未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第86話 人型機体で宇宙を駈けろ

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 マイはこの時代に、戦争するために召喚された。
 北部戦線では激しい激戦がくりひろげられてたが、マイは参戦しなかった。
 他の任務にあたっていたからだ。
 北部戦線の激戦で、同じ召喚者であるマインとリムが、再起不能の重症を負ってしまう。
 マイとメドーラ、そしてユアも北部戦線に駆り出される。
 だがユアは、戦闘機での戦闘は苦手だった。
 それを克服するため、戦闘機を人型に変形させる。
 ユアはマイとの実戦訓練にて、見事勝利をおさめた。


 メドーラは疑問だった。
 なぜユアは人型の機体を操れるのかを。

 人間の動きを作り物で再現するとなると、その難易度は高い。
 普通に歩くにしたって、重心の移動、力の掛け具合、バランスの取り方等々、クリアするべき課題は多い。
 それらを機械制御で補ったとしても、大まかな動きしか出来ない。
 戦闘にともなう動きは、操縦者が微調整しなければならない。

 そう、普通に戦闘機を飛ばす方が、はるかに楽なのである。
 人型にする利点が、見当たらない。
 地上戦なら、大型な何かと戦うのに使えなくもない。
 だが、宇宙戦において、人型にするメリットは何も無い。

 それにも関わらず、ユアは完璧に人型機体を操ってみせる。
 マイの四機の機体からなるテトラフォーメーションでさえ、ユアは余裕で見切っている。

 ふたりの戦いを、離れた所で見ているメドーラには、よく分かる。
 ユアの何気ない動作が、マイの行動を誘っている。
 小さな腕の振り。顔を上げる仕草。
 その動きから、相手の注目点を探り当て、次の動作を予測する。
 その先回りこそが、テトラフォーメーションの真骨頂。
 マイは自分の意思で行動しているつもりだろうが、それはユアの想定の範囲を脱しえない。

 マイの本機が、ユアの近接接近を許してしまう。
 ユアの人型機体は剣を振り上げる。
「この勝負、ユアお姉さまの勝ちですわ!」
 メドーラも戦闘機を人型に変形させ、剣を持ってユアの剣を受け止める。

 ここでメドーラが止めなければ、マイの機体は爆散。
 マイは脱出用ポッドで宇宙ステーションに戻り、爆散した機体も自動修復される。
 しかし、自動修復には時間がかかる。
 北部戦線に参戦がせまってる今、そんな時間はない。

 マイは投影した三機の機体の立体映像を消す。
「凄いよユア、全くかなわなかったよ。」
 マイはユアに賞賛の言葉を贈る。
 そして同時に、自分にはユアの戦術が使えない事を、はがゆく思った。

 メドーラの人型機体とユアの人型機体は、まだ剣を交えていた。
 メドーラの人型機体は、小刻みに震えている。
 地上とは違い、宇宙空間には両足でふんばる地面がない。
 前身のための推進エネルギーを、消費し続けるしかない。
 対してユアの人型機体は、どっしりと構えている。

「ユアお姉さま、教えてください。なぜあなたはこの機体を操れるのですか。」
 メドーラはこれまでに感じた疑問を、ユアにぶつける。
 宇宙戦における、人型機体の投入。
 その利点を見出せないメドーラの目の前で、ユアはメドーラの思惑を、はるかに超えてみせている。

「さあ?私は、普通に動かしてるだけ!」
 ユアは人型機体の握る剣に力をこめる。
 絶妙な力の均衡でバランスの取れてた二機の人型機体だったが、メドーラの人型機体は弾き飛ばされてしまう。
 メドーラの人型は、後方宙返りをしながら、後方へと吹き飛んでいく。
 無重力の宇宙空間なら、どこまでもこのまま突き進む。

「メドーラ、機体を戦闘機に戻して!」
 マイは思わず叫ぶ。
 マイのアドバイスをかき消すように、ユアも叫ぶ。
「メドーラ、つま先と頭のバランサーを意識して!
 バーニアーをふかして、微調整を続けて!」

 メドーラは、ユアのアドバイスを採用する。
 小刻みにバーニアーをふかす。
 無重力の宇宙空間では、腕を左右に振るだけで、その方向に回転し続けてしまう。
 その特性を理解し、メドーラは人型機体を制御する。

「メドーラ、あなたもウイングブースターは出せるでしょ。」
 ユアの人型機体は、剣を構え、背中に装着したウイングブースターを輝かせる。

「はい、ユアお姉さま!」
 メドーラはウイングブースターの立体映像を投影すると、人型機体の背中に装着させる。
 そして剣を持つと、そのままユアの人型機体に突っ込む!

 カキーン!
 ユアとメドーラの人型機体は再び交差する。
 剣を一瞬交えると、メドーラの人型機体はそのまま飛び過ぎてしまう。
「メドーラ、私には細かい操作なんて分からないわ。」
 ユアはメドーラの疑問に答える。
「私はただ、普段身体を動かす感覚で、この機体を動かしてるだけだから。」

「それはなんとも、つかみ所のない答えですわね。」
 メドーラは人型機体を反転させる。
「でも、納得せざるを得ませんですわ!」
 メドーラはそのままユアの人型機体に突っ込む。

 カキーン!
 三たび交差するメドーラとユアの人型機体。
 メドーラの人型機体は、そのまま飛び過ぎてしまう。
「ユアお姉さま、私の特訓につきあって下さい。
 私も、人型機体の操縦のコツを、つかめそうですわ。」
 メドーラは人型機体を反転させる。
「そうこなくっちゃな!」
 ユアもウイングブースターをふかして、メドーラに迫る!

 マイを置き去りに、ユアとメドーラとの特訓が始まった。
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