未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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惑星ファンタジー迷走編

第69話 憑依と依代

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、行方不明になった仲間のケイを探しに、惑星ドルフレアに降り立った。
 ケイはなんと、千年前に飛ばされていて、この時代のマイ達に、三つの封印のほこらを託した。
 それは、この星の鉱物資源を封印したほこらだった。
 マイ達はひとつ目のほこら、荒野のほこらの封印を解いた。
 そして、ふたつ目のほこら、山のほこらへと向かう。


 鉱山の町、アムテッド。
 この町にマイ達はいた。
 前回、戦闘機で山のほこらに向かったマイ達は、ほこらには一瞬で着いた。
 だが、山は鉱山になっていた。
 人目があるので、戦闘機を降ろす事が出来なかった。
 結局星を一周して、人目の無い場所に戦闘機を降ろした。
 所要時間は、三分だった。

「たくう、お主らは、我に対する尊敬の念はないのか。我は神武七龍神なるぞ。」
 アムテッドに向かう道中、ナツキはふくれていた。
 前回、マイと一緒に戦闘機に乗りたかったのに、それを無視された事が、よっぽどショックだったようだ。
「そんな事ないよー、ナツキ。」
 マイは作り笑顔をナツキに向ける。
「僕はね、ナツキにメドーラとも仲良くなってほしいだけだから。」
「こやつとか?」
 ナツキはメドーラに視線を向ける。
「ちょ、ちょっと。」
 メドーラは視線をそらす。
 それを見て、ナツキはニヤリと笑う。
「ほほほ、そうかお主、妬いておるのか。」
「はあ?そんな訳、」
 メドーラは反射的に言い返すが、ナツキから目をそむける。
 どうやらナツキの事をまともに見る事が出来ない。

「どうしたの、メドーラ。」
 そんなメドーラを不思議がり、マイは声をかける。
「マイお姉さま、」
 メドーラはマイに近づくと、小声でささやく。
「マイお姉さまもあまり、煽らないで下さい。」
「なんの事?」
 マイは、メドーラの言う事が理解出来なかった。
「ナツキの顔を、よく見て下さい。」
「ナツキの顔?」
 言われてマイは、ナツキの顔を見る。
 ナツキは照れて、視線をそらす。

「見たけど、何?」
 マイは、メドーラの言いたい事が分からない。
「マイお姉さま、ナツキの顔見ても、何も感じないのですか?」
「うん。」
 マイは、相変わらずだ。遠回しに言われても、分からない。
「ナツキって言うより、ミイの顔だよね、これ。」
 ふたりのやり取りを見て、ローラスは思った。

 ナツキは、ミイに憑依している。
 だからナツキが、と主語をナツキにしたところで、その行動をする述語は、ミイの身体が行う事になる。
 ナツキの顔を見る事は、ミイの顔を見る事になる。

「あ、そう言えばそうだね。ナツキじゃなくてミイの顔だね。」
 マイはミイの顔を見ながら、ナツキの顔を思い出す。
 グリーンドラゴンが化身した幼くてかわいい少女。
「全然面影ないや。」
 サポートAIのミイは、グラマラスな女性と表現出来る。
 それは、グリーンドラゴンの化身したナツキとは、かけ離れている。
 マイはミイの顔を意識した途端、ナツキの顔を正面から見る事が出来なくなった。

「どうしたの、マイ?」
 そんなマイを、ナツキは覗きこむ。
「ちょ、ちょっと待ってね、ナツキ。」
 マイは片手で自分の顔をふさぎ、もう片方の手をナツキの顔面に向ける。
「どうかしたのかの。」
 ナツキは自分に伸ばされたマイの手を両手で握る。
 マイは焦る。
 メドーラが言いたい事が、やっと分かった。

 サポートAIのミイは、と言うより、サポートAIは、みんな同じ顔をしている。
 髪型も同じため、見分けるのは髪の色でしか出来ない。

 つまり、ナツキと仲良く接する事は、サポートAIのミイと仲良く接する事であり、同じ顔のサポートAIである、マイのパートナーのアイと、そのように接する事でもある。
「うん、確かにこれはきつい。」
 マイは思った。
 パートナーのアイとの仲は、良好だ。けっして悪くはない。
 だが、ナツキと接していたように、アイと接するとなると、少し違う。
 そのような親密な馴れ馴れしさは、求めていない。

「ミイ、ごめん。ナツキの事を意識しすぎて、ミイの事を考えてなかった。」
 マイはミイに対して謝った。
「やっと分かってくれましたかー。」
 ミイから安堵の声がもれる。

 マイに懐くナツキ。
 そのナツキの愛情表現をするのは、ミイの身体だ。
 サポートAIはパートナーとして、そんな距離感は求めていない。
 だからミイには苦痛だった。
 ナツキの行動そのものではない。
 マイが当然の事として、ミイの身体で行われるナツキの行動を受け入れている事が。
 それを分かってくれただけでも、ミイは気が楽になった。

「いっや、なっの、じゃー。」
 そんなふたりの気持ちを感じてもなお、ナツキはマイの腕に抱きついた。
「我はマイが好きなのじゃ。我のやりたいようにさせるのじゃ。」
 ナツキは顔をマイの腕にすりつける。

「仕方ないか、ミイ。」
 マイはあきらめに近いため息をつく。
「そうですね、こればかりは、どうにもなりません。」
 ミイも同様の思いだ。
 だけど、マイがナツキとミイの違いを意識してくれた。
 それだけでも、嬉しかった。

 そんなこんなの道中、やっとこさアムテッドにたどり着く。
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