼を担った感のあるマイは、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「もう、マイまで。謝らなくていいから!」
星間レース開始まで、あと75時間をきった。
来たる星間レースの参加メンバーが発表された。
それは、速さを競うよりも戦闘撃破に特化したメンバー構成だった。
そんな相手との対戦経験を持っていたマイン。
マイは、その驚きの戦闘結果に戦慄する。
「こりゃあ、まともに相手にしたら、たまったもんじゃないわね。」
ケイの言葉に、ただうなずくマイとユア。
「まあ、捕まったりはしないけどね。」
リムの言葉に、ケイとユアは何か気づく。
「なんで?ユアとケイがいなくなったら、僕嫌だよ。」
マイは気づかない。が、ユアとケイはマイにつっこむ。
「なんで私達だけ居なくなる事前提なのかな?」
「これだけ注目されたレースよ。ここで拿捕なんて出来ないわ。」
マインがそう言うと、マイも少しは安心する。
「でも、厄介な相手である事は、変わりないわよ。どうしたもんかねー。」
リムはそう言って考えこむ。
「そうよ、相手にしなければいいじゃない。これはレースなんだから。」
リムはそうひらめく。
「それだ。マイちゃん、私達は逃げて逃げて、逃げまくるわよ。」
「それでそのまま優勝だー」
落ち込み気味なマイを、ケイとユアがはげます。
「そうよね、私達の優勝だー。」
マイもその気になって叫ぶ。
「いや、その事なんだが。」
ここでジョーが水をさす。
「この勝負、相手はどちらも本気だ。絶対勝っちゃだめだぞ。」
その意味は、マイには分からなかった。
そうだろうなと言う表情をしているのは、マインだけだった。
「これまでの恒星系調査の出費比率を教えてやる。」
ジョーはそんなマイ達に説明する。
「グリムアの出費比率は48%、レドリアが47%だ。」
「え、じゃあうちの出費比率って。」
ユアは、その出費比率のあまりの低さに驚く。
「あちゃー、よくこれでレースに参加しようなんて思ったわね。」
ケイも、もっともな事を言う。
が、マイはそれがどうしたの、という思いでさらなる説明を待つ。
ジョーは、マイの察しの悪さにあきれ、逆に尋ねてみる。
「あー、マイ。これでうちが勝っちゃったら、どうなるかな?」
「少ない出費で恒星系の開発権得られてラッキー!」
「あほかー!」
マイの脳天気な答えに、思わずつっこむジョー。
「あほってなによ。」
マイもすぐに言い返す。
マイらしいやと、マインはクスリと笑う。
「あなた、面白いって言うか、バカよね。」
リムは笑いをこらえ、なんとか口にする。
「なんでよー。」
マイにはその意図が分からない。
「はあ、いいか、マイ。よく聞けよ。」
ここでジョーが説明する。
「どっちの陣営も、恒星系開発に、本気なんだ。これでうちが開発権を取ってみろ。新たな問題の火種にしかならんだろ。」
それでもマイは、納得出来ない。
「でも、うちだって出費してるよね?開発権勝ち取る権利はあるよね?」
「うちは蚊帳の外だろ。本来これは、レドリアとグリムアの争いだ!」
「じゃあ、なんで参加するの?勝つ気ないんなら、始めから出なければいいじゃない!」
そう叫ぶマイは、涙目だ。
このまま話してても、平行線のままだろう。そこで、ジョーはおれた。
「分かった。頑張って優勝してこい、期待の超新星!」
「はい!」
どうせ、ゴンゴル三姉妹には勝てないだろう。ジョーはそう思っている。
「任せて下さい!必ずゴンゴル三姉妹に勝ってみせます!」
「何?」
マイの言葉に、みんな一様に驚く。
「マイ、何か思いついたのか?」
優勝の現実味を帯びたその言葉に、ジョーは恐る恐る尋ねてみる。
「いえ、きっとやってくれます。ユアとケイが!」
とびっきりの笑顔でそう答えるマイ。
「その間に、期待の超新星マイがゴールして優勝です。」
マイがそう続けると、皆はあきれた笑みをうかべる。
しかし、マインだけはたまらず大笑い。
「あはははは、」
初めて見るマインのその姿に、皆は驚く。
マインはなんとか笑いをおさえて、マイに聞いてみる。
「マイ、超新星の意味知ってるの?」
「え?大型新人とか、そういう意味でしょ?」
「あはは、やっぱり知らないんだ。超新星ってね、星が最期に大爆発する事よ。あははは。」
そのまま笑いころげるマイン。何がそんなにツボったのか?
