未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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惑星ファンタジー迷走編

第58話 呼吸を整え剣技をふるえ!

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 星間パトロールに来ていたケイは、惑星ドルフレアにおいて、千年前に飛ばされてしまう。
 ケイはその時代に出会った勇者の子孫と、自分を探しに来るであろうマイに、三つの封印のほこらを託した。
 その封印を解く鍵は、勇者の子孫に伝えた。
 しかし、当の子孫、ローラスにはそれがよく分からない。
 そこで、剣技に優れたユアが、ケイが伝えた八極陣を見てみる事になった。
 前回のお話しでは、グリーンドラゴンが化身した少女の出番も構想にはあった。
 だが、その出番を忘れてしまった。
 今回こそは、忘れないようにしよう。


 ローラスはケイのソウルブレイドで、見事な水の剣を展開させる。
「お見事。」
 ユアは素直にローラスを褒める。
「今度はそれでやってみて。ケイの伝えた八極陣、ヤサメを。」
「はい。」

 ローラスはヤサメを披露する。
「壱の技。」
「弍の技。」
「参の技。」
「肆の技。」
「伍の技。」
「陸の技。」
「漆の技。」
「捌の技!」
 ローラスはヤサメの八つの技を披露し終える。
「どうですか?」
 ローラスはユアに尋ねてみる。
 実際にやってみても、ローラスにはピンと来なかった。
 この八つの技に欠けてる箇所とは、何なのか。

 ユアも首をかしげる。
 一連の八つの技の流れが、つながりが、どうもピンと来ない。

「ふふふ、なんでおケイの剣には刀身がないのか、それを理解しなければ、会得したとは言えませんよ。」
 ここでグリーンドラゴンが化身した少女が口をはさむ。
 でも、ローラスには理解出来ない。
 普段からソウルブレイドを使っている、ユア達は察したが。
「ほほほ、なら特別にレクチャーしてやろう。ブルードラゴンにもよろしく頼まれてるからの。」

 少女は、剣の柄を握るローラスの右手に、自分の右手をそえる。
「我がマナのイメージを注ぎ込むから、お主はそれを形にしてみろ。」
「は、はい。」
「では、いくぞ、ふん!」
「はい!」

 ローラスの水の剣は、水の鞭に姿を変えた。
 ローラスはソウルブレイドが変幻自在な事に、はじめて気が付いた。
「それで陸の技から先を、やってみろ。」
 少女はローラスに、そうアドバイスする。
「はい!」
 ローラスは早速やってみる。
「陸の技。」
「漆の技。」
「捌の技!」

「どうだ、何か分かったかの。」
 少女は技の演舞を終えたローラスに尋ねるが、ローラスにはいまいちだ。
「なるほど!」
 ここで横からユアが声を出す。
 ユアは理解したらしい。
「私がやってみせるから、よく見てて。」

 ユアは呼吸を整え、大気中のイデと心で会話する。
 そしてイデの力を借りる。
 大気中のマナと自分の身体のマナとを錬成させる。
 そして、ソウルブレイドの剣を展開する。
 ソウルブレイドの刀身は、赤い炎のマナに包まれている。
 その炎の剣を、ユアは振るう。

「壱の技。」
「弍の技。」
「参の技。」
「肆の技。」
 肆の技は、剣を槍に変える。
「伍の技。」
 伍の技は、三叉の矛になる。
「陸の技。」
 陸と漆の技は、鞭になる。
「漆の技。」
「捌の技。」
 捌の技は、二又の鞭になる。
「玖の技!」
 最後は、小さな火の玉が空中に浮かぶ。

 ローラスとマイは、火の玉が出てきた意味が分からない。
 八つの技に欠けてるモノ。それが玖の技なのだが、何故これなのだろう?
 メドーラには理解出来たようだが。

「こらこら、最後まで披露しちゃ駄目だろう。」
 ドラゴンの化身の少女がユアを注意する。
「ごめんごめん、つい勢いで。」
 ユアも謝るのだが、悪気は全くなかった。
「でもこれ、玖の技が分かっても、ちゃんと理解してないと駄目なんでしょ。」
「それはそうなのだが。」
 ユアの言葉に、少女は言い返せない。

 ユアの演舞を見て、ローラスが思ったのは、玖の技の事ではなかった。
「これって、武器を変えながらやるんですか?」
 ローラスは先祖から伝わっているこのヤサメは、剣技の技だと思ってた。
「ふむ、どうやら千年経つうちに、伝承が途絶えたのだろう。
 厳密に言えば、八つの技は、全部違う武具になる。」
 ローラスの疑問に、ドラゴンの化身の少女が答える。
「えー、武具が八種類。これ、変えながらやるんですか?」
 ローラスはこれまた驚く。
「いや、武具を変える事自体は、簡単なんだよ。」
 横からマイが口をはさむ。
 そして自分のソウルブレイドの形を変えてみせる。
 剣から槍へ。槍から三叉の矛へ。三叉の矛から鞭へ。鞭から二又の鞭へ。
「難しいのは、これにマナを込めながら変形させる、って事なんだけど。
 頑張ってね、ローラス。」
 武具の変形は、マイにも出来る。その先のマナを込める事は、マイにとっては他人事だった。

 そんなマイを見て、ユアは言う。
「これ、マイもマスターする必要があるよ?」
「はい?」
 思いもしない言葉が、マイの耳に入る。
「なんで僕まで?封印を解くのは、ローラスでしょ?」
 マイの言葉に、ユアは首をふる。
「玖の技まで辿りついたら、理由が分かるよ。」
 ユアに言える事は、これだけだった。

 そしてその理由は、メドーラにも分かった。
「確かに、水系のローラスさんだけで封印を解く事は出来ませんわね。
 これって、風系のマナが無ければ、意味ないですわ。」
「はい?なんで僕なの?」
 いきなり大役を言われても、マイも困る。
 つか、水や炎と違って、風の剣って、どうやって作るの?
 マイの場合、まずはそこから始めなければならない。

 そんなマイ達を見て、グリーンドラゴンは思う。

 ほっほっほ。
 ブルードラゴンめ。中々厄介な事を押し付けてくれる。
 だが、この者達を見ていれば、それも納得じゃの。
 まずは、マイ。
 まだまだ未熟者ではあるが、凄まじいほどの潜在能力を秘めている。
 この才能が開花すれば、想像もつかない事が起きそうだ。
 まさに、期待の超新星じゃの。
 次にユア。
 この者、身体能力の真髄を極めておる。
 身体の動きを想像出来れば、その通りに身体を動かせるじゃろう。
 下手すれば、空を飛ぶことも可能じゃの。
 そして、メドーラ。
 こやつは、ブルードラゴンは言ってなかったがの。
 我の眼を持ってしても、底が知れぬわい。
 マイとユアを姉と慕ってるようだが、その真意が分からぬ。
 だが、姉と慕う気持ちに、嘘はないようじゃ。
 不思議な事もあるものよ。

 のう、ブルードラゴン。
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