未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第108話 新米AIの葛藤

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 人類が宇宙へと飛び出しているこの時代、それでも人類は争いをやめる事は無かった。
 絶対死なない戦争を可能にする物として、脱出用システムが開発されていた。
 この脱出用システムが使用出来るのは、魂の波長が合った者だけだった。
 この時代にはいない、そんな人物の魂が、過去の時代から召喚される事になる。
 そうまでして争う人類。
 そんな人類も、考えを改める必要があるかもしれない、とある事件がおきる。
 それが、北部戦線での戦闘である。
 異次元からの侵略者に、人類の叡智である脱出用システムも、意味をなさなかった。
 召喚者であるマイは、北部戦線の中心部である衛星基地ソゴムで苦戦する仲間の、ユアとメドーラを助けるべく、衛星基地ソゴムの奥へと進む。
 その先で待つものを、マイはまだ知らない。


 衛星基地ソゴムの通路を走るメドーラ。
「あの野郎、よくも、よくもマイお姉さまを。」
 メドーラのつぶやきには、怒りの感情とともに、哀しみの感情もまじる。
 メドーラのパートナーであるサポートAIのアイツウにも、メドーラのその感情が、痛いほど伝わってくる。

 サポートAIは、召喚者が額にしめるはちまきに仕組まれたチップを通じ、召喚者の脳と直接つながっている。
 これにより、様々な情報を召喚者にインストールしたりダウンロードしたりする事が出来る。
 サポートAIは、召喚者の基地である宇宙ステーションから、召喚者を支えている。

「ねえ、ユウ。」
 メドーラの後を追うユアは、額にあてがわれたチップを通じ、パートナーであるサポートAIのユウに、話しかける。
「さっきのマイの立体映像。作ったのはマイ本人でしょ?」

 前回メドーラの回し蹴りでかき消された、マイの分身体。
 それを作ったのが、あの謎の人物だと、メドーラは思い込んでいる。

「そうよ。マイは二体の立体映像を、ソゴム内部に放ってます。」
 ユアの問いかけに、サポートAIのユウが答える。
 ユウの言葉は、額にあてたチップを通じ、ユアの脳内に直接伝わる。

「そうだよね。」
 ユアは、マイの到着をユウから聞いた。
 それは当然、メドーラにも伝わっている。
 つまりメドーラも、あのマイの分身体は、マイ本人が作った立体映像である事を、理解してるはずである。

「あ、そう言えば。」
 ユアは思考をめぐらす中、ある事を思い出す。
 マイの到着を伝えられた時、メドーラは気を失っていた。
 つまり、メドーラにはマイの到着が伝わっていない可能性もある。

「どうなんだ、アイツウ?」
 ユアの思考を読み取ったユウが、アイツウに尋ねる。

 召喚者が任務中、サポートAIは宇宙ステーション内の専用カプセル内から召喚者をサポートしている。
 複数人の召喚者が同一任務にあたる場合、サポートAI達は意識を共有する。
 しかし、自分のパートナー以外の召喚者とは、つながる手段はない。
 召喚者がサポートAIにアクセスする手段は、額のチップしかない。
 そのチップは、自分のパートナーとしかつながっていない。

「分かりません。」
 ユウの問いかけに、アイツウの答えはそっけない。
「分からないって、おまえ、」
 ユウは、メドーラはおまえのパートナーだろって言いかけたが、その言葉を飲み込んだ。

 アイツウは、その名の通り、マイのパートナーであるアイを元にして作られた、コピー体である。
 元来、サポートAIは、召喚者の魂に合わせて作られる。
 だけどメドーラは、元は敵国であるレドリア合衆国のゴンゴル三姉妹のひとり、メドーである。
 サポートAIの運用は、一般的ではなかった。
 それは、特殊な使命を持った召喚者達に対しての、行為だった。
 そう、マイ達のそれは、シリウス構想の一環だった。
 ブルレア連邦に亡命した際、メドーのサポートAIは、アイが担当した。
 メドーはマイと同じく、黒髪だったためである。

 しかし、アイひとりでマイとメドーのサポートをするのは厳しいため、新たなサポートAIが作られた。
 それがアイツウである。
 アイツウは、アイが片手間で押し付けられていた事を、こなす為に作られた。
 つまり、サポートAIとしての純度はアイと同等としても、パートナーとしての機能は、著しく低かった。
 アイツウは、メドーラの魂との深いつながりを、持ってはいない。

「ならば、今一度、メドーラに伝えてみては?」
 ユアは、メドーラに伝えてみる事を提案する。
「伝えてみなよ、アイツウ。マイの到着を。」
 ユウも、ユアの意見をアイツウに伝える。
「ですが。」
 アイツウは、ふたりの意見に対して消極的だ。
 アイツウは、メドーラに拒絶される事を恐れている。
 アイツウは、メドーラのかかえる哀しみを知っている。
 メドーラ自身、その哀しみに触れられたくない事も、分かっている。
 パートナーとしてメドーラとつながると言う事は、その哀しみを共有する事を意味している。
 これはメドーラが望んでいない事を、アイツウは分かっている。
 そして何より、メドーラがはちまきを外す行為を恐れている。

 パートナーであるサポートAIにとって、召喚者にはちまきを外される事は、相当こたえる。
 実際メドーラは、はちまきを外してしまった。
 アイツウはこの事により、ショック受けている。

「あ、メドーラ。無事だったんだね。」

 アイツウがマイの到着をメドーラに伝えるか悩んでるうちに、メドーラはマイと遭遇してしまった。
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