「えー、ひっどーい!」
マイはジョーにつめよる。
「僕なんて、爆発しちゃえって事ですか?大爆発を期待してるんですか?」
マイの瞳から、涙があふれてくる。
「あ、いや、期待してるだけだよ?超新星のマイに。」
「何よそれ。やっぱり爆発しちゃえって事?僕の事愛してるような事言ってたのに。」
「ば、バカ、今それ言うな!」
「バカって、やっぱり僕の爆発を期待してるんだ。うわーん。」
マイは床に崩れ、泣きだした。
それを見て、マインの笑いがぴたりと止まる。
そしてマイに抱きつく。
「ごめんね、マイ、ちょっと笑いすぎた。ごめんね。」
そのまま、ジョーを睨む。
「酷いよ、ジョー!あんな名前、付けなくてもいいじゃない、なんで付けたのよ!」
「あ、いや、そう言われても。」
ジョーはめんくらう。
そんなふたりを見ているふたりのサポートAIの、アイとミサ。
ふたりは顔を見合わせる。
私には無理だと、ミサは首をふる。
私は嫌ですよと、アイも首をふる。
おまえが適任なんだよと、ミサはアイの肩に手を置き、アイを見つめる。
マジですかと、アイはミサを見つめ返す。
その視線に耐えられず、ミサは視線をそらす。
アイはため息をついて、ミサの手をはらう。
マイとマインに歩み寄るアイ。
「あのー、よろしいですか、ふたりとも。」
アイの呼びかけに、マイとマインはアイの方を振り返る。
泣き疲れたマイの瞳。
怒りの色に少し涙の混じったマインの瞳。
やっぱきついですよと、アイはミサに視線を送る。
頑張れ、おまえなら出来ると、ミサは視線を返す。
意を決して、アイは言う。
「申し上げにくいのですが、超新星爆発って表現、この時代では使ってないんですよ。」
それを聞いて、マインの顔が赤くなる。
マイは意味が分からない顔をしている。
「星の最期を表す表現は、おふたりの時代のすぐ後で、別の表現に変わりました。
だからこの時代、超新星って表現は、大型新人ってくらいでしかありません。」
「バカ、私、すっごく恥ずかしいじゃない!」
アイの説明に、マインはそう言ってマイの身体に顔をうずめる。
それを見て、ミサは思う。
うん、私には無理だった。耐えられねー、あの状況ー。
マイは恥ずかしさに震えるマインの頭を撫でて、優しく声をかける。
「ありがと、マイン。私のために怒ってくれて。
私はもう大丈夫だから、マインも、ね。」
マイの言葉に、マインも小さくうなずく。
そしてふたりは立ち上がると、マイはジョーに頭を下げた。
「勘違いして、ごめんなさい。」
それを見て、マインもジョーに頭を下げる。
「か、勘違いして、ご、ごめんなさい。」
「ま、まあ、俺も悪かったよ。説明うまく出来なくてさ。
でも、期待してるのは確かだぜ。」
「はい、期待の超新星マイに、ご期待下さい。」
「なんか、期待ばっかだな。やっぱ変えるべきかもな。」
ジョーは自分で名付けたのだが、期待を表す単語の多さに、他の表現なかったのかと、ちょっと後悔。
「いえ、期待の超新星、今はこれでいいです。」
そんなマイを見て、ケイが叫ぶ。
「ようし、期待の超新星、爆発だぁ!」
「ちょ、ちょっと。」
ユアはこれはさすがにまずいんじゃと思ったが、
「超新星、爆発だぁ!」
マイもそう叫ぶ。
「みんな爆発だぁ、ゴンゴル三姉妹なんて、爆発だぁ!」
つられてリムもそう叫ぶ。
「爆発だぁ!」
今度はみんな一緒に叫ぶ。
いや、マイだけは叫ばず、何か考えこむ。
「やだ、今度は私が地雷踏んじゃった?」
そんなマイを見て、リムはぼそりと呟く。
「あ、そう言う意味じゃなくて。」
マイは重くなりかけた場の空気をはらうように、話しはじめる。
「ゴンゴル三姉妹は、そんなに脅威じゃないと思うんだ。問題なのは」
「えー?どうやって戦うってのよ?」
マイの発言をさえぎって、ケイが叫ぶ。
「レーダー使わないで戦うの?そんなの目をつぶって戦うようなもんよ?」
ケイの発言には、皆がうなずく。
現状、そんな不可能な打開案しかないから、悩んでいる。
「あ、いや、目をつぶっても、動く事は出来るじゃん。」
マイの言葉に、皆は驚く。つかあきれる。
「流石はカミカゼ日本人のマイ。言う事が違うな。」
マインの言葉に、マイはあわてて否定する。
「いやいや、目をつぶって戦うなんて、無理だと思うよ。
そりゃあソウルブレイド戦ならなんとかなりそうだけど、戦闘機だったら、無理でしょ。」
「え?ソウルブレイド戦で目をつぶるの?」
ケイはどん引く。
「まあ、他の感覚頼ればいいんだし、いけるんじゃね?」
ユアは少し考えて、なんかいけそうな気がした。
「馬鹿ね。ゴンゴル三姉妹戦をソウルブレイド戦で例えるなら、他の感覚もなしで戦うって事よ。」
「じゃあ、やっぱ無理かぁ。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「そ、そうじゃなくて!」
マイは、自分がなんかイタイ子扱いされ始めてるので、思わず叫ぶ。
「僕が言いたいのは、ダントッパの方が脅威じゃないかって事!」
「ダントッパ?なんで?」
ケイは、マイが何言ってるのかわからない。
「威戒王を倒した伝説の激突王だっけ?伝説だけあって、何かあるかもしれない。」
ユアは少し考えて、そんな気がしてきた。
「伝説と言っても、よそには伝わらない程の伝説よ?たいした事ないんじゃない?」
「そうだよね、なんかしょぼそう。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「でも、六色のブレイブ。これがトライフォースの陣形が六種類って事なら、確かに厄介ね。」
マインは、マイが思っている答えに辿り着く。
「そう、六色のブレイブ。」
そう言いながら、マイは右手の手のひらを縦に開いて、上下にゆっくりと振り動かす。
「もし、それにゴンゴル三姉妹のような能力があったら。」
と言って、右手の手のひらの動きを止める。
「そこへ、激突王!」
パシーん!
マインは、宙で止まったマイの手のひらを軽く殴る。
「あ」
皆にも、マイの言いたい事が伝わる。
確かに六色のブレイブは難解だ。
絶対勝ちにいくこの場面。少なくともゴンゴル三姉妹と同列に見るべきかもしれない。
だけど、そうは言っても。
「情報が少ないんだよなぁ。」
ジョーの言うこの言葉につきる。
「まあ、その時になれば分かるさ、今考えても仕方ない。
しっかり調整して、レースに備えよう!」
ジョーのその言葉が締めの言葉となり、解散となった。
「今日はマインの色んな表情が見れて、楽しかったね。」
リムはいたずらっぽく笑う。
「ちょ、」
マインは恥ずかしさがこみあげてくる。
「それ、私も思った。」
ケイも呼応する。
「なんか、楽しかったね。」
ユアも同様の感想を述べる。
「わ、忘れなさーい。」
マインは思わず叫ぶ。
「マイン、なんかごめん。」
マインのそんな行動の一翼を担った感のあるマイは、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「もう、マイまで。謝らなくていいから!」
星間レース開始まで、あと75時間をきった。
